■生活習慣病  高脂血症と肥満

Next

 
高脂血症とは

血液中の総コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が基準値より高く、HDLコレステロールが 低い病態のことで、最も重大な問題となるのが動脈硬化症を引き起こす可能性が大きいことです。最近では、糖尿病・高脂血症・高 血圧が話題にされますが、これらの 症状がインスリン抵抗性を基礎とし ていることに注目しなくてはなりま せん。 肥満することによって「高脂血症」
を合併しやすいという事実は、その 他の疾患を隠れ持っているという危 険性を物語っているのです。 あまり肥満と思っていない場合で も、健康診断によって隠れた疾患を 発見することもよくあることですか ら、年に一度は、健康診断を行って自分の健康状態を把握しておきましょう。


@コレステロールとは?

 コレステロールは、細胞膜を作る材料になります。ステロイドホルモンの原料でもあります。また、胆汁酸の原料にもなります。

Aトリグリセライドとは?

 エネルギー源として消費される脂質で、余った分は、体内に脂肪として蓄積され、肥満の原因の一つとなります。
 更年期になると、女性の卵巣では女性ホルモンがあまり作られなくなるため、その原料となるコレステロールが血中に増えることがわかります。更年期に過食も重なって、内臓
脂肪型肥満の要因の一つとして考えられるのも当然といえるでしょう。 内臓脂肪型肥満では、このコレステロールがトリグリセライドとともに増えることが多いのですが、それ
によって動脈硬化を起こしやすいという恐ろしさがあることを知っておいてください。
 そこで、どの程度の数値になると治療が必要になるかを知っておかなくてはなりません。
 高脂血症として治療を始めなくてはならない目安となる値のことで、それは左の表の通りです。
 この基準は、ほかに糖尿病や肥満などでの危険因子がない場合であることに注意しましょう。 HDL(善玉) コレステロールの値が低ければ低いほど異常と診断され、他の3つは値が高ければ高いほど治療が必要とされます。高脂血症の中でも、トリグリセライドの借が高い場合を高トリグリセライド血症といい、総コレステロール値やLDLコレステロール値が高い場合を高コレステロール血症といいます。
 この数値に達している場合はもちろんですが、まだ達していないにしても近づきつつある方は、病院での治療を余儀なくされる前に、肥満を改善してみようではありませんか?
 内臓脂肪が原因の高コレステロール二面トリグリセライド血症なら、肥満の治療だけで解決する見込みが十分あるからです。

高脂血症治療開始基準

治療関連基準値

血清脂質

220〜240mg以上 総コレステロール
150mg/dl以上 トリグリセライド
40mg/dl以上 HDLコレステロール
150mg/dl以上 LDLコレステロール


 表の中に出てきた「血清脂質」と「脂質」との違いから説明しましょう。
 脂質は、腸管で吸収されたり、肝臓で合成されたりします。 その後、脂質は血液によって末梢組織へ運ばれますが、この時、血液の中に存在する脂質のことを「血清
脂質」といいます。つまり、血中の脂質のことをさしているのです。
 また、脂質は水に溶けないため、血中ではタンパクと結合して存在しています。この脂質とタンパクの複合体を、特に「リポタンパク」と呼んでいます。この 「リポタンパク」
は、カイロミクロン・LDL・VLDLなどに分類されます。 このうちで、特に動脈硬化に関係
の深いのは、LDLです。このLDLがコレステロールと結びつき、LDLコレステロールとなって血管壁に沈着しテ動脈硬化を起こすのです。 その理由としては、次の三つがあ
げられます。
@ 内臓脂肪から分泌された「遊離脂肪酸(FFA)」 (エネルギーとして利用されますが、これ自体は糖の利用を阻害する)が直接門脈へ入り、肝臓へ流入するためです。
 内臓脂肪型肥満では、皮下脂肪型肥満に比べて脂肪分解能が高いのです。つまり、このFFAが著しく増加して肝臓に流れ、そこでの「リポタンパク」合成が勢いを増している
と考えられます。なお、この合成については、食事で20%、肝臓で80%とされています。
A リポタンパクの一つであるVLDLの産生が増加するため、肝臓ではコレステロールの合成が必要になるためです。
B インスリンの抵抗性が生じることから、末梢ではLPL(血中中性脂肪取り込み酵素) の作用が不足するためです。 結果的にVLDL「り甘タンパク」の代謝も阻害され、血液中の中性脂肪が上昇するのです。 先に述べたインスリンの抵抗性が起こることで、末梢のLPLの作用も低下しますが、それによってVLDLの代謝が阻害されます。それが、HDLの産生を減少させるわけです。 脂質の代謝に異常をきたしている肥満の合併症には、繰り返すように食事療法・運動療法による減量が最適の改善法だといえます。
 体脂肪が減れば、脂肪細胞から放出される脂肪酸が減り、結果的に材料となるリポタンパクも減少するからです。 行動療法・薬物療法を取り入れれば、無理な食事制限やハードな運動の必要性はなくなるので、上手に取り入れていくのがよいでしょう。


Home