和の美術めぐり 2011-2013

(2008-2010 は こちら)

(2005-2007 は こちら)

2013年度の展覧会のベスト3

@竹内栖鳳展

A古径と土牛展

B井戸茶碗展

   
131223 古径と土牛展
山種美術館

    

 

左が古径《牛》 右が土牛《聖牛》

 展覧会の最終日にやっと行きました。

 小林古径と奥村土牛は兄弟弟子です。先生である梶田半古が亡くなった後、土牛は古径を心から尊敬して多くを学びました。

古径は人格者であり、それは作品を見ても頷けます。

清らかで上品、実直、真摯な気持ちが、絵から伝わってきます。写実+αが感じられるのです。

土牛は古径からいろいろ学び、同じ題材で二人が描いているものが何組か展示されていました。

左の古径《牛》と土牛《聖牛》もその一つです。線の重要性を説いた古径、繊細な線で牛に気品さえ感じられます。土牛は、線を重視しつつも牛の気持ちも想像できます。

古径の《猫》の猫はすっと背筋を伸ばし、一点を見据え、人格ならぬ猫格を感じます。古径自身のような気もしました。

何かと忙しい年末にとても良い展覧会を見ることができました。

 
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131205 日本・東洋・美の遺産展
箱根・岡田美術館

 

 

今年10月にオープンした新しい美術館です。

入口には巨大な風神雷神の画《風・刻》が・・。現代の画家・福井江太郎氏が5年かけて描かれたとのこと。←

5階もある立派な美術館です。東洋・日本の陶磁器、絵画、仏教と分野も時代も幅広く網羅したびっくりするほど素晴らしいものが勢ぞろいです。

すべて見終ってかなり足が疲れました。

しかしそこは箱根、良いことに美術館入り口前に足湯があるのです。

巨大な風神雷神を鑑賞しながら足湯につかりました。足湯は初体験です。初めは熱い!と感じた足湯も入れているうちに慣れてとても気持ちよく疲れが取れました。

 
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131114 興福寺仏頭展
芸大美術館

  

  

 「白鳳の微笑み」に会いに、京都展を見た後 寄りました。

この《釈迦如来》は平安時代山田寺から移送されて興福寺東金堂の本尊となりましたが、その後火災に遭って胴体が失われ頭部も行方不明になっていましたが1937年に発見されるという数奇な運命を辿りました。

左耳が欠け、後頭部はぽっかり穴が空いています。しかしお顔はすっきりと鼻筋が通る貴公子、やや微笑んでいらっしゃるような表情です。

あと、国宝の《板彫十二神将》像←は見事です。

厚さ3cmの板に彫った11世紀の作品です。顔は恐ろしいもののちょっとユーモラスで指の先・つま先まで気迫を感じる像です。

《木造十二神将》・・これは13世紀の作品で等身大のもの。

頭の上に十二支が乗っています。私の干支が乗っているのは「安底羅大将」←です。思わず絵葉書を買ってしまいました。

 
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131114 京都展
東博平成館

 

 「京都でも見ることができない京都」 とのふれこみで、国宝・重文の洛中洛外図屏風7点と障壁画が見事な設えで展示されています。

展示替えがあり、後期の今日は国宝の《上杉本》はパネルだけでした。

6曲1双の岩佐又兵衛の《洛中洛外図舟木本》は町の賑わいが活き活きと伝わってくる細密画。入口に大きなスクリーンで拡大された映像があり、人々の表情や、動作がはっきりと分かり、楽しめました。2700人ほどの人物が描かれているとのことです。江戸時代の庶民はなにかみんな楽しそう・・。

次は龍安寺の障壁画。ここでまたフルハイビジョンの龍安寺の四季の画像を鳥の声、雨の音、風の音とともに楽しみました。

龍安寺の今の障壁画は模写で、オリジナルは今回アメリカから里帰りしていました。《琴棋書画》の画です。

次は二条城の黒書院の設えです。徳川慶喜が大政奉還を大名たちに伝えたという黒書院の間。狩野尚信の二の間の《楼閣山水図》・《桜花雉図》、一の間の《松鷹図》、もちろんオリジナル作品。さすが見事です!

龍安寺同様、二条城に行っても今は模写絵の襖がかかっているので、今回オリジナルが観賞でき、「京都でも見ることができない京都」展を堪能しました。

徳川時代の庶民、と天下人の住いの内側を想像できる展覧会でした。

 
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131102 光悦 (桃山の古典) 展
五島美術館

 

 

 光悦は、桃山時代から江戸初期にかけて活躍した町衆の芸術家。陶芸・書・蒔絵・工芸・出版など幅広く活動しました。

 軸装された書状←がナント40点近くもあります。結構筆まめだったようです。礼状であったり、茶会の招待状であったり、弟子への指導書、茶碗の土を送ってほしい旨依頼書などです。

