環境汚染にもどる
t31705#2016年度のゴルフ場使用農薬の水質調査結果〜水産指針を超えた事例もある#18-01
【関連記事】記事t30302(2015年ゴルフ場農薬調査)
【参考サイト】環境省:ゴルフ場暫定指導指針対象農薬に係る水質調査結果の頁
ゴルフ場で使用される農薬に係る平成28年度水質調査結果について
都道府県別の水質調査結果、農薬別の水質調査結果(排水口)
水質汚濁の防止及び水産動植物被害の防止に係る指導指針
ゴルフ場での使用農薬による環境汚染防止のため、環境省は、1990年に「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」を定め、ゴルフ場からの排出水等の農薬調査を実施しています。調査対象農薬は当初45種でしたが、2013年の改定で、人畜被害防止を目的とした水質汚濁の登録保留基準がある農薬を加え、100を超える農薬が分析されることになりました。さらに、2017年には、新たに、生態系保全の観点から水産動植物被害の防止のための水産指針値指導指針が追加され、調査が実施されています。今号で紹介するのは、2016年度の結果です。
★検出された農薬は46種
2016年の排出水調査は、全国のゴルフ場の約2分の1にあたる1068か所で実施されました。対象農薬は168ですが、都道府県により、分析農薬数には、バラツキがあり、少ないのは、調査が実施されなかった山形、山梨、宮城県が0、山口11農薬、三重7農薬。多いのは、茨城127、兵庫126、埼玉121農薬などで、1ゴルフ場あたり平均26農薬が分析されました。
排水口調査の結果、検出された農薬別の検体数と最大検出値を表1に、経年推移を表2に示しました。
延べ総検体数は前年より約1.6倍増え6604となり、46農薬が検出され、約4.1%の268検体に農薬が検出されています。水濁指針値や水産指針値の多くは、それぞれ、水質汚濁に係る農薬登録保留基準や水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の10倍値となっています。
2016年の検出値で、水濁指針を超えたものはありませんでしたが、現行の水産指針を超えたのは6件あり、内訳は、ダイアジノン2検体(最大検出値3.8μg/L)、ピロキサスルホン3検体(同50)、ペルメトリン1検体(同10)でした。
表1 2016年度のゴルフ場排出水中の農薬検出状況(単位:μg/L)
農薬名 検体数 検出数 最大値 農薬名 検体数 検出数 最大値
アシュラム 408 37 35 ハロスルフロンメチル 79 2 2
アゾキシストロビン 283 23 230 ヒメキサゾール 37 1 3
イソキサベン 14 1 3 ピロキサスルホン 28 5 50
イミダクロプリド 103 4 1 フェニトロチオン 116 2 2.9
イミノクタジン 106 11 1 フェリムゾン 4 1 1
オキサジアルギル 29 4 10 フラメトピル 13 1 1
オキサジクロメホン 111 1 1 フルキサピロキサド 50 7 9
カフェンストロール 67 4 13 フルポキサム 67 19 3
クロチアニジン 268 23 8 プロジアミン 46 1 1
クロリムロンエチル 30 5 1 プロピコナゾール 111 1 1
シアゾファミド 39 1 1 プロピザミド 133 17 41
シアナジン 11 8 6 ペルメトリン 55 1 10
シクロスルファムロン101 1 0.037 ペンシクロン 194 9 25
ジチオピル 110 2 1 ペンディメタリン 123 2 8
シプロコナゾール 86 3 20 ペンフルフェン 46 9 12
シメコナゾール 48 1 3 ホラムスルフロン 53 2 3
ダイアジノン 153 2 3.6 ミクロブタニル 1 1 1
チアメトキサム 68 2 0.8 MCPP 95 1 16
チオジカルブ 116 1 1 メタラキシル 130 2 0.5
チオファネートメチル 92 6 6.2 メトコナゾール 31 1 2
チフルザミド 129 29 20 メトラクロール 14 5 12
テブコナゾール 150 7 6.1 レナシル 1 1 1
トルクロホスメチル 94 1 10 分析延べ検体 6604 268
表2 ゴルフ場排水口等の水質調査結果及び取組状況の推移
調査年度 1996年 2005年 2015年 2016年
全国ゴルフ場数 2340 2446 2244 -
調査実施ゴルフ場数 1984 833 515 1038
調査対象農薬数 30 45 125 168
総延べ検体数 約10万3千 35687 15902 27182
排水口調査延べ検体数 − 15749 4068 6604
★ゴルフ場使用農薬はブラックボックス
【参考サイト】緑の安全推進協会;Top Page 情報の窓
ゴルフ場排出水の分析実施は、単なる努力規定ですし、常時監視する必要もありません。そもそも、ゴルフ場で使用される農薬は、芝や樹木など非食用なので、適用事項を守らなくても罰則は科せられません。
緑の安全推進協会の調べ(報告会社33社)では、2016年度のゴルフ場、緑地分野の農薬製剤販売実績(単位トン)は、表3のように、除草剤の殆どは、芝と緑地用、殺菌剤の殆どは芝用、殺虫剤の60%は樹木用でした。
実際にどのような農薬がゴルフ場で、多く使われているかは、よくわかりませんが、化管法の指定農薬に限れば、2015年度の成分別年間排出推定量(=出荷量相当)の筆頭はジラム41.9tで、アゾキシストロビン18.7t、テブコナゾール17.2t、チオファネートメチル14.8t、TPN12.4tと殺菌剤が続き、以下、11t台の除草剤プロピザミド、メトラクロール、メコプロップ、2,4-D9.2tの順でした。なお、表1に見られるネオニコ系は化管法指定のない農薬であることを忘れてはなりません。
表3 2016年度 ゴルフ場、緑地分野の農薬製剤出荷実績(単位 トン)
使用場所 芝 樹木 緑地 合計
実績 前年比 実績 前年比 実績 前年比 実績 前年比
殺虫剤 372 90.6 511 119.9 1 72.5 884 105.5
殺菌剤 895 106.1 1 99.4 0 0.0 896 106.0
除草剤 1067 103.7 9 18.2 3777 104.6 4853 103.5
植調剤 34 94.6 2 125.7 50 153.2 87 122.5
その他 68 122.4 33 69.1 - - 101 97.1
計 2437 102.6 556 106.0 3829 105.1 6821 104.2
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作成:2018-04-30