田七人参は高麗人参の仲間
●田七人参とは何?
田七人参は昭和30年代に初めて日本に紹介され、以来、一部の人たちのあいだではひそかな人気を集めてきました。それが、ここ数年で数多くのマスコミなどでも取り上げられ、ブームを巻き起こしつつあります。現在は粉末やエキス、ドリンクなど、さまざまな商品が販売されるようになりました。 田七人参は、三七人参とか、田三七などとも呼ばれる生薬で、ウコギ科に属する植物の根です。よく知られた高麗人参と非常に近い植物で、実際、葉や花、果実など地上に見える部分は、素人では区別がつかないほど良く似ています。 ただし、生薬として用いられる根の部分のかたちは、高麗人参とはかなり違っています。長さは3〜5センチほどで、人参のように細長くはなく、もっとずんぐりした感じのものです。 この根を掘りおこして、ひげ根や枝根を取り除いたあと、日干しにして半乾きにし、さらに黒褐色のつやが出るまで手でもみながら乾燥させるのです。この完成品はカチンカチンに固いもので、このため粉末にしたり、エキスを取ったりして、服用されるのです。
●雲南省、貴州省特産
田七人参は、日本では栽培されていません。中国南部の雲南省文山県あたりの気候風土がこの栽培に適し、田七人参の85%がここで生産され、日本に輸入されています。年間を通した豊富な雨量、温暖な気候、そしてこの地の土壌が、田七人参の栽培に欠かせないのでしょう。 かつてはミャオ族など少数民族によって少量のみ栽培されていたのですが、最近はブームもあって、かなり多くの人たちがこの栽培に従事するようになっています。
田七人参はたいへん貴重な生薬
●生産はかなり大変
田七人参は収穫まで3年から7年という年月が必要で、しかも大変に手間のかかる作物です。 まず、生産地には平地が少なく、ほとんどが標高800メートルから1000メートルの山の傾斜地で栽培されているため、農作業自体に手がかかります。 さらに、田七人参は同じ畑での連作ができないため、つねに畑を移動しなければならず、そのための焼畑がいまも行われています。 田七人参は直射日光を嫌うため、覆いも必要です。開花すれば、根部に栄養をいきとどかせるため、花部を切り取るといった作業も行わなければなりません。 収穫は春、秋の年2回ですが、収穫までの年月や収穫時期によって商品価値が異なり、7年物が最高級品とされています。
●金にも換えがたい
これほど手間のかかる田七人参ですから本場・中国でも、昔から貴重品として扱われてきました。 明の時代の医師・李時珍によって書かれた「本草綱目」という中国の最も伝統のある植物書には、「三七(田七人参)は、味は微甘で苦く、人参の味に似ている。また、金不換″の称がある」 と記載されています。 つまり、金にも換えがたいほど、貴重な薬だというわけです。このため、田七人参を服用できるのは、かなりの上流階級だけだったろうとも推測されます。 なお、中国では、田七人参の葉(三七葉・サンシチョウ)が根と同様の目的で用いられたり、花(三七花・サンシチカ)も血圧降下作用やのどの炎症を鎮める目的で茶として服用されたりもしています。 |