 俵屋宗達の鹿下絵に古今和歌集からの和歌を散らし書きした断簡←は、流麗で 余白など考えて墨の濃淡・太細をバランスよく書かれています。書状の文字とはまったく違う流麗さです。 

 色紙や短冊の下絵に書かれた和歌は、絵と文字が競合してしまって、読みにくく、お互いに美しさを相殺してしまっているよう感じました。

 茶碗は黒・赤・白の楽茶碗が20点近くも出ていました。光悦独特の高台が低く、見込が平ら、立ち上がりがカチッとしたもの、または碁笥底のようなものが並んでいます。釉薬の掛け方も、かせた部分を残し、それを景色としたもの(例:雨雲)、また口造りは厚いものや波打っているものなど茶趣溢れるものばかりです。

蒔絵では国宝の《舟橋蒔絵硯箱》←が、やはりユニークな形で、和歌の散らし書きも優美です。

光悦はアイディアが豊富で、デザイン力もあり、自由な発想が出来た芸術家だと思います。

 
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131102 井戸茶碗展
根津美術館

    

戦国武将が憧れた井戸茶碗はいつごろ作られたか、

誰が運んできたかという基本的なことが分かっていないそうです。

謎が魅力。

国宝《喜左衛門》を含む大・小の井戸茶碗70点もが展示されるという画期的な展覧会。

井戸茶碗がこんなに沢山日本にあるとは思いませんでした。

井戸茶碗の特徴といえば、轆轤目・竹節高台・高い高台・枇杷色・あらあらしい梅花皮・茶溜りの深さ。

大井戸は大きいものは420gもあります。古いものなので、ヒビ・金継ぎ・茶浸みがあるものが多く、痛々しく感じられるものもあります。

国宝《喜左衛門》はそんな中、ヒビ・金継ぎ等は少ないです。本多家にも伝来したので《本多井戸》とも別名があります。

小井戸茶碗は《忘れ水》など、子供茶碗くらいのものもあります。小さいながらちゃんと井戸の特徴を持っています。

私がその井戸茶碗でお茶を頂いてみたいなと思ったものは、@妙喜庵大井戸A平野屋大井戸B細川大井戸C有楽大井戸D幾秋大井戸E千種大井戸F忘れ水小井戸

大きさも手にすっぽり入るくらいで、痛々しいヒビも少なく、金継ぎも少ない茶碗です。

 
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131027 東大寺展
金沢文庫

  

天平時代に建てられた東大寺大仏殿は平安時代、平重衡の兵火によって焼失しました。

鎌倉時代に入ってその再建に当っての功労者、重源上人と、弁暁上人に焦点を当てた展覧会。

金沢文庫の隣にある称名寺から再建当時の資料がでてきて、源頼朝も各地に勧進の依頼をしている手紙などもあり、奈良と鎌倉での交流もあったのがわかったのです。

《重源上人坐像》は国宝。近年運慶の作品と分かったそうです。老人ながら顔の表情、とくに目に意志の強さを表していると感じました。

称名寺からの史料は難しいでしたが、ボランティアの方の説明を聞きつつまわりました。

主人の希望で金沢文庫まで足を伸ばしましたが、、車窓からの景色を楽しみながら小旅行の気分が味わえました。

駅前の「地球食堂」で頂いた《あじ定食・天ぷら付》が美味しかったです。

 
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131022 横山大観展
横浜美術館

←山口晃の天心・大観・芋銭の肖像画

東の大観、西の栖鳳・・今回は大観を中心に良き師・良き友の展覧会です。

良き師は岡倉天心、良き友は小川芋銭・小杉放菴・富田渓仙・今村師紫紅です。

大観も美術学校中の作品は細密で丁寧な色彩も美しい日本画。その後悪評であった朦朧体となり、水墨画、形態のデフォルメ・・等画風を変遷していきます。

印象に残ったのは茶道をしているためか、屏風《千与四郎》(←)。利休が庭を掃除した後、樹をゆすって落ち葉を散らした逸話を絵にしたもの。実はこの画の左隻は再見です。右隻が今回見られて全体像が観賞できてよかったです。

小川芋銭はユーモアがあって面白い画を描きます。

冨田渓仙という画家は知りませんでしたが、水害で川を渡る村人・それと機を織っている女性と粉を挽いている男の画の一対の軸が素敵でした。

今村紫紅は《沙漁》・・ハゼがバランス良い構造で7匹泳いでいる画が印象的でした。

 

 
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131009 竹内栖鳳展
東京国立近代美術館

      

      

東の大観、西の栖鳳・・と並べられる日本画の巨匠の展覧会。

展示作品約100点、それに写生帖などの資料が50点ほどの大変見ごたえのあるものでした。

円山派や四条派、狩野派など多くの画派から学びいろいろな筆法で描かれている作品が多く「鵺派」等と揶揄されることもあったとか。

パリ万博視察のためパリに行った折、西洋絵画に触れ、実物をよく観察することの重要性を実感。しかし日本画の写意(空気感など)は尊重し続けましたので単なる西洋かぶれではありません。そこが栖鳳の偉いところ。

