環境汚染にもどる
t12702#木材防腐剤クレオソートに高濃度の発癌物質が−東京都の調査で判明#02-04
 てんとう虫情報記事t11304で、木材防腐剤クレオソート油の禁止を求める記事を掲載しましたが、その後、反農薬東京グループは、安全性に疑いのある商品を都民の申し出によって都消費生活部が調査する制度(東京都消費生活条例第8条)を利用して、市販のクレオソート油の成分と環境ホルモンの疑いのあるPAH(多環式芳香族炭化水素)類の含有量を明かにし、加えてガーデニング用枕木の分析も求めていました。
 その調査結果が、東京都生活文化局消費生活部安全表示課から報告されましたので(同局発行の「くらしの安全情報」Vol.42 p-34に掲載)、要点を以下に記るします。

★発癌物質を10%以上含むクレオソート
 東京都は、自前で製品の分析をしてくれるのかと思いましたら、メーカーに成分分析の結果の提出を求めて、それをまとめたようです。文献調査も実施し、当グループの情報源の文献を何度か尋ねてきました。
 表には、4つのメーカーから得たクレオソート原体の分析結果を示しました。明かにされた成分は、クレオソートに含まれる成分のすべてではなく、労働安全衛生法やPRTR法に記載のある化学物質に限られたもので、全体の70%以上については正体不明なままです。
 同じ会社でも製品の組成にバラツキがあるのでしょうか、含有率に幅があります。
各成分について、発がんのランクの判明しているもは、右端欄にその旨記るしました。
 フェナントレン、ナフタレン、ビフェニル、インデンが1又は10%のオーダーで、他は、0.1%(=1000ppm)のオーダーで含有されており、おなじみのベンゼンが最大で2000ppm、ベンゾ(a)ピレンが最大で4000ppm検出されています。個々の製品の数値はわかりませんが、発がん物質を10%以上含む製品は、ざらにありそうです。
 クレオソートに含有されているPAH(多環式芳香族炭化水素)の中には、環境ホルモンの疑いのある物質も多々ありますが、都は現段階では、判断できないとしています。

表 クレオソート原体メーカー別 分析結果 (単位:%) −省略−

★規制の進むヨーロッパ諸国
 欧州連合EUでは、欧州委員会が、01年10月26日にクレオソートに関する指針をだし、各国は2002年末までに、国内法を整備しなけれならないことになりました。
 都の報告書には、EUにおけるクレオソートの使用方法に関する規制の内容を次のようにまとめています。

(1)一般消費者がクレオソートによる木材処理を実施すること、クレオソート処理木材を一般消費者向けに販売することは禁止する。
(2)工業用あるいは業務用による木材処理は許可される。ただし、クレオソートの純度及び用途は以下の通りである。
 クレオソートの純度は、ベンツ(a)ピレン残留濃度50ppm(0.005%)または、水溶性フェノール3%以下でなければならない。
 販売は1梱包20L以下で、工業用あるいは業務用以外の一般消費者に販売してはいけない。
 処理木材の用途は、鉄道、電柱及び電信柱、塀、農業余支柱、港湾及び水路に限る。
(3)工業用途の使用禁止場所及び用途
 ・建築物内部、・おもちゃ、・遊園地(遊び場)
 ・公園、庭園、野外リクリエーション施設、レジャー施設で皮膚接触するリスクがあるもの
 ・アウトドア用テーブルのような庭用調度の製造
 ・栽培目的の容器、人や動物が食する製品(中間品、未加工品を含む)と接触の可能性がある容器、
 上記の製品を汚染する可能性があるその他の物には、製造、使用、及び再処理でクレオソートを使用してはいけない。

 以上のような措置は、クレオソート油やその含有成分について、多くの研究や報告で、眼・皮膚の刺激性、さらには発がん性や変異原性が明かになっていることを重くみた結果なされたものです。ヨーロッパでの、一般消費者に対するクレオソート剤及び処理木材の販売禁止、また、工業用のベンゾ(a)ピレン50ppm以下というのは、日本に比べて、非常に厳しい規制といえます。

★ラベル表示で、メーカーの勝手な言い分
 東京都は、市販のクレオソート油剤の表示を調べて、その一例を示しています。
塗布タイプの木材防腐用クレオソート油製品のラベルには、
「本製品はクレオソート油独特の臭気がありますので、人によっては頭痛を起こしたり、気分が悪くなる場合があります。また、次の症状を起こす人は使用しないでください。アレルギー症、カブレ等起こしやすい人、過去に塗料等により気分が悪くなったり、カブレた人、体調の悪い人」とか、
使用上の注意として
「居住中の屋内、家の基礎等に塗布すると、クレオソート臭が室内にこもり、気分が悪くなったり、頭痛を起こしたりする場合があり、また臭気が長時間なくなりませんので、屋内およびその周辺の使用は避けてください」とか
「ご使用の際には、臭気に対して、居住者のみならず、周辺の居住者に対しても充分にご配慮ください。」とあり、
表示の最後は「ラベルに記載した使用方法や注意事項を守らないで生じた事故についての責任を負うことはできません。」と締めくくられています。
 東京都は「市販のクレオソート油については危険性に関する表示、使用方法がかなり詳細にされている」とその内容をある程度評価していますが、発癌物質のベンゼンやベンゾ(a)ピレンなどが含有されていることはどこにもでておらず、メーカーの表示では、決して充分とはいえません。
 当グループに、関西で化学物質過敏症対策住居を目指している建築業者の方から、「床下などにクレオソート油が撒かれてしまったり、木部にかけるつもりが、ベタ基礎(基礎全体をコンクリートでつなぐ基礎工事)のコンクリもかかって滲みこんでしまう。このため、臭くて何とかならないかといわれますが・・・・・」との手紙がきました。いったん、クレオソートが使用されると、処理し難いことがうかがえます。いくら、上記のような注意書きがあっても、業者の方で、注文者に断りなく使ってしまうこともあるようです。

