農薬の毒性・健康被害にもどる

t31302#農薬中毒統計 スミチオン、ランドアップも多い〜厚労省人口動態統計(2015年)、科学警察研究所資料(2014-15年)#17-09

【関連記事】記事t30106(農村医学会調べ)、記事t30501(農水省調査。2015年度)

 農薬中毒統計には、農水省のほか、厚労省と科学警察研究所(以下科警研という)のものがあります。今号では、後の二つの資料を紹介します。

★厚労省人口動態統計では死者304人
【関連記事】記事t29302(2014年の報告)

 人口動態統計については、303号の2014年に続く、2015年の数値を以下に示します。国際分類コードで整理されており、農薬成分名は不明ですが、前年に比べ有機リン系殺虫剤の数が大きく減少しています。
   表1 厚労省の人口動態統計による2015年の農薬による死者数

            男  女  合計 前年増減
   農薬合計      162 142  304     -35
    リン系殺虫剤    62   45   107     -37
    ハロゲン殺虫剤   -    2      0       2
    その他殺虫剤    5   2    7       0
    除草剤       43  57  100      -8
    殺鼠剤        -   1    1       1
    その他農薬     4  2    6       4
    不明の農薬    48  33   81       5
★科警研の農薬中毒者調査
【関連記事】記事t29003(2011-13年)
【参考サイト】科学警察研究所:Top Page

 警察庁の科警研は、毎年、資料「薬物による中毒事故等の発生状況」を発刊しています。この資料には、警視庁が所管する東京都を除く、全国46道府県の地方警察から報告された医薬品や農薬(農薬と衛生害虫用殺虫剤・殺菌剤なども含む)等による中毒事例がまとめられています。薬物や農薬成分ごとの事案が掲載されており、中毒事例1件ごとに中毒者の年齢や性別、原因となった化学物質成分名が記載されています。
 記事t29003につづいて、2014〜15年の2年間の統計のうち事例の多い成分別の中毒者数をまとめましたので、報告します。(なお2013年は再掲です)

 農薬関連物質を含む事例については農薬分類以外に、揮発性毒物、その他という分類項目があります。表には、揮発性分類の硫化水素(石灰硫黄合剤使用)とその他分類にある農薬と医薬品等の同時摂取事例もあげました。
 表(−省略−)には、農薬成分別の中毒者数をあげました。複数の農薬製剤や農薬と医薬品その他の薬剤を同時に摂取した事例は、( )に外数として記載(中毒人数は含有される薬剤ごとに、重複カウント)してあります。

★年間の農薬中毒者数2014年267人、2015年243人
 農薬分類にある中毒者合計数の多くは自殺者だと思われ、2013年271人、14年267人、15年243人と推移しています。その他の分類にある農薬を含む事例は13年31人、14年34人、15年38人であり、これを加えても、厚労省の人口動態統計の農薬による死者数、15年304人に比べ、数値が低くなっているのは、東京都が入っていないせいかも知れません。

★揮発性物質〜硫化水素自殺は減少
 硫化水素ガスによる自殺事例が急増したのは2008年でしたが、以後減少し、14、15年は年間50-60人となっています。そのうち、硫黄源として、農薬の石灰硫黄合剤が使用された事例は一桁となっています。ただし、2015年には、タンク掃除で農薬使用者の死亡事故があったことを忘れてなりません(t30501参照)。なお、別途、石灰硫黄合剤そのものを摂取する事例は15年には4人みられました。
 もうひとつ揮発性ガスによる事例として漂白剤や洗剤の成分、次亜塩素酸塩等と酸性物質の混合によって発生した塩素ガスによる死亡事例は14、15年にはみられませんでしたが、漂白や殺菌用の次亜塩素酸塩系製品(アルカリ成分も含む)そのものを摂取した事例は、15年には9件ありました。

★殺虫剤メソミル、除草剤パラコート系のワースト1は変わらず
 成分別では、除草剤のパラコート系が、一番多く単剤と複合剤(ジクワットを含み、商品名はプリグロックスLなど)を合わせ、14年65人、15年53人でした。
 カーバメート系メソミル(商品名ランネート)は14年45人、15年41人でした。
   有機リンのMEP系殺虫剤(スミチオンなど)は14年36人、15年27人、グリホサート系除草剤(ラウンドアップ)は、14年24人、15年34人と例年通り多いです。

★毒劇指定がなくとも中毒死に
 有機リン系で、劇物指定のあるDEP、DMTP(スプラサイド)やPAP(フェントエート)の事例もありますが、毒劇指定のないMEP、マラソン、アセフェートによる中毒も目立ちます。
 リストにある除草剤でも、2,4−PA,グリホサート、グルホシネート(バスタ)は、毒劇指定はありませんし、ベンタゾンやビアラホスは登録失効しています。

★ピレスロイドとネオニコチノイド
 ピレスロイド系は、中毒数は多くはありませんが、13年と比較すると、その種類がふえています。農薬だけでなく、家庭用殺虫剤などとして、身近にあるせいでしょう。
 ネオニコチノイド系は、モスピランとマツグリーンの成分アセタミプリドが、複合摂取を含め14-15年に6人あり、イミダクロプリドとクロチアニジンも見られました。

★その他の農薬等
 2014-15年の2年間に単品で3人以上の中毒者が報告された農薬等は カルタップ(7人、パダン)、クレゾール(5、クレゾール石けん)、クロルピクリン(3)、トルフェンピラド(3、ハチハチ)や次亜塩素酸塩(12)、石灰硫黄合剤(4)などでした。
販売禁止農薬で、失効して久しい農薬の摂取による中毒も、まだ、いくつかみられます。有機塩素のベンゾエピンが2014年1人、有機リンのパラチオンが2015年1人ありました。

表2 2013〜15年の農薬別中毒数 <出典:科警研資料 57号、58号、59号> −省略−

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作成:2017-11-26