動物・・・犬・猫・猿・キツネ・狸・ライオン・トラ・象・熊それにアヒルや鳥類など実に多くの動物がリアルの描かれています。

写生帖には蝶々、鳥、などの細密画が。天才です!栖鳳は…。

風景画も得意で、墨画、淡色画などすばらしく、湿った空気感や、乾いた空気感、冷たい空気など感じられるものです。

人物画は比較的少ないですが、人体の構造に忠実に、下絵などで練習されて書かれており、実物をよく観察するという栖鳳のポリシーが貫かれています。

平日の午前中にもかかわらず大変混んでいました。展示期間がもうすぐ終わるからでしょうが、栖鳳フアンは多いようです。

もちろん私もその一人!

 
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131003 禅宗の美展
五島美術館

禅宗僧侶の墨蹟や水墨画など禅宗関連の優品展。

まず一番目に展示されているのが清巖宗渭の《万里一條鐵》・・・鉄道のイメージに重ね五島慶太が好んだ墨蹟。「一」の字がすばらしい!

一休宗純の《梅画賛》と《偈頌》←

古渓宗陳《落慶偈》、虚堂智愚《二首偈》・・・など茶道ではお馴染みの禅僧の書を楽しみました。

書かれている内容はともかく、禅僧のありがたいお軸という気持ちで観賞してきました。茶室で掛けられていたら、深々と一礼して拝見するものですから。

 

 
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130816 速水御舟展
山種美術館
        

院展再興100年を記念して速水御舟に焦点を当てた展覧会。

ここの美術館は速水御舟の作品を多く所蔵しています。重美の《炎舞》は初めて見ました。炎にすいこまれるように蝶が何匹も舞っています。炎の表現が素晴らしいです。

あと《昆虫2題》は蜘蛛の画と蝶の画が対になっているものです。その蜘蛛の糸の表現に目を見張りました。銀色に光っている細い細い蜘蛛の巣の糸…(←)が実にリアルなのです。

下村寒山の《朧月》、菱田春草の朦朧体の画、安田靭彦の《平泉の義経》、片岡球子の《鳥文斎栄之》なども私のお気に入りです。

明治以降、洋画が入ってきて、今までの日本画にその影響で少しずつ変化が出てきた近代日本画。テーマは自然、花鳥風月ですが描き方など、深化してきた時代なのではと思います。

連日の猛暑で、お盆のこの週 ずっと家にいたストレス解消にもなった心穏やかになった展覧会でした。

 
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130703 コレクション展
石川県立美術館

 

石川県は伝統工芸の盛んなところです。

常設展で、まず国宝の仁清作《色絵雉香炉》が雌雄揃って展示されています。大きな香炉で、色も綺麗で姿がリアルな素晴らしいものでした。

古九谷の平鉢(お皿のよう)がいくつも並んでいました。緑、青、茶、紫、黄の色彩が特徴の九谷です。《色絵鶴かるた文平鉢》←もみごと。

徳田八十吉の斬新な、綺麗なブルーの九谷の大鉢←もありました。

茶道具では、大樋焼初代の飴釉赤楽茶碗、光悦写茶碗の他、永楽和全の菓子鉢など。他には日本絵画、加賀友禅など・・・・

金沢は前田家の土地柄からして、兼六公園も素敵な庭園ですし、美術館の展示品も格調高く品の良いものが多かったです。金沢の町がとても好きになりました。

 
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130703 平成の寄贈作品展
金沢市立中村記念美術館
 

 石川県立美術館の裏口を出て、《美術の小径》を下って行ったところに美術館があります。この《美術の小径》、急坂で横に用水路の水が滝のように流れている素敵な小径。

 酒造業をしていて、表千家茶道をされていた方が蒐集した茶道具などが多くある美術館です。

 竹の釣瓶水指が珍しく、目を引きました。大樋茶碗、大棗など素敵な茶道具を堪能しました。

 
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130607 京都画壇と神坂雪佳展
日本橋高島屋

 

 

 

 京都画壇と云えば竹内栖鳳や上村松園ですが、琳派の継承者として神坂雪佳がいます。

西洋の油絵が入ってきて、生活様式も西洋化してきつつある明治の時代、日本画も今までの大和絵から画題・技法・デザイン性も変化してきています。

画題では日本のものと西洋的なものが混在している画が表れます。例えば振り袖姿でピアノを弾く女性(中村大三郎)とか、着物の女性が洋犬と散歩している姿(菊地桂月)や日本髪なのに洋服を着ている女性(伊藤小坡)・・など

