農薬の毒性・健康被害にもどる
t11603#反農薬アドバイス12:虫よけ剤ディートはだいじょうぶ?#01-07
【質問】夏に、こどもたちが野外活動をする際に、カやブヨなどの被害を受けないために、よく、虫よけ剤(リペレント)が用いられますが、この薬に危険性はないのでしょうか。

【回答】虫よけ剤として、もっともよく使用されるのは、ディート(DEET)という成分で、皮膚に塗るクリームタイプとスプレータイプがあります。この薬剤は、農薬としては登録されてはいません。薬事法でいう医薬部外品として製品が販売されている場合が多いようです。また、網戸用にDEETを含む虫よけズプレー缶も売られています。

★ディートによる神経毒性、皮膚障害
浜松医科大学渡部さんのホームページにあるディートの記事が参考になります。
 ディートの健康被害として、HPにはけいれんや皮膚障害などの例が紹介されています。更に詳しく知りたい方は、HPをご覧ください。

★湾岸戦争症候群の原因説にからむディート−他の殺虫剤との相乗作用が心配
 ディートについては、てんとう虫情報52号でとりあげたことがありました。
 10年前にイラクで起こった湾岸戦争参戦した欧米の帰還兵の中に、記憶力減退、頭痛、疲労感、筋肉痛、呼吸器や消化器系の異常、振せん、皮疹などの体の異常を訴える人が数万人おり、湾岸戦争症候群として、その原因が追及されてきました。当時、兵士たちが使用していた薬剤に、殺虫剤ペルメトリン、神経ガス用解毒剤PBとともに、害虫忌避剤ディートがあり、この3種の相乗作用が、動物実験で検討されました。その際、ペルメトリンとディートによる脳や神経系への作用を増強するものとしてPBが問題になったのですが、ペルメトリン+ディート投与群においても、単独より毒性が強く現われるという気懸かりな知見も報告されました(記事t05205)。
 渡部さんは、ラットの経皮毒性試験で、脳の透過性に対するペルメトリンとディートの影響を調べた研究を紹介しています。
『ディートのみで脳幹の血液脳関門透過性を低下させる。ディートとペルメトリンを組み合わせて投与すると大脳皮質の血液脳関門の透過性を有意に低下させた。血液精巣関門の透過性はディートのみ、及びペルメトリンの同時投与によって低下する。同じ動物で、一連の行動試験を行ったところ、感覚運動成績が投与量と時間に依存して低下した。連日のディートのみあるいはペルメトリンとの同時投与は脳透過性の低下を招き、行動を障害する。』
 ピレスロイド系ペルメトリンは、家庭用殺虫剤として、使用されることも多く、両者の併用による毒作用の増強は注意を払わねばならい問題でしょう。
 渡部さんも『ディートは他の農薬などと同時に使用すると、単独の化学物質が起こすより、重度の神経障害を招くことが知られている。ディートを使用する場合、他の薬物に被ばくしない注意が必要である。』と警告しています。

★ディートを使用する場合の注意
 ディートは、人によっては、皮膚障害を起こすこともあり、特に粘膜や傷口への塗布は避けるべきです。
 スプレータイプの虫よけ剤は、吸入の恐れもあるから更に注意を要します。顔や首筋には、一度手にスプレーしてから塗ってくださいと、注意書きのある場合もあります。
 少なくとも、使用する場合はこれらの注意をよく守ることが必要です。

   渡部さんのHPには、アメリカの疾病防止センター(CDC)による注意として、以下ののようなことが記載されています。
    ・ 露出した皮膚あるいは衣類にのみ少な目に使う。 
    ・ 高濃度の製品を皮膚に、特に子供の皮膚に使うのを避ける。 
    ・ 吸入したり、飲み込んだりするな。眼に入れるな。 
    ・ 長袖シャツと長ズボンを可能な場合着用し、ディート被ばくを避けるために、
    衣類にディートを使いなさい。 
    ・ 子供の手に使うな。子供はディートのついた手で、眼や口に触れると思われる。 
    ・ 傷や炎症のある皮膚に使うな。 
    ・ 忌避剤を控えめに使いなさい。一回の使用は4-8時間の効果がある。
    たくさんかけても効果は増加しない。 
    ・ 室内に入ったら忌避剤を洗い落としなさい。 
    ・ 忌避剤により障害が起こったと思われる場合、忌避剤を使用した皮膚を洗い、
    医者に連絡しなさい。 

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作成:2001-08-23