ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

t31508#蜂蜜に検出されたネオニコチノイド系農薬をめぐって#17-11
【関連記事】記事t31403
【参考サイト】Science Vol. 358,p.109-111, 06 Oct 2017:
     E.A.D.Mitchell1ほか A worldwide survey of neonicotinoids in honey

 アメリカの科学雑誌「サイエンス」に、スイスの ヌーシャテル大学のエドワ−ド・A・D ミッチェルさんほかが、世界各国から198検体の蜂蜜を集め、5種のネオニコチノイド系農薬の残留調査を実施した結果が報告されました。その75%から、なんらかのネオニコチノイドが検出され、1種類が30%、2種類以上が45%で4-5種類は10%であったとのことです。論文にあるデータの中で、日本で採取された蜂蜜は、表に示す3検体で、いずれも、残留又は一律基準以下でした。
 
  表 日本の蜂蜜中のネオニコチノイド (単位;ng/g蜂蜜= 0.001ppm)
          静岡県浜松市 大分県国東市 岡山県玉野市 国内残留基準
  アセタミプリド  0.125     21.786    11.038   200ng/g =0.2ppm 
  クロチアニジン  0.018     0.617     1.829   一律基準 10ng/g =0.01ppm
  イミダクロプリド 0.030     0.274     2.198    同上 
  チアクロプリド  < LOQ     < LOQ     0.002    同上
  チアメトキサム  < LOQ     < LOQ     0.195    同上   < LOQ=定量限界以下
  (出典:SciのTable S1
★日本の残留基準
【参考サイト】日本食品化学研究振興財団の残留基準にあるはちみつ

 蜂蜜の残留基準は、現在、農薬や動物薬を含め47成分について設定されています(ノルジェストメットの0.0001ppm〜臭素の50ppm)。主なネオニコチノイド系農薬7種の残留基準は、2015年まで、すべて一律基準(0.01ppm)でした。2013年に愛媛大学の山崎さんらが残留調査を公表したのを契機に(記事t26401)、玉川学園発売の有田みかん蜂蜜にアセタミプリドが一律基準を超えて検出され、回収されることになりました(記事t26605記事t26803)。その後、608検体の残留調査が実施され、検出された最大残留値0.19ppmをもとに0.2ppmの残留基準が設定されました(記事t28201)。

★日本養蜂協会の動き
【参考サイト】日本経済新聞:蜂蜜やミツバチ、広がる農薬汚染 9都県で検出(2017/8/28)
       日本養蜂協会;Top Page日蜂通信2017年9月、10月ほか
          蜂蜜中の残留農薬に関する報道について(11/10プレスリリース)

 養蜂業者らでつくる一般社団法人日本養蜂協会は、現在、一律基準しかない農薬について、蜂蜜の残留調査を実施し、残留基準を設定することをめざしています。
今年の9月、同協会は、残留実態を調べるべく、都道府県団体宛てに「はちみつ中の残留農薬モニタリングに係るはちみつ試料の提供について(協力のお願い)」という文書を出し、会員の養蜂者に、蜂蜜試料の提供を求めました。
 そこには、『はちみつ試料の提供にご協力いただきますようお願い申し上げます。なお、ご提供 頂いたはちみつ試料につきましては、残留モニタリンク調査以外には利用いたしません。また、分析結果及びはちみつ試料情報は、個人情報として適正に管理し、頻出する残留農薬の把握及び残留農薬基準値設定に関する基礎資料として利用させていただきますとともに、個人が識別できる状態での公表は致しません。』とあり、試験方法や対象農薬をなどをあげています。

 実は、記事t31403で研究内容を紹介した千葉工業大学の亀田さんは、野生バチだけでなく、全国各地の蜂蜜を入手してネオニコチノイド系農薬の残留分析をしています。その結果は、まとめ中であり、まだ、正式に報告されていませんが、今年の8月下旬、日本経済新聞に、次の記事がでました。
 『岩手、福島、茨城、千葉、長野、静岡、鳥取、沖縄の各県と東京都内でサンプルを収集。
 28製品の蜂蜜、−中略−クロチアニジン、ジノテフランなど6種のネオニコチノイド系農薬を
 分析した。
  蜂蜜中の濃度は最高1グラム当たり351ナノグラム(ナノは10億分の1)、平均は約25
 ナノグラムだった。蜂蜜はネオニコチノイド系農薬の残留基準が定められていないが、
 その他の農薬に適用される国の暫定基準を18製品で超えていた。』
 この報道に対し、日本養蜂協会は、亀田さんのもとを訪れ、『今回の報道で、風評被害を受けている人がたくさんいる。このような試験を行い、結果を一般に公表する場合は、厚生労働省の基準に沿った試験で行うべきである』と、抗議をしています。

★農薬汚染のない蜜源を作ろう
【関連記事】記事t28201
【参考サイト】厚労省:アセタミプリド)の残留基準設定に関する意見の募集について(2015/2/26-3/27)

    反農薬東京グループのパブコメ意見及び厚労省の回答

 蜂蜜は市販されている食品で、それを購入して、分析し、公表することは誰でもできるのに、協会が、自ら残留分析結果を発表せず、風評被害で損害がでるからと、研究者を非難するのは本末転倒です。
 わたしたちは、2015年のアセタミプリドの残留基準改定案(蜂蜜の基準は20倍も緩和)に対するパブコメ意見で、下記のように述べましたが、養蜂業者は、他のポリネーターの保護も訴える環境団体や消費者とともに、農薬で汚染されない蜜源を拡大していくことを求めるべきです。
【2015年のパブコメ意見】ハチミツの残留基準を0.2ppmとすることに反対である。残留基準を設定する必要はない。
  [理由]1、608検体の残留調査結果では、512検体が定量検出限界の0.01ppm未満、96検体が
      定量検出限以上で、最大残留値は0.19ppmである。
   2、アセタミプリドは、養蜂用の薬剤としてミツバチに使用されることはなく、
    ミツバチの活動範囲で、当該農薬を使用しなければ、ハチミツに混入することがないため、
    一律基準が適用されている。
     にも拘わらず。農水省とハチミツ業者、養蜂者は、一律基準では、販売できなくなる
    ケースが増えることを心配して、ハチミツの残留基準を緩和していこうとしているが、
    この考えは、出来るだけ、農薬を摂取しないことを望む消費者の意向を無視したものである。
   3、いままでも農薬による地球汚染(大気や土、水系汚染)の結果、畜産物や水産物への
    農薬残留が避けられない状況が生まれてきた。ネオニコチノイド系の環境汚染や生態系の
    被害が進行している現状を肯定するかのように、アセタミプリドの使用を規制しないで、
    残留基準を緩和するのは、過去の教訓を生かしていない愚挙といえる。

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作成:2017-12-27