雪佳も初めは《四季草花図》《杜若図》などの琳派風の絵を描いていましたが,じょじょに写実からデフォルメされたデザインの絵に変って行きます。《狗児》←《金魚》←

清水六兵衛とのコラボの茶碗もありました。

 
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130517 もののあわれ展
サントリー美術館

 「もののあわれ」・・・人生の機微や、四季の移ろいなどにふれたときに感じる しみじみとした情感をいうと云います。

「もののあわれ」という言葉を基軸に和歌の有りうべき姿を論じた、国学者 本居宣長の自画自賛の軸がトップに展示されていました。

 古来日本人は和歌・文学でもののあわれを表現してきました。

《花鳥風月》《雪月花》をテーマとした大和絵の絵巻・屏風・漆芸作品が展示されています。

まさに「日本の美」!美しく繊細な花鳥風月画を堪能しました。

特に印象に残ったのは「源氏物語》54帖のエッセンスすべてを描いた六曲一双屏風。

 
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130502 柚木沙弥郎「いのちの旗じるし」展
世田谷美術館

 90歳を迎えた染色工芸家 ”ゆのきさみろうの作品展。

 柳宗悦の民藝運動に触発され、芹沢_介のもとで独自の染織工芸作品を作ってきました。

 幾何学模様が多く、色彩もシンプルです。厚手木綿のものや絹のものもありますが、やはり木綿のほうが色彩も渋くなって私は良いよう感じました。

 壁掛け(タピストリー)としても現代的に感じるものです。

先日観に行った「龍村の展覧会」でもタピストリーをみましたが、龍村は絢爛豪華、柚木はシンプルモダンといったようにまったく違います。

 
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130502 暮らしと美術と高島屋展

世田谷美術館

 1831年に創業した京都高島屋。美術館が少ない明治初期から内外の物産、美術品を紹介してきました。

 万国博覧会に出したビロード友禅作品の下絵(←)は雪月花をそれぞれ表現した3人の画家の絵。大きい画です。

 岡田三郎助・栖鳳・中川一政・棟方志功などそうそうたる画家の画が展示されています。島崎藤村の次男である島崎鶏二の《竹林》もよかったです。

 あと民藝の河井寛治郎、富本健吉の陶器作品も・・・・とくにその中で印象に残ったのは、寛治郎の《涙茶碗》。底に水が張ってあるような感じで、高台にかけて涙のしずくがぐるりと垂れているのです。

 《獅子図屏風》は、大きい作品でなんと刺繍絵。毛並の一本一本が刺繍で表されていて、身体の部位による毛の感じが実にリアル…鋭い目も生き生きしていて素晴らしく、今回の展覧会の中で最高品と思いました。

 
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130501 龍村平蔵「時」を織る展
日本橋高島屋

 テーブル掛けや古帛紗でおなじみの「龍村」が創業120年記念としての展覧会。

 初代平蔵は、海外から持ち込まれたジャカード機を採用、そして今までの織りの技術とともに図案の良さも大事と考え、図案家を育成し、高い水準の図案が次々と生み出されました。


 正倉院や天平の古代裂も復元、劇場の緞帳、山鉾にかけられる懸装品など手がけ、染織分野の最高峰の織物です。

 まるで刺繍をしたかのように見えるもの、一幅の画かと思われるほどのもの等、色ざしも華やかで絢爛豪華。

 茶道では帛紗・古帛紗・仕覆などでいろいろな文様の裂地が使われています。

文様も限りなく沢山あり、見本?として額装されていました。

 
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130406 とら虎トラ展
西宮市市立大谷美術館

 

春の嵐が近づいているというので、神戸を朝早く出て、夙川の花見をした帰りにこの美術館に行きました。

甲子園がある地元ならではのタイトルの展覧会です。阪神タイガースの歴史をまず見て、次の部屋からは虎の画だらけです。

第1室に入ると、いきなり正面に長沢蘆雪の虎図襖←と龍図襖がドーンと並んでいて壮観。蘆雪のこの虎は以前にも見ましたが、ネコを怖そうに描いたかわいいものです。

応挙の《水飲み虎図》←は最近発見されたものとのことでした。この題ではいろいろな絵師が描いています。また虎と仲良しの豊干の《四睡図》も。

初期の絵師は実際に虎を見たことがないので、耳が小さかったりちょっとユーモラスですが明治時代になって、実際に見ることができるようになって描かれた虎は凄味が出てきます。←

 
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130404 東寺の美術
東寺
 

 京博の帰り桜見物も兼ね、東寺に寄りました。五重塔に満開の桜・・まさにNippon。

 宝物館では「東寺と弘法大師信仰」展をしていました。国宝《兜跋毘沙門天立像》←は唐時代のもので、2m弱の高さで、細かい装飾彫りが施された、きりっとしたお顔の毘沙門天です。

 観智院ではガイドの方が中を案内してくれます。宮本武蔵が床の間と襖に鷹と竹林を描いていました。 巨大な《愛染明王像》や《5大虚空蔵菩薩》を見て、弘法大師が遣唐使として船に乗って行き、苦労して帰国する様子を石で表している石庭もあります。

