環境汚染にもどる
t10002#PRTR法に対する公募意見提出−その2#00-03
 本年2月に、中央環境審議会は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善促進に関する法律」(通称PRTR法)に関する第二次答申をだしました(環境庁報道発表資料)。
 これは、昨年11月に求めた、指定対象物質、製品の要件、対象事業者についての公募意見を踏まえたもので、原案にいくつかの修正がほどこされています。
 公募意見の提出者数は164(企業:96、事業者団体:28、労働団体:2、NGO:15、個人23)で、のべ意見数は470だったということですが、審議会での論議内容について、意見提出者には、何の通知もないため、私たちは環境庁に請求して、そのまとめである「寄せられた意見に対する考え方・対応」を入手せざるを得ませんでした(その後、環境庁HPで公開)。
 その内容をみてみると、私たちが農薬について述べた意見(てんとう虫情報98号参照)で、審議会で採用されたのはアミトロールを第二種指定化学物質から第一種に格上げしてほしいという一点のみでした。
 農薬製剤に添加する不活性成分を第一種指定物質とすべきである(特にS−421)との主張に対しては、「ご指摘のような物質についても、選定基準に当てはまるものであれば選定する。S421につきましては、基準に該当する有害性を示すデータが確認できないため選定されていません。」と味気ない答えでした。
 他団体からの、アスベストを第一種とすべきとの意見に対して、審議会が第一種指定化学物質候補とすることに決めたことは、評価されますが、p−ジクロロベンゼンについては、発癌クラス2、経口クラス3及び作業環境4を削除してほしいという意見(多分、業界からの)を全面的に受け入れなかったものの「ゲッ歯類に特異性であり、人のリスク評価に反映することは困難であるとされているので、その旨、脚注に記載いたします。」との配慮をみせています。
 農薬及びその関連製品の散布者は個人か事業体であるかにかかわらず、すべて事業者とすべきであるとの私たちの主張は一蹴されたどころか、審議会は、対象事業者を常用雇用者数21人以上で、第一種指定化学物質の年間取扱量1トン以上(発癌クラス1の物質は0.5トン以上)とあった原案を、法施行の最初の2年間は、5トン以上とすると、条件を緩和してしまいました。段階的に実施して行くほうが制度の円滑な実施を図れるというのがその理由ですが、その背景には、依然として、環境や人の健康よりも、経済性を重んずる風潮が消えていないことが窺われます。環境汚染物質排出移動登録といういままでなかったことをやるのですから、当然、人手と金がかかります。それに必要な予算措置をとり、最初からきちんとしたやり方で制度を立ち上げることが肝要だと思います。

   あれやこれや、問題の多い第二次答申と前後して、新たにPRTR法第三条「化学物質管理指針」が提示され、意見公募が行なわれました(意見公募)。これについては、先のパブリックコメントに関連したお願いとともに、以下のような意見を環境庁に送付しました。
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【T】S−421に関連したお願い
 PRTR法に関連しての平成11年11月19日付けの意見公募の際、当グループはいくつかの意見を述べました。私たちの意見の多くが不採用になったのは、遺憾なことですが、その中で、特に、残念に思ったのは、家庭用殺虫剤やシロアリ防除剤に添加されている共力剤S−421(オクタクロロジプロピルエーテル)が第一種指定物質とならなかった点です。
 メトロフェン研究会の技術資料によれば、S−421のLD50はマウスの経口毒性4.45ml/kg、経皮毒性21−23.3ml/kgとなっており、急性毒性からいえば毒物に該当する物質となっております。また、慢性毒性・発癌性試験につきましては、日本しろあり対策協会が1995年に薬剤等認定委員会で発癌性なし、催奇形性なしなどを確認したとの報道がありましたが、毒性試験内容については、西本孝一日本木材保存協会会長により、雑誌「木材保存」(22巻2号p96〜104)にその概要が示されているだけで、毒性試験データ資料は、同会長に請求しても得られませんでした。
 S−421については、貴審議会での検討結果として「基準に該当する有害性を示すデータが確認できないため選定されていません」との見解が示されていますが、今回、有害性の判断材料とされた資料とその内容がどんなものであったかをお教えくだされば幸いです。

