農薬の毒性・健康被害にもどる
t31406#改善されない農薬の人体汚染〜環境省2017年版パンフより#17-10
【関連記事】記事t30503(2016年版)
【参考サイト】環境省:ダイオキシン類対策のページにあるパンフ
日本人における化学物質のばく露量について2017
環境省環境保健部環境リスク評価室によるパンフ「日本人における化学物質のばく露量について」2017年版が、このほど発行されました。
ここでは、パンフに記載されている農薬類、ダイオキシン類、フッ素系物質、重金属類、可塑剤やビスフェノールA、放射性物質などの人の血中や尿中における検出状況から、有機塩素系以外の農薬を中心に報告します。
★代謝物尿中濃度 複合汚染の実態不明
2011年から実施されている農薬の汚染状況の調査では、有機リン剤の代謝物4種、ピレスロイド剤の代謝物2種、ネオニコチノイド剤の代謝物6−CNAなどのほか、アセフェートや蚊忌避剤ディート、殺菌剤トリクロサンほかの尿中濃度の検出値が報告されています。分析対象は、農薬の代謝物が主で、元の農薬名は不明です。2016年の尿検体数は80(一部15)で、検出結果は今までのものの集計と合わせて、表に示しました。なお、代謝物の名称とその由来となる農薬名の一部を参考のため注に記しました。
この中には、同じ尿検体に複数農薬が検出されているものもありますが、複合汚染の実態は不明です。
有機リン代謝物については、2011年からの尿中最高検出値の推移を図にしめしましたが、100〜600μg/gCr幅の変動原因は不明です。
農薬ではありませんが、厚労省が使用自粛を求めている薬用石けん用の殺菌剤トリクロサンは、100%の検出率で2016年度は0.15〜83μg/gCr見つかっています。また、2015年東京を中心に広がったデング熱の発生で、使用が拡大した媒介蚊対策の忌避剤ディートの検出値は、いままでの最高値0.087μg/gCrでしたが、2016年度は0.12に増えました。
表 農薬等の尿中代謝物の検出値 (出典:環境省パンフ2017年)
化学物質名 2016年度検出値(*n=80) 2011-16年(*n=262) 備考
有機リン系 DMP 中央値 2.0 2.5
化合物代謝物 範 囲 ND〜24 ND〜140
DEP 中央値 3.4# 3.2 #前年より増える
範 囲 ND〜480# ND〜520 #前年より増える
DMTP 中央値 2.3 3.6
範 囲 ND〜110# ND〜110 #前年より増える
DETP 中央値 ND ND
範 囲 ND〜19# ND〜19 #前年より増える
ピレスロイド PBA 中央値 0.47# 0.33 #前年より増える
系農薬代謝物 範 囲 ND〜21# ND〜21 #前年8.7だったのが増える
DCCA 中央値 ND ND
範 囲 ND〜26# ND〜26 #前年より増える
カーバメート エチレン 中央値 ND ND *:エチレンチオ尿素
系農薬代謝物 チオ尿素 範 囲 ND ND〜0.50 2016年n=15、全n=135
殺菌剤トリクロサン 中央値 0.74 0.97
範 囲 0.090〜83 0.090〜380
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化学物質名 2016年度検出値(*n=15) 2011-16年(*n=90) 備考
アセフェート 中央値 ND ND
範 囲 ND〜4.8 ND〜11
メタミドホス 中央値 ND ND
範 囲 ND〜0.11 ND〜0.19
ネオニコ 6-CNA 中央値 ND ND *6-CNA
代謝物 範 囲 ND〜0.39 ND〜1.8 2016年n=80、全n=217
フェニトロ 3-メチル-4-ニトロフェノール
チオン代謝物 中央値 0.20# ND
範 囲 ND〜30# ND〜30 #前年4.2だったのが増える
農薬等 p-ニトロ 中央値 0.52# 0.61 #前年0.42だったのが増える
関連物質 フェノール 範 囲 0.28〜44# ND〜44 #前年2.9だったのが増える
蚊忌避剤ディート 中央値 ND すべてND
範囲 ND〜0.12# ND〜0.12 #前年0.087だったのが増える
たばこのニコチン 中央値 0.76# 0.34 #前年NDだったのが増える
代謝物コチニン 範囲 ND〜3600# ND〜3600 #前年3000だったのが増える
注1 尿中濃度μg/gCr
随時尿でなく、一日の尿量で比較するため、尿中クレアチニン単位に換算した値、
注2 代謝物の略称
DMT(ジメチルリン酸)及びDMTP(ジメチルチオリン酸)
→フェニトロチオン(スミチオン)やマラソンなどに由来
DEP(ジエチルリン酸)及びDETP(ジエチルチオリン酸)
→クロルピリホスやダイアジノンなどに由来
PBA(フェノキシ安息香酸)及びDCCA(ジクロロビニル-ジメチルシクロプロパンカルボン酸
→ペルメトリンなどに由来
6−CNA(6-クロロニコチン酸)
→アセタミプリド、イミダクロプリド、チアクロプリドなどに由来
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作成:2017-12-27、更新:2018-03-02