 講堂には、立体曼荼羅といって大日如来を中心にすべてのホトケサマが20体並んでいて壮観でした。平安時代の像で、多くが国宝。

曼荼羅図は今までにいくつか見たことがありますが、本物のホトケサマで曼荼羅となっているのはここだけです。

桜も満開、素晴らしいホトケサマたちも拝観でき、とても嬉しいでした。

 
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130404狩野山楽・山雪 展
京都国立博物館

 雪汀水禽図屏風(山雪)

 老梅図襖絵(山雪)

龍虎図(山楽)

 神戸滞在中、京都まで足を伸ばし見てきました。

 狩野派本流《江戸狩野》に対抗しての京都の狩野派《京狩野》の展覧会です。

 初代山楽は永徳の画風を忠実に受け継いだ屏風絵が多いですが、二代山雪は探幽率いる江戸狩野とは距離を置き、大変斬新なユニークな画になっています。

 《老梅図襖絵》←に代表されるように梅の枝はくねくねとまるで生き物のように恐ろしい姿です。岩もデフォルメされていて異様です。

 ポスターの《雪汀水禽図屏風》も、左隻←は奇妙な岩や、生き物のような松にいろいろな種類の鳥が羽を休めている図。右隻は波が繊細に描かれていて、空には鳥が雁行して飛び立っていく風景です。

 奇妙な絵ばかりではありません。金地の襖に竹垣と草花が描かれている華やかで清楚ないかにも京狩野らしいものもあります。

 狩野派というと江戸狩野の方が探幽などで有名ですが、今回 山楽・山雪を見て、特に山雪のユニークさに興味を持ちました。これだけの作品を一堂に集められるとは、やはり地元京都ならではだと思いました。

素晴らしい展覧会でした!

 
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130405 小磯良平作品選T
神戸市立小磯記念美術館

 神戸滞在中、北野異人館・王子公園を観光した後、六甲ライナーに乗ってこの美術館に着きました。

 小磯良平は昔、T薬品会社のカレンダーで何年間か見ていて、お馴染みとなり好きな作家の一人になりました。

ちょうどアトリエの説明会があり、その部屋には小磯良平の絵の中に描かれている時計や、机・花瓶・布・籐椅子などが置かれていました。このアトリエで若かりし八千草薫さんを描かれたということで絵葉書←を買いました。

花や、静物画、風景画もありますが、やはり人物画が好きです。親しみやすい気品ある女性像がおおく、《踊り子》←はドガの影響を受けています。

 今回は石川達三の新聞小説「人間の壁」の挿絵が30枚ほど出ていました。574回の長編連載小説で、社会的な各場面が鋭い線で描かれていました。

 
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130330 かわいい江戸絵画
府中市美術館

昨今は、美しいものも、洒落たものも、素敵なものも何でも「かわいい」と一言で表現する若者が多いですが、この「かわいい」という言葉は心の表現です。

あどけない子供をいとおしく感じる心、ユーモラスなものに惹かれる心、小さきものに対する思い…など。

応挙の《仔犬》、蘆雪の《虎》、国芳の《猫》、仙高フユーモラスな禅画、是真の細密な表装描きのある《雛図》、子供たちが遊んでいる屏風絵・など、心和む画がたくさん展示されていました。

やはり、子供・動物は思わず「かわいい」と言いたくなります。映画でも子供や動物を題材にしたものは人の心を揺り動かされますね。

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130324 琳派から日本画へ 和歌の心絵の心
山種美術館

 琳派の造形に影響を与えた料紙装飾、と華麗な平安古筆がまず展示されています。

素敵な紙に流麗な仮名文字…少々読めなくても雅なアート。宗達の絵に光琳が歌を書いた短冊画と書画は、お互いが主張し合っている感じです。

後陽成天皇の書には桜の文字の代わりに桜の花が、時鳥の文字の代わりに時鳥の画が描かれてちょっと面白いです。

酒井抱一、菱田春草、下村観山等の繊細な草木画、最後には加山又造の千羽鶴の屏風。繊細な日本画を楽しみました。

和歌や古典文学、装飾性が絵画化して日本画になった経緯が少し分かった気がしました。

 
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130301 書聖王羲之展
東京国立博物館平成館

 国立西洋美術館初日の《ラファエロ展》を見た後、主人が「平成館も明日までだから 行こう」と、展覧会のハシゴをして観てきました。

 何年か前に《書の至宝展》でいろいろ観ているし、書の展覧会は地味なので行くつもりはなかったのですが、主人に促されるように行きましたが、 明日が終了日なので、大変混んでいてびっくりしました。

