近年のわが国における冬虫夏草の研究は、検体入手の道がついた20年ほど前から始められたが、やがて中国から中枢神経への作用(鎮静作用)、免疫作用、抗ガン作用、心血管への作用(動脈硬化など)、呼吸器系への作用(喘息・咳嗽など)、糖尿病の改善などエネルギー代謝の調整作用、精力強壮作用など、万能とさえ言える効能が伝えられて以来、多くの研究者や研究機関によって抗ガン作用を初め、虚弱症・貧血症・インポテンツなどへの有効性、血圧調整作用、気管支拡張作用など画期的な研究成果が次々に報告されてきた。
その過程で“薬効随一”の評価を得てきたのがチベット高原で採取される天然産品で、これはバッカク菌がコウモリガ(蝙蝠蛾)の幼虫に寄生したもの(学名:Cordyceps sinensis)で、この種を特定して「冬虫夏草」と呼ぶこともある。
しかし、どの種類であっても天然品は希少資源で十分に需要をまかなうことができないために人口栽培も試みられ、北京医科大学や日本では吉井菌学研究所などで成功している。
一方、天然品のように子実体を育てるのではなく、人口の栽培で菌糸体(茸でいえば地下部分)を培養して純粋な有効成分を得ようとする菌糸体培養の試みが浙江省の杭州保霊健康食品公司で成功し、定評ある青海産種の菌株を用いた高品位の製品が供給され始めている。浙江省中医研究所などの成分分析によれば、天然品の特有成分であるコルジセピン、ウラシル、ウリジン、アミノプリン、エルゴステリンなどの含有量は全く遜色がないという。同様の菌糸体培養は日本でもハナサナギタケを用いて成功し、医学的に貴重なデータが集められている。 |