農薬の毒性・健康被害にもどる


t31706#農水省、2016年度の農薬事故公表〜毎年必ず事故を起こすクロルピクリンは即刻使用禁止にすべき#18-01
【関連記事】記事t30501(2015年事故)、記事t31707(ミツバチ被害)
【参考サイト】農水省:2016年度農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況にある被害詳細

 暮れも押し迫った2017年12月26日、農水省は、「平成28年度 農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について」という調査結果を発表しました。この調査は、2016年4月から17年3月までの、人の中毒事故、農作物・家畜等の被害を都道府県の農政部署から集め、まとめたものです。都道府県が報告しなければ事故はないことになります。原因は農薬ではないと判断されれば、報告されることはありません。
 特に、農薬使用者でなく、周辺住民が大気中の農薬で被害を受けた場合、どこへ届ければいいのかすら、明らかではありません。被害を受けた人が相当しつこく主張しないと途中で握りつぶされる可能性があり、ここの数字は氷山の一角と受け止めた方がいいでしょう。
 この調査が始まったのは、1976年(昭和51年)からと農水省は言っていますが、現在のようにホームページで公表するようになったのは、2010年からだということです。

★16年度の事故は減ったというが
 16年度の結果は、次頁の表1を参照していただきたいのですが、15年度に比べ、事故件数が減ったと報告されています。
 確かに、人の事故については15年度の死亡者が7人であったものが、16年度はゼロで、中毒者も15年度は28件、65人が16年度は19件23人と減少しています。
 これは、誤用が減ったからです。一方、魚類の被害は4件増え、7件発生しています。
 いずれも、どこで、どのような状態で、何という農薬によって被害を受けたのか、詳しい状況は一切知らされません。事故詳細を示した表2のように、唯一農薬名が明らかなのは土壌くん蒸剤のクロルピクリン(以下、クロピク)だけです。本誌で何度も報告してきたように、クロピクはたとえ被覆しても、透過して長期間大気中に漂い、周辺住民の健康を損ねます。16年度でも「目がしみる」「目の痛み」など人への被害が3件、7人となっており、容器の劣化破損による漏洩被害を含めると8人になります。さらに、16年5月には、ニンジン畑や隣接するレンコンのハウスに流入して、葉の変色被害をおこしています。
 すでに、EUでは使用禁止、最近では中国も使用禁止に動いています。カナダでは使用者は特別の許可が必要で、だれでも使えるものではありません。もともとが毒ガス兵器だったことを考えれば、使用禁止は当然の要求です。最低、クロピク使用の周辺住民の健康被害調査をすべきですが、たとえば、ナガイモやニンニクに大量に使用している青森県は、健康調査を拒否しています。

★マラソン練習中に被ばく
 16年度の人の事故の中で、散布農薬の飛散によるものとして1件だけ報告がありました。どこで発生した事故なのかわかりませんが、6月に0〜19才の人物一人が「顔の腫れ、発疹、手足のしびれ」を訴え、原因として「散布農薬の飛散によるもの」とされています。畑に隣接する道路でマラソン大会の練習をしていた生徒が被害を受けたとのことです。農水省は農薬名、事故発生場所を明らかにすべきです。

    表1 2015年度の農薬中毒・危被害件数(農水省公表)  =省略=

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作成:2017-12-27、更新:2018-03-02