なにしろ王羲之の書と云っても実物は存在しなく後人が精巧に複製したものばかりです。

今回は書かれている書の現代訳があるものもあってよかったです。内容がわかるとさらに楽しめます。

蘭亭図巻の万暦本←が曲水の宴の絵とともに、宴に参加した人の漢詩もあって楽しめました。

 
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130202 Domani明日展
国立新美術館

 文化庁より海外研修派遣された12名の作家の発表の場である展覧会。さすがに発想力・表力現・才能が光る作品群です。現代アートと言うと、「何 これ?」というような、分かりにくい自己満足的で、どぎついものもあるというイメージですが、今回のものはとても綺麗な 分かりやすい作品ばかりで、気持ち良く鑑賞できました。

 青野千穂《垂》←シリーズは一見座布団風のやわらかな感じですが、実はセラミック製で物が垂れる感じを表現しています。

 曽根裕《ハイウェイジャンクション》は大理石で立体的に彫った力作ジオラマ。

 小尾修《昨日の雨》はスーパーリアリズム、まるで写真のような女性。

 そして一番びっくりするのは池田学の作品たち。とにかく細かく、発想力抜群でいろいろなものが描きこまれています。ブリューゲルの《バベルの塔》的な絵。←作家の署名「学」の文字が画の中のどこかに描かれているというのでそれも探しながら見ました。

 とにかく美術界の明日を担う若いアーチストの素晴らしい作品を楽しみました。

 
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130203 2枚の西周像展
神奈川県立近代美術館葉山

  親戚が協力したとのことで、この展覧会の切符を頂きました。ちょっと堅苦しいタイトルですが、副題として”高橋由一から松本竣介まで”と付いていたので主人と行ってきました。

 ちょうどギャラリートークがあり、1時間余りの丁寧な説明を伺いながらの鑑賞です。

 高橋由一の《西周にしあまね》の肖像画2枚についての検証です。一つは前からあったものですが、最近もう一枚が出てきて かなり傷んでいたのを修復されたとのことです。

 この2枚重ねてみるとほぼ大きさ形が一致します。この絵、島根の津和野藩主(この方も何と留学して模写←をしています)が高橋画伯に依頼して描かせたもの。 

 西周は当時の思想家。なぜ2枚同じ絵が描かれたのか。2枚の違いは・・等、修復・比較・検証に2年費やされた研究の発表的な展覧会。

 同時に 明治から大正、昭和の名だたる画家の作品170点も同時に展示され、こちらも見ごたえのあるものばかり。

 最後の部屋には、3・11で海水をかぶり、泥だらけになった石巻文化センター蔵の油彩画、を葉山の当美術館修復士(女性)のかたがきれいに修復した作品13点も展示されていました。これは感動ものです。

 予想していた以上はるかに素晴らしい展覧会でした。

 
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130119 飛騨の円空展
東京国立博物館
  

今日から始まった《エル・グレコ展》を見た帰り、この展覧会にも足を伸ばしました。

飛騨の千光寺所蔵の仏さまを中心に100体展示されていました。

展覧会に入ると高さ3mもの仏さまが並び、こんなに大きいものもあることに驚きました。

菩薩様、如来様、弁天様、不動明王様、千手観音様、薬師如来様、地蔵様…オール出演です。どのお顔も穏やかで優しく笑みをたたえています。人々が触った跡がピカピカに光っている仏さまもあります。

鉈の後もあらあらしいものや、衣文のひだも丁寧に彫られているものなど、いろいろです。

各地を巡ってその土地その土地の木で彫り、、惜しげもなく人々に与えていたそうです。

ノミ跡は荒々しいけれど、表情は穏やかで笑みを浮かべた素朴な仏様、お顔を見ているだけで願いや悩みが無くなりそうな気がします 。 《そんなことで悩まなくていいんだよ》と 教えて下さるような、明るい気持ちにさせてくれる仏様ですね。

 

 
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130103 美術にぶるっ
東京国立近代美術館

日本近代美術の100年を記念してのベストコレクション展。

初日派の主人は 去年すでに行っているので、私一人で新年の美術鑑賞を楽しみました。

第一室では狩野芳崖からスタート、今回のハイライトの重美の作品が並んでいます。私はこの美術館によく行っていたので再見ものが多いです。

横山大観《生々流転》はやはり圧巻。教科書に出てくるような作品がぞろぞろ展示されています。

戦争画では藤田嗣治《アッツ島玉砕》《サイパン島同胞臣節を全うす》は本当に悲惨です。

速水御舟・鏑木清方・上村松園・小倉遊亀・加山又造などの日本画はホッと和みます。

安田靭彦《黄瀬川陣》←は、去年TVでやっていた「平清盛」に出てきた場面、頼朝の陣に義経がはせ参じ初めてのご対面となったところの画です。

第二部《実験の現場》は、さらっと通りました。

 
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2012年度の展覧会のベスト3

@山下清展

A白隠展

B奈良美智展

   
121228 山下清展
日本橋三越ギャラリー

    絵葉書

 

