■生活習慣病 胸の痛みと心臓病の中医学解説
 

危険な胸の痛み


いくつかの原因が重なって突然起こる、胸の痛み

 老化や慢性病などによって滋養やうるおいの損傷が続いたり、くり返したりすると、肝や腎の機能が相対的に亢進します。そして、気の余ったものが「火」とされているように、やがて熱が生まれます。この熱が肝や腎の精や血、津液を損なうと、さらに熱の勢いが強くなります(陰虚火旺)。

 からだがこのような状態にあるときに不規則な食生活を続けたり、暴飲暴食をくり返すと、脾胃の働きが慢性的におとろえて、からだに必要のない水分が生まれ、これが集まって変化した発病因子(「痰濁」)がたまります。

 この痰濁が熱と結びつくと、強力な発病因子(「痰火」)が生まれます。熱は上昇する性質をもっているので心を傷つけやすく、突然、激しい胸の痛みに襲われます。熱によって水分が失われて血液が流れにくくなっているのに加えて、痰が血液の流れを妨げるわけですから、かなり重症です。

 不安感をともなう灼けるような胸の痛みがあり、黄色く切れにくいたんがたくさん出る・イライラ・のどの渇き・便秘などの症状をともない、舌が紅く黄色くなるとともにべっとりとした舌苔がつき、玉をころがすような速い脈をふれるときは、熱を冷まし痰を除く力が強い「もう石滾痰丸」や、黄連温胆湯に海浮石(軽石)や海蛤殻を加えたものを使います。ただし、痛みがだんだん強くなったり、長く続くときは、医師の診断を受けたほうがいいでしょう。

血液の流れが止まると固定性の激しい痛みが起こる

 心の血液が流れにくくなる原因はさまざまです。しかし、どのタイプであっても、治療ができないまま病状が進むと、やがて心の血液の流れが停滞し(血オ)、固定性で刺すような慢性の激しい痛みが起こるようになります。

 痛みは絞るようなものから、刺すような痛み、割れるような痛みまで、さまざまです。胸苦しさや不安感が強く、冷や汗が出て、特に精神的な刺激で強くなります。舌は暗紅色から紫色になったり、赤紫色の斑点(「オ点・オ斑」)がつき、舌の裏側の血管が青紫色になって努脹したり、曇りガラスで覆われたようにみえます。また、弦を張ったような渋滞した脈をふれ、しかもリズムが不規則で乱れるようになります。

 このような場合には、血液の流れを回復して痛みを止める力が強力な「冠脈通塞丸」を使います。しかし、多くの場合、心筋梗塞につながるので、できるだけ早く医師の診断を受けるほうが賢明です。なお、心筋梗塞による胸の痛みを、中医学では特に「真心痛」といいます。

 


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