田七人参という名前を聞いたことがある人は、まだまだそう多くはないかも知れません。
田七人参は、いわゆる朝鮮人参(高麗人参)といわれるオタネニンジンと非常に近縁の植物で、古代中国では金にも換え難い貴重で高価な生薬として王侯貴族の間で利用されてきました。止血作用が非常に強く、戦場における刀傷や矢傷などの特効薬としても用いられていたようです。 日本では比較的新しく紹介された生薬で、当初は朝鮮人参と同じような効能がある高貴生薬としてあつかわれていました。成分の研究も1970年代の後半に、朝鮮人参との成分比較として行われ、サポニンといわれる一連の化合物について、その化学的性状が日本の研究者によって初めて明らかにされました。
最近では、その強い止血作用だけでなく、肝炎に村する予防・治療効果や心筋の酸素消費量を減少させる作用、血圧降下作用などにも注目が集まり、新たな用途が期待され、日本における使用が拡大されています。とくに、ガンに対する予防効果についても研究されつつあり、少しずつその作用が明らかにされています。 現在では、中国雲南省や貴州省で栽培、日本向けに大量に輸出され、比較的容易に入手可能になっています。しかしながら、田七人参(中国では三七人参ともいう)については、まだまだ研究途上であり判らない点もたくさんあります。
田七人参は上手に利用したい
●誤解のない利用を
これまでいくつかの実験データを紹介してきましたが、マウスの化学発ガンに村しては、田七人参には相当強い発ガン予防効果が認められました。 こうした結果を筆者らは「ガン学会」 で発表し、大きな反響を得たのです。 ただし、これはあくまでも発ガンに村する抑制効果であって、ガンの治療に有効なわけではありません。安易に 「ガンに効く」という誤った表現を用いられることのないよう、また誤った期待を持たずに、田七人参の有効性を理解していただきたいと思います。 また、実験動物での研究は少しずつ進んでいますが、ヒトに村する作用は中国における経験的な用いられ方を参考にせざるを得ないのが現況です。 有効成分が分離され、その作用が科学的に証明されるまでには、まだ少し時間がかかることと思われます。 だが、今まで述べてきたように、各種の実験から田七人参には各種炎症に村する抑制効果や化学発ガンに対する予防効果などがあるのは明らかですので、ますます用途が広がるものと考えられます。
●日々の注意が大切
現在、ガンの治療法の研究は日進月歩の勢いで進んでいて、ガン制圧も夢ではなくなりつつあります。つい最近も、ガンが成長するときに重要な役割を果たすと思われる酵素が発見され、この解明はガン制圧のカギを握るだろうと期待されています。 だが、治療法が完成したとしても、ガンが嫌な病気であることには変わりはなく、費用などの問題もつきまとうでしょう。 したがって、ガンにならないような努力をつづけることは、今後もきわめて大切なことなのです。
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