絵葉書

生誕90周年の展覧会。

10代の頃は昆虫に興味を持ってトンボ・クモ・カミキリなど細かく鉛筆で写生したものがありました。  観察眼はすばらしいです。

記憶力・観察力は人並み以上に特に優れた人でしたが、ちょっとちぐはぐなところがあるため、施設に入っていました。 そこで 施設医であった精神科医の式場隆三郎の勧めで《貼り絵》を始めたようです。

初期のころは貼り紙もそんなに細かくはありませんでしたが、だんだん才能を伸ばしていき、信じられないような細かさになっていきます。 手で5mm以下に小さくちぎっては、下絵の上に貼りつけていく気の遠くなるような作業です。

窓枠や、垣根などは紙をこよりにしてシャープな線にしています。

中でも秀逸は「長岡の花火」(←)

外国にも行って、イギリスのタワーブリッジ、サンマルコ広場やエッフル塔、スイスの田舎(←)など描いています。点描画のスーラやシニャックも顔負け? たぶん脱帽の《貼り絵》です。

マジック画も細かい描写。「東海道五十三次」をこれで描いていますが、これも細かく正確に丁寧に描かれています。

「日本のゴッホ」「天才放浪画家」とよくいわれますが、まさに天才です。

山下の現物画を見たのは今回が初めてでしたが、やはり実際に見ると本当に感動します。

 
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121223 白隠展
Bunkamuraザ・ミュージアム

江戸時代中期の禅僧白隠の書画展。

臨済宗を民衆に教化するために画で教えを説き、膨大な禅画が各地に残っています。

画題は《釈迦》《達磨》《観音》の他に《七福神》など。必ず添え文があり、字は読むのも 意味を知るのもちょっと難解。

《達磨》の画、は白隠が若い時から晩年まで何枚も描いていますが、齢とともに変わっていきます。厳しい顔つきから穏やかな顔つきに・・・。

《観音菩薩》は優しい、リラックスした表情で親しみが持てますが、添え文には”衆生を救う観音が骨休めをしていて如何なものか”と白隠は観音様に喝をいれています。

戯画の章では、社会風刺的な画がいろいろとあって、ユーモアや皮肉の中に ”こういうことは如何なものか” と暗に諭す白隠からのメッセージが込められています。

最後には《隻手》といって右手だけ大きく描かれた画があります。有名な”隻手の音声”の公案です。

一行物の書もありましたが、余白なしに文字を力強く目いっぱいに書いたものが多かったです。いかにもそこに白隠さんが鎮座されていると感じるような迫力が…。

禅画は読み解くのが難しい反面、面白いです。それにしても白隠さんよくもいろいろと描いたものですね!アイディア・創造力が抜群の禅僧です。

現代にもこういうお坊さんが出てきてもおかしくないのに、出てきませんね・・。

 
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121129 秋荘案詩
齋田記念館

 環七通り 若林あたりを車で通るたびに、白塗りの格調高い塀に囲まれた深い緑のある御屋敷はどういう建物なのかと思っていました。 これが齋田記念館です。

 下北沢から代田あたりは昔 茶畑が広がっていて、武州茶を製茶していたのが齋田家でした。

 左下の画は←御用壺にお茶を詰めている様子が描かれています。これは巻物の一部分で、茶の木を育てて、茶摘み、蒸したり乾燥させたりする製茶の工程が絵巻物になっていました。

