環境汚染にもどる
t11501#農水省がPOPs系埋設農薬の実態調査の実施指示−一方で、相変わらずの秘密主義#01-06

 当グループは、前号でお知らせしたように、農水省に対して、廃農薬に関する要望書を送っていましたが、6月5日、同省は生産局長名で、各地区の農政局長あてに、約30年前に土中埋設されて有機塩素系農薬の実態調査を実施するよう通知を出しました。私たちが要望していたことのひとつが、実現されることになったわけですが、この件についての、行政の動きはあまりに、遅すぎるものでした。通知によると、今回の調査の指示を出すに至った直接の動機は、国連主導のPOPs条約が5月に採択されたことにあるようです。PCBの場合も同じことですが、国際的な圧力=外圧がなければ、動かないという日本の行政の態度には、何をかいわんやです。

 でも、これだけで安心していられません。もう一つの行政の体質である秘密主義は生きています。通知には『具体的な埋設場所については、公にすることにより、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持及び的確な実態把握に支障を及ぼすおそれがあること等の理由から、原則として非開示とするのでその旨御了知ありたい。』との文言が見られます。善意に解釈すれば、埋設場所が判明しても、それを埋設した人の責任は問わないから、当時の事情を知る人は正直に情報を提供してくださいということの裏返しでしょうが、埋設場所があきらかになれば、現場の環境分析をし、立て札をたて、地域住民と相談して、汚染が拡大しないようにする必要があるわけで、すべてを、秘密裏にやるようなことは、公共の安全にとってかえってマイナスになります。
 行政が、埋設後30年も何もせず放置してきた責任はまさに環境犯罪ともいえるもので、それに輪をかけるような情報隠しで、POPs系農薬による環境汚染の危険性をあいまいにしようとするならば、そのような事なかれ主義に対して、私たちは決して追及の手を緩めないことでしょう。

【資料】「埋設農薬の実態調査について」
(13生産第1738号:平成13年6月5日)

 残留性有機塩素系農薬(BHC、DDT、アルドリン、ディルドリン及びエンドリン)については、昭和46年に販売の禁止又は制限を行ない、その使用防止等のため「有機塩素系殺虫剤の使用および使用不能農薬の処分について」(昭和46年2月27日付け46農政第934号農政、畜産、蚕糸園芸局長、林野庁長官通産省通知)及び「有機塩素系殺虫剤等の処分について」0昭和46年4月17日付け46農政第2055号農政局長通知)に基づき小規模な単位で地中埋設による処分を行なうよう指導を行なうとともに、昭和47年には「農薬安全処理対策事業実施要領」(昭和47年6月16日付け47農政第2956号農林水産事務次官依命通知)に基づき3t以上の大規模な埋設処理による管理の指導を行なったところである。
 その後約30年が経過したところであるが、上記種類の農薬を含む残留性有機汚染物質(POPs)について、国際的な使用規制や適切な管理・廃棄等を内容とする条約が平成13年5月22日に採択されたことから、今後、これらの物質を計画的かつ適切に処理していく必要がある。
 ついては、当該農薬の今後の計画的な処理に資するため、上記通知等に基づき埋設された残留性有機塩素系農薬の実態調査を行なうこととするので、別記様式により貴局内都府県における状況を取りまとめ、下記により報告方よろしくお願いする。
 また、都道府県からの報告については、都道府県毎に埋設箇所数、数量等を公表する予定であるが、具体的な埋設場所については、公にすることにより、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持及び的確な実態把握に支障を及ぼすおそれがあること等の理由から、原則として非開示とするのでその旨御了知ありたい。

                 記
1、提出期限 平成13年7月31日
2、提出先 農林水産省生産局生産資材課農薬対策室

《別記様式1》大規模埋設農薬の状況
 調査項目:埋設場所/埋設量(農薬種類別内訳)/埋設方法/現在状況/現在の管理者 /管理状況/土壌・水質調査/備考
 (記入上の注意)
 1:大規模埋設農薬とは、農薬安全処理対策事業実施要領及びそれに準じて埋設処理された残留性有機塩素系農薬をいう。
 2:埋設場所の欄は、市町村名の他、埋設した土地の地番、所有者名等を具体的に記入する。
 3:埋設量の欄は、埋設量が正確に把握できない場合にあっては推定数量を記入し、BHC、DDT、アルドリン、ディルドリン又はエンドリンのいずれに該当するか不明のものは、種類不明とする。なお、クロルデン又はヘプタクロールも埋設処理されていることが確認されている場合には、備考欄にそれらの埋設量を記載する。
 4:埋設方法の欄は、当時埋設された方法を具体的に記載する。
 5:現在の状況の欄は、現在の土地利用、土地所有の現況等を記載する。
 6:管理状況の欄は巡回点検の実施の有無等について記載する。掘り起こして処分されている場合には、処分年、処分方法等を記載する。
 7:土壌・水質調査が実施されている場合には、土壌・水質調査の欄に定期・不定期の別、最新調査年月日、調査結果の概要等を記載する。
 8:別途、埋設地点を記した地図(1/1000程度)を添付する。

《別記様式2》小規模埋設農薬の状況
 調査事項:埋設場所/埋設量(種類別内訳)/埋設方法/現在の状況/備考
 (記入上の注意)
 1:小規模埋設農薬とは、農薬安全処理対策事業実施要領及びそれに準じた方法以外で埋設処理された残留性有機塩素系農薬をいう。
 2:埋設場所が把握されており、最終処理技術確立後掘り起こして適切に処分していくことが可能なものを記録する。
 3:埋設場所の欄、4:埋設量の欄、5:埋設方法の欄、6:現在の状況の欄、7:別途の各注は様式1と同じ。
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作成:2001-06-23