アルコール性肝炎は大顆粒性脂肪変性と、障害に対するびまん性の炎症反応および壊死(通常は局所的)からなる;できあがった肝硬変もまた存在する。
マロリー体(アルコール性ヒアリン)は膨張した肝細胞の細胞質中の線維様蛋白である;これらの細胞は脂肪をほとんど含んでいないか、または全く含んでいない。ヘマトキシリンーエオシン染色では、マロリー体は紫がかった赤色の不整な集合体である。マロリー体はアルコール性肝炎の特徴だが、ウィルソン病やインディアンの小児肝硬変、小腸のバイパス手術後に起こる肝硬変、原発性胆汁性肝硬変(またはその他の長期の胆汁うっ滞)、糖尿病、病的肥満、肝細胞癌などにもみられる。マロリー体をもち、壊死した肝細胞に対して、多形核白血球反応が局所的に亢進する。肝小葉のゾーン3では、結合組織が類洞内と肝細胞周囲に生じる。コラーゲン線維もディッセ腔に侵入し、連続した膜を類洞内皮下に形成する。静脈の病変も進行し、終末肝静脈周辺の顕著な硬化のように、最終的に硬化性ヒアリン壊死や中心性ヒアリン硬化となる。肝硬変が完成される以前に、この病変が門脈圧亢進症を生じさせることがあり、肝硬変の初期症状である。静脈の瘢痕化(静脈閉塞症で起こるような)のみでも、明らかな肝硬変なしで、門脈圧亢進症に至ることがある。 びまん性の炎症細胞浸潤と壊死を伴ったアルコール性肝炎が、脂肪肝と肝硬変の中間段階としてしばしばみられる。細胞の壊死と中心領域(ゾーン3)の低酸素状態はコラーゲン生成を刺激しうる。しかし線維化は、脂肪を蓄える伊東細胞の線維芽細胞への変化で起こる。そこで、線維化はアルコール性肝炎の中間段階を経ずに、肝硬変に進むことがある。大量飲酒者の20%で肝硬変となり、肝は細結節状となり、線維性中隔と結節によって正常構造が破壊される。炎症細胞浸潤と脂肪肝は非常に特徴的だが、ときに、組織学的には慢性活動性肝炎に似る。禁酒により肝臓が再生反応を起こせば、臨床像は混合肝硬変の様相を呈する。
飲酒者の肝臓では正常肝、脂肪肝、肝硬変も含めて含鉄量が増加するが、その発生頻度は10%未満である。鉄は肝実質細胞とクッパー細胞に沈着する。消費されたアルコール飲料の鉄の量や、飲酒歴の長さとは関係ない。体内全体の鉄の貯蔵量は顕著には増加しない。
アルコール性肝硬変は末期段階の疾患であり、慢性的な大量飲酒者の10〜20%に発生する。小結節性の肝硬変がはっきりとみられるようになり、脂肪肝やアルコール性肝炎病像が遷延化した結果起こる。生き残った肝細胞からいくらかの肝再生がみられる。肝硬変がゆっくりと進行し、非特異的な大結節型になることもある。そして肝臓は萎縮し小さくなる。
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