ダイオキシンにもどる
t09201#除草剤CNPのダイオキシン問題で、三井化学と労働省からの回答#99-08
 前号掲載記事のように、水田除草剤CNP(商品名MO)中に含まれるダイオキシンに関して、農水省、メーカーの三井化学、労働省へ、質問と要望書を送りましたが(91号質問状記事へ)、後二者から回答がきましたので、その要点を示しておきます。
 なお、農水省からの回答はいまのところ来ていません。環境ホルモン農薬、農薬製剤添加の不活性成分についての質問・要望と合わせて、今後ともねばり強く、情報公開を求めて行く積りです。
★三井化学株式会社からの回答
◆測定に供したCNP試料について、その製造工場が明かになりました。
 製剤10種の内訳は、三井系の製剤会社三中化学が6、三東化学2、他社のものが2ということでした。原体1は同社の大牟田工場でしょう。三中化学は愛知県新城市にあり、1984〜85年に、工場周辺の水系で高濃度のCNPが検出されたため、市民団体「農薬を考える会」らが抗議に及び、施設改善させたところです。

◆過去のものを含め調査したCNP中のすべてのダイオキシン同族体・異性体の含有量を明かにせよという問いに対しては、記者会見と同じく、本年実施されたラッペの結果だけしか明かにされませんでした(17種のTEFが設定されたダイオキシン同族体・異性体数値のみ)。従って、CNPに最も多く含まれる1,3,6,8−TCDDの含有量も、いままで、2,3,7,8−TCDDを含まないといってきた根拠も不明なままです。

◆2,4,5−T、PCP中のダイオキシン含有量については、「社内を調査しましたが、ダイオキシン含有量のデータは見つかりませんでした。当時は、現在ほどダイオキシンについての知見がなく、古い製品のダイオキシン含有量の調査は行なっていないものと思われます。」とのこと。「エエー!ほんとー?」と思わず、声がでてしまう答えです。薬害エイズ関連のデータを隠していた厚生省のことが頭をかすめました。製造当初から外国で、ダイオキシンの毒性が問題になっていましたし、自らの会社で、職業病認定の労働者がでているのに、信じられないことです。横浜国立大学の益永さんたちは、農家の倉庫に保管されていた農薬を探してきて分析したそうですが、メーカーもそんな態度をみならってもらいたいものです。
 PCNBについて「原体に1234678−七塩化ダイオキシンが13ppb検出されていることを確認しています。製剤のダイオキシン含有量に関しては知見はありません」としかいわないのも、何をかいわんやです。
 それにしても、こんなことをいうメーカーに対して、厳しく行政指導をしなかった監督官庁の農水省の責任も問われるべきでしょう。

◆CNP製剤の回収処理については「8263トンを大牟田工場で保管しています。処理につきましては、社外の協力を得ながら検討していますが、現時点では適切な処理方法を見出だしていません。今後とも関係官庁の指導も得ながら検討を続ける所存です。」と答えています。CNP製剤を多い時には、年間5万トン以上も製造したきた−いいかえれば、水田にばらまいてきた−三井化学は、あと一年販売できていたら、8千トンの製剤の処理なんてどうってことなかったのにと残念がっているかもしれません。
 MO追放運動の行政交渉の折り、海外へ輸出しないようにと念を押しましたが、これは、守られていたようですね。そうそう、その時、製剤からCNP原体を除いて、粘土鉱物のみを再利用するといっていたようでしたけれど、これは実現していないのかな。
 保存中に、新たなダイオキシンが生成したり、包装が破れて環境中に漏洩したということがないようにきちんと管理してください。
 一方、PCNB製剤について「弊社は1981年から1993年まで製剤の受託生産を行なっておりました。製品は全量を委託元に納入していましたので、弊社は回収していません。」と、いうのも何とも無責任な答えです。本来なら、ダイオキシンの混入を隠したまま製品を販売したということで製造物責任を問われてもしかたがないにもかかわらず、問題意識のなさには、あきれはてます。

◆2,4,5−T、PCPを製造に携わっていた労働者の健康状態についての質問に対して「製造に携わっていた作業員1人1人、ならびにそのご家族のプライバシーにつながる問題であります。回答を差し控えさせていただきたく存じます。悪しからずご了承のほどをお願いいたします。」とのことで、何も具体的に答えてくれません。すでに、クロロアクネなどの職業病に認定されている従業員もいるわけですから、彼らやその家族の健康状態について、きちんとした疫学調査を実施し、公表することは、製造メーカーとして社会的責任だと思うのですが、このような回答では、プライバシーを楯に調査もせず、事実を隠蔽してしまう魂胆なのかと疑いたくなります。

◆三西化学(福岡県久留米市荒木町)農薬公害訴訟については、「1999年2月26日、最高裁から上告棄却の言い渡しが行なわれ、判決が確定しました。この裁判の中で、三西化学の周辺住民に健康障害の発生は認められておりません。従って、今後とも周辺の皆様にご迷惑をおかけすることはないと考えております。」
 まさか、原告家族の健康被害は全くなかった。1973年に提訴された訴訟は単なるいいがかりだというのではないでしょうね。原告の飲んだ井戸水や工場周辺大気・土壌には、農薬成分が検出されていたのですから、仮に裁判所が、被害−後遺症との因果関係−を認定しなかったからといってそれが即「健康障害の発生がなかった」ということにはなりません。
 裁判の過程で、工場の操業停止という原告の要求は83年に実現しており、その跡地の汚染がないことの証明は、親会社の三井化学が自らなすべきです。

◆三中化学、三東化学、大牟田工場でのダイオキシン環境調査については、「この種の農薬の製造を行なっていません。工場周辺の皆様にご迷惑をおかけすることはないと考えております。」とのことですが、考えているだけでなく、三西化学跡地と同様、きちんと環境調査して、汚染がないことを証明してもらいたいものです。

★労働基準局安全衛生部化学物質調査課からの回答
 2,4,5−T、PCP、CNP、PCNBなどのダイオキシン含有農薬の製造工場におけるダイオキシンの環境調査と従業員の健康調査を求めた要望に対する回答は
「ダイオキシン類の発生につきましては、御存知の通り清掃業を中心に社会的にも関心が高くなっております。これらのことを踏まえつつ、労働省としましては、専門家等のご意見を聞きながら、今後とも労働者の健康確保のための対策について検討をしていきたいと考えております。そこで、今回の御要望につきましても、貴重なご意見として、今後の対策を検討する上で、参考とさせていただきます。」
 2,4,5−TやPCPに関しては、労働省が既に職業病の認定をしている従業員もいるわけですから、そのフォローをしっかりしてもらいたいとの私たちの思いは、はたして通じたのかと、首をかしげたくなるような味気ない答えでした。
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作成:1999-08-27