★クレオソート処理枕木のガーデニング転用は危険
 室内でのクレオソートの使用だけでなく、ガーデニングブームの現在、その資材として古枕木のリサイクルが人気になっています。東京都は、枕木については、鉄道会社や枕木製造会社への聞き取り調査を実施しただけで、分析までは行ないませんでした。
 古枕木使用を廃材の有効利用だとばかりに、喜んではいられません。防腐効果があるということは、処理された薬剤が残留していることでしょうし、新品の枕木が造園業者や個人に販売されてもいます。身辺近くで、クレオソート臭気が漂うような状況は、特に化学物質過敏症の人にとって、苦痛をあたえます。CCA処理(銅・クロム・ヒ素を浸み込ませた)処理木材も廃棄に問題がありましたが、枕木を廃棄焼却する場合には、クレオソートやPAH類の環境汚染の懸念があるので注意を要します。
 上述のように、ヨーロッパでは、プランターなど栽培目的の容器にクレオソート処理材は使えないことになっています。枕木をガーデニング材として、身の回りで使用することは止めるべきです。

★クレオソートの使用規制を求めよう
 東京都は、今回の調査結果を踏まえ、「使用実態からみて、多くの都民がその使用によって危害を被るリスクについては少ないものと考えられるが、発がん性のある物質を含むことから、次の対策を講じる」として
@都民に対して、クレオソート油についての情報を提供する
A業界に対し、消費者の安全確保のため、ベンゾ(a)ピレンなど発癌性の高い成分を減少させるよう、製法を改良することを要望する。
の、 二点をあげています。
 都民のリスクについていえば、杉並ゴミ中継所(プラスチックゴミを圧縮減容する中間施設)周辺で、住民が体の異常を訴えているいわゆる杉並病の一因として、都は近くの公園の樹木添え木に塗られたクレオソートを挙げたことを忘れたのでしょうか。
 クレオソートを加圧注入された木材は、公園の階段などに使われ、1年以上たっても、そばを通るだけで、臭気がする場合もあります。都の管理する公園や施設で今後、クレオソートを使用しないこと、また現在、処理木材を使用している個所は撤去し、廃材はむやみに焼却せずに無害処理の技術が確立するまで隔離保管するなど、適切な対応策をとるべきです。  Aについていえば、都は単に発がん性成分の減量を申し入れるだけで、クレオソート油やそれを含むガーデニング材の製造販売・使用規制は求めていません。
 都には、もう一歩踏み込んで、日本農林規格や日本工業規格のクレオソート使用規程の改定、クレオソートについてヨーロッパ並みの規制を実施するよう、国の機関に働きかけてもらいたいと思います。

 今後、この東京都の調査報告をもとに、国や自治体に生活環境でのクレオソートの使用規制の強化を求めていきましょう。また、同系の混合組成物であるコールタールやアスファルトなどについても、クレオソートと同じ視点で、使用規制していく必要があります。

【東京都への要望事項】
@クレオソート剤の製造販売使用について、ヨーロッパ並の規制を実施するよう国に求めてください。

A屋内外を問わず、東京都が管理する施設で、今後、クレオソート剤の使用をやめてください。

B現在、東京都が管理する施設で、クレオソート処理した木材を使用している個所を調べ、特に臭気がひどく、子どもたちが接触する危険の多いところから、順次、処理木材を撤去した上、廃木材が適切に処理できるまで、厳重に保管してください。

Cガーデング資材としてクレオソート処理古枕木がつかわれているので、その販売を禁止してください。

Dクレオソートと同系のコールタールやアスファルトの身の回りでの使用規制も実施してください。

E上記措置を都下の自治体が実施するよう、指導してください。

【厚生労働省への要望事項】
@クレオソート剤の製造販売使用について、ヨーロッパ並の規制をしてください。

A木材防腐処理に関する日本工業規格、日本農林規格でクレオソート使用規定を改定してください。

Bクレオソート処理した木材を使用している個所で、特に臭気がひどく、子どもたちが 接触する危険の多いところから、順次、処理木材を撤去した上、廃木材が適切に処理★できるまで、厳重に保管するよう行政指導してください。

Cガーデング資材としてクレオソート処理古枕木がつかわれているので、その販売を禁止してください。

Dクレオソートと同系のコールタールやアスファルトの身の回りでの使用規制も実施してください。


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作成:2002-10-25