【U】第三条に関する意見

1、第一項(指定化学物質等の製造、使用その他の取り扱いに係る設備の改善その他の指定物質等の管理の方法に関する事項)についての意見
 トラブル・事故、災害などが発生した際についての対策も忘れてならないと思うので、以下のことも念頭において、日常的な指定物質の管理に心掛けるべきであると考えます。
@製造業においては、有害物質の環境への放出量は、定常的な化学物質製造・使用時よりも、プラントのトラブル発生時、点検修理時、立ち上げ時など、非日常的な作業を実施する際の方が多いと考えられる。取扱事業者は、このような場合の指定物質の放出量を算出して、報告することとともに、出来るだけ環境への放出を少なくさせる汚染防止手段を構ずるべきである。
A万一の工場事故や保管倉庫の火災、輸送中の交通事故による漏洩、地震・風水害などの災害による漏洩に対しても、取扱事業者は、指定物質の放出量を算出して報告するととともに、このような場合にも、出来るだけ環境への放出を少なくさせる汚染防止手段を構ずるべきである。
B農薬(防疫用薬剤やシロアリ防除剤も含む)散布の際に指示されている希釈方法や対象農作物への適用方法が守らない場合があるが、このことについて、法による罰則規定がない。農薬においては、取扱事業者の責任において末端使用者の教育訓練を行なうべきである。

2、第二項(指定化学物質等の製造における回収、再利用その他の指定化学物質等の使用の合理化に関する事項)についての意見
@登録失効農薬等の回収について
 現行農薬取締法では、登録失効した農薬製剤について、回収義務がなく、また、その使用も禁止されていないため、末端農家が保有しかつ使用する場合がある。
 登録失効した農薬については、その旨を末端使用者に周知徹底させ、農薬メーカー又は販売業者に回収・処理を義務づける農薬取締法の改定が不可欠である。
A農薬製剤のラベルには最終有効年月が記載されている。通常、この年月以内に使いきることが前提とされているが、実際問題としては、末端使用者のところには、使い切れずに残った最終有効年月を過ぎた農薬が保管されている。これら期限切れの農薬は、当初の成分通りであるとは限らず、保存中に有害な分解物が新に生成し農作物に対して薬害をあたえたり、有害な環境汚染源となるケースがある。たとえば、ダイオキシンやエチレンチオウレア、オキソ型の有機リンが保存中に生じる恐れがある。このような有効期限切れの農薬についても、法的に回収・処理を義務づける必要がある。
B農薬と同類の成分を含むシロアリ防除剤、家庭用殺虫剤、防疫用殺虫剤等についても同様の観点で対処されたい。
C農薬散布時に希釈した農薬が余った場合の処理方法を明確にすべきである。散布業者が一般下水道に投棄した例もあり、末端使用者や散布業者に注意を促す対策をとられたい。
D過去において、農水省の指示により、使用中止になった2,4,5−T、BHC・DDTほかの有機塩素系農薬が全国各地に土中埋設処理されている。この所在を明確にし、地域住民に知らせるとともに、今後、環境中への漏洩がないよう管理責任を明確にされたい。
ECCA(銅−クロム−砒素)系木材処理剤やシロアリ防除剤等で処理された建築廃材が投棄後に野焼きされたり、再利用されて環境汚染や人体被害をひきおこすことのないよう管理を強化すべきである。くわえて、建築廃材を有効に再利用するためにも、木材を有害物質で処理しないよう努めるべきである。

3、第三項(指定化学物質等の管理の方法及び使用の合理化並びに第一種指定化学物質の排出の状況に関する国民の理解の増進に関する事項)/第四項(指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報の活用に関する事項)についての意見
 住民が最も知りたいのは、どこで、どのような毒性をもつ、どのような物質がどの程度製造・使用・輸送・保管・廃棄されているかの情報です。
@指定物質の毒性についてのデータベースを作り、インターネットなどで公開する。
A指定物質を取扱事業者名のデータベースを作り、インターネットなどで公開した上、個々の事業所には、周辺住民がわかるように、その旨の表示をする(例えば、事業所の見易い場所に、看板をたてる。輸送時には、車輌に表示するなど)。また、取扱う指定物質やその数量については、地域住民が直ぐにその情報を入手できるよう、指定物質情報をデータベース化し、行政窓口やインターネットなどで公開する。
B火災や事故、災害の際、環境汚染や人体被害が拡大しないよう取扱事業者は、あらかじめ対策マニュアルを作成し、事業所周辺の住民に知らせるとともに、訓練も実施すべきである。このことは、指定物質の製造業者や使用業者だけでなく、倉庫業者や輸送業者についてもいえる。
C取扱業者は、火災や事故に際しては、環境中に放出された指定物質情報を公開するとともに、ダイオキシン類のような有害物質が発生していないかなどの環境調査も実施し報告すべきである。

付記−略−

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作成:2000-03-28