食品汚染・残留農薬にもどる

t31701#スルホキサフロル(新ネオニコ系)残留基準を設定後登録
グリホサート(除草剤)残留基準を緩和し、さらに適用拡大#18-01

【関連記事】記事t31204
【参考サイト】厚労省:食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について (生食発1225第4号、平成29年12月25日)
       官報:平成29年12月25日(号外 第280号)
           食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(厚生労働三六一)
       FAMIC:FAMICの農薬登録情報速報にある2017/12/25登録情報
       ダウ・アグロサイエンス:Top Pageエクシードフロアブルトランスフォームフロアプル

 厚労省は、昨年12月25日の官報号外で、『食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件』の告示を出し、ネオニコチノイド系新成分であるスルホキサフロル残留基準や除草剤グリホサートの残留基準緩和ほかを設定しました。また、同日、農水省はスルホキサフロルの農薬製剤、果樹や野菜用殺虫剤「トランスフォームフロアブル」(9.5%含有水和剤)と水稲用殺虫剤「エクシードフロアブル」(20%含有水和剤)をそれぞれ3製剤登録しました。さらに、除草剤グリホサートイソプロピルアミン塩液剤13の適用拡大登録もなされました。

 わたしたちは、いままで、グリーンピース・ジャパン、日本有機農業研究会、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議とともに、厚労省の残留基準案に反対し、農水省や環境省に、ミツバチ保護と人への健康影響防止の立場から、スルホキサフロルを登録しないよう求めてきました。また、2015年11月、アメリカでのスルホキサフロルの登録取消、販売・流通禁止措置*を踏まえ、パブコメ意見で、厚労省に残留基準設定を一時ストップさせました。
*注:養蜂団体などがミツバチに被害を及ぼすとした認可取下げの訴訟で、EPAに登録取消し命令の判決(記事t29102参照)。

 2016年10月、アメリカで、条件付きで再登録されたため、2017年3月、厚労省はイチゴの残留基準を変更しただけの新たな残留基準案を提示し、パブコメ意見を求め、同年6月の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会での論議で、基準を提案通りにすることが認められました(経過は記事t30601記事t31204参照)。
 以下に、このたび、厚労省が示した残留農薬に関するパブコメ意見に対する回答の問題点を示します。

★スルホキサフロル:パブコメ意見923件
【参考サイト】厚労省パブコメ結果
 @2015年12月04日〜2016年01月02日パブコメ結果について
   結果(意見数537件) 別添1 別添2 参考資料
 A2017年03月01日〜2017年03月30日パブコメ結果について
   結果(意見数386件) 別添1 別添2 参考資料

 厚労省は、残留基準案に寄せられた2015年のパブコメ意見537件と2017年の意見386件を公表し、同省の回答が示されましたが、残留基準の設定や算出方法、農薬の長期摂取量や短期摂取量の推定については、一般論の記述にすぎませんでした。

【スルホキサフロルの発達神経毒性等】具体的な毒性については、『食品安全委員会の食品健康影響評価において、各種毒性試験結果から発達神経毒性、免疫毒性及び遺伝毒性は認められなかった。』など、農薬評価書記載内容の域をでません。

【ミツバチ影響試験】肝心の登録申請にある試験データについては、明らかにしないままです。先の分科会で、委員達は、農水省の説明:@アメリカと日本では作物の品種や栽培方法が異なっている。Aミツバチにかからないように防除の段階で管理するのが基本。そのために使用上の注意事項で対応している。Bミツバチは農薬が直接かからないと死なないから直接かからないよう注意すればいい、に納得しました。この時、情報をもっと国民に知らせるべきとの注文が出て、厚労省は「HPに掲載しているし、パブコメ回答時にも説明する」と述べていましたが、新たな追加説明はありませんでした。
 結局、厚労省は残留基準の設定で、果樹・野菜のアブラムシや水稲の斑点米カメムシ駆除に使うための新たなミツバチ殺戮剤の登録に手を貸しただけです。

  2月1日:FAMICにスルホキサフロルの農薬抄録が公開されました。
  ミツバチなどの影響試験成績は、こちらです。


★グリホサート:パブコメ意見504件
【参考サイト】厚労省:2017年06月21日〜7月20日パブコメ結果について
   結果(意見数504件) 別添1 別添2 参考資料

 グリホサートの残留基準緩和(小麦やソバなどの穀類を国際基準と同じ30ppm、ヒマワリ種子やゴマなどオイルシード類はアメリカからの要請による40ppm、ほか)のパブコメ意見募集は、昨年6月に実施されました(記事t30804記事t31204参照)。意見は504件で、厚労省の回答の一部は以下です。
 @残留基準に採用した高い国際基準の根拠については、データも示さない。
 A日本では、畔や播種前しか使用できない小麦等の栽培で、海外でのプレハーベスト使用を
  認めるなとの意見に、『機械で収穫する際に雑草が生えているとその汁液により農作物が
  汚される場合があることから、雑草の水分量を減らす目的で収穫前に畑全面に使用する
  方法があります。』と、基準超えがないよう高く設定したことの言い訳をした。
 B国際がん研究機関(IARC)がランクアップして、発がん性2A(人に対して発がん性の
  可能性が高い)にしたが、信頼性の高い優良試験基準で実施されたデータを評価した
  食品安全委員会が、発がん性はないとしている。IARCは公の場で入手可能な学術論文等を
  用いてハザード評価を行ったが、食品を介してグリホサートを摂取するヒトのリスクに
  ついて評価したものではなく、これをもとに、カリホルニア州が警告表示を義務をつけた
  ことは、食安委の評価に影響は与えない。
 としており、とても、国民を納得させる回答にはなっていません。

★とんでもないクリスマスプレゼント
 スルホキサフロルについては、アメリカでは、ミツバチ保護のため、制限付きで使用認可されています。グリホサートは、マルタ、ベルギー、オランダ、スリランカ、アルゼンチンで、使用規制されており、フランスでは、2022年から家庭ガーデンなどでの使用規制が行われます。国として一旦、発がん性を認めず使用継続を決めたドイツでは、連立政権維持のため、グリホサート使用規制を条件とすることが、政党間で話合われているという報道もあります。
 日本の農水省や環境省、厚労省らの農薬行政は、海外の動きに逆行するかのように、12月25日、スルホキサフロルの登録とグリホサートの適用拡大登録及び高い残留基準の設定というクリスマスプレゼントで応えました。
 「沈黙の春」の一節で、ミツバチやポリネーターへの影響を懸念し、浸透性殺虫剤と除草剤使用について警告を発した(記事t27606参照)レイチェル・カーソンも嘆いていることでしょう。

 わたしたちは、新規登録されたり、適用拡大された両農薬の使用をやめるよう、今後とも、国だけでなく、地方自治体や農業者に働きかけていきましょう。

 2017年10月16日:グリーンピース・ジャパンらNGO8団体による田んぼでミツバチに有害なネオニコチノイド系農薬の禁止とお米の検査規格見直しを求める新キャンペーン開始 署名サイトはこちら



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作成:2018-01-30、更新:2018-02-01