今回 主人が谷文晁が模写した佐竹本三十六歌仙に興味を持ち、私も同行しました。

 佐竹本の断簡何枚かは前に出光美術館で見ました。今回は模写ですから巻物です。

その他にも竹内栖鳳の《冬ごもり》、これは丸ギッチョと点炭がぽつんと描かれています。

川端龍子《美果好菜》は赤蕪やくわい苺、仏手柑が丁寧に描かれた小品。

山口逢春《秋晴れ》や下村為山《柿》など秋の風景の絵が多かったです。

展覧会の題の《秋荘案詩》は堅山南風の作。秋の風景の中、庵で詩をひねっている男の人が描かれています。

ちょっととっつきにくい展覧会の名称です。主人に誘われなければ私は絶対行かなかったと思います。

絵も良かったですが、茶の製法絵巻が見られたことと、あのあたりが昔茶畑であったことを知り、その中心的な製茶業をしてきた齋田家についても知ることが出来ました。

 
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121107 小村雪岱展
ニューオータニ美術館

 大正・昭和のグラフィックデザイナーの小村雪岱(こむらせったい)の展覧会。

主に本の装幀や、芝居の舞台背景、広告を手がけた方です。

 泉鏡花の本の装幀が多く、表紙も、見返しも見える展示になっていて、そこには物語の挿絵のように、とても細かく丁寧に、その物語を想像させるような絵が描かれています。

 新聞小説の挿絵を描かれていて、その下絵も展示されていました。

 昔の本は文庫本位の小さいサイズで、字も小さいながら、ハードカバーで挿絵や装幀が贅沢だったのだなーと感心しました。

 小村雪岱の美人画は、私の好きな鈴木春信の幼い感じのすらっとした美人画に似ていますが、顔はやや細面で、目はやや上がり気味・・・印象に残るものでした。

 
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121030 竹内栖鳳展
山種美術館

班猫

 《東の大観・西の栖鳳》と並び称された 京都画壇を牽引した竹内栖鳳の展覧会です。

竹内栖鳳といえば《斑猫》を思い出します。今回その猫に再び会いたくなって出かけました。

 やはり素晴らしかったです。今回はモデルとなった猫の写真も展示されていました。普通のネコなのに有名になったものです。

 他にも動物の画が何枚かあります。いぬ、あひる、とら、にわとり、うさぎ等。風景画や、女性像、花鳥風月の絵もありますが、やはり動物画が私は好きです。

 栖鳳が育てた画家たち、上村松園・西村五雲・伊藤小坡・村上華岳等の画もありました。

 写生を中心に描かれる円山派の日本画は、気楽に楽しめ、心穏やかな気持ちにさせてくれます。

 

 
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121010 川村清雄展

江戸東京博物館

《建国》 《天璋院像》

徳川の幕臣、御庭番の家系であった川村清雄は、維新後の明治4年徳川家の援助でアメリカ、イタリア、フランスに留学をしました。

帰国後は、黒田清輝が幅を利かせていた日本美術界から敬遠され、まさに孤高の画家といえますが、徳川家達や勝海舟の庇護を得て、日本人独特の油絵を追求していきます。

肖像画を多く描いていて、←《天璋院象》《福沢諭吉像》の肖像画は有名です。《勝海舟像》を見ると、数年前の大河ドラマ《龍馬伝》で演じた武田鉄矢よりはるかにハンサムです。

コローに感化され、風景画も描きますが、《滝》《波》などダイナミックで音を感じるほどです。

最後のほうは日本的な花鳥風月の絵になっていきます。

オルセー美術館蔵の《建国》はニワトリと三種の神器が描かれていて、日本的油絵の川村の記念的碑的作品といわれています。

 
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120920 平家物語画帖展
根津美術館

今年のNHK大河ドラマは「平清盛」。1月に江戸博で「平清盛展」を見に行きましたが、今回は江戸時代に作られた「平家物語画帖」の展覧会。

高さ なんとたった17cmほどの画帖、折りたたんでコンパクトなものです。平家一門の栄枯盛衰の軍記物語が上中下三帖に詞書とともに扇面に細密画が描かれています。

詞書のかな文字は流麗で定家流のような見事な字。約10cmほどの扇面には色彩も豊かに細かな絵物語が繰り広げられています。

平家物語は登場人物が多いのでややこしいですが、その中のトピックともいえる事件・出来事が絵で表されていて勉強になりました。

黒楽で「俊寛」という茶碗があります。俊寛が喜界島に流され一緒に流された他の二人は帰されたのに俊寛だけは取り残され、足摺りしている場面があり、印象的でした。

平家一門の栄枯盛衰ドラマは今に至っても人気?があるのですね。

 
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120902 バーナード・リーチ展
高島屋日本橋店

バーナード・リーチはイギリス人ですが、「和の美術」の範ちゅうに入れても良いと思い、ここで載せます。

バーナード・リーチというと、柳宗悦の民藝運動を連想します。生活の中に芸術を見出す「用の美」を求めた運動。

コーヒーカップを例にすると、見た目も素敵で、しかも口触りがよく、ぬくもりのある手触りもあるという使い勝手の良い用の美。

土をたっぷり使った温かみのある陶器、シンプルにデフォルメされたな素朴な絵柄、落ちついた色調、しかし釉薬や技法はいろいろ考えられています。美術学校で絵画を学んだ下地があるので絵柄も素晴らしいです。

日本を愛し、日本に愛されたバーナード・リーチ。お皿や、コーヒーカップ、花瓶、水差し、壺陶板など沢山あり、呉須や染付の香合も何点か展示されており、思わず《欲しいな!》と心の中でつぶやきました。

なかなかの展覧会でした。

 
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120817 二条城展
江戸東京博物館

徳川家康が築城し、後水尾天皇行幸時に三代将軍家光が拡張した絢爛豪華な二条城。

その室内を飾った狩野探幽はじめ優秀な画家によって色どられた襖、障壁画が展示されています。金色を背景に雄々しい松が枝を左右に延ばしています。そこには鋭い目つきの鷹が…。”その目は徳川幕府の栄光と終焉を見ていた”とチラシに書かれていました。

格天井の画も華やか、板戸にも花駕篭の繊細な画が…。襖の引手金具、長押の釘隠し金具の細工も見事。

後水尾天皇に嫁いだ江の娘和子(まさこ)東福院の坐像、洛中洛外図、二条行幸図・・・そして最後のほうに徳川慶喜の肖像画とともに大政奉還の時の《大政奉還上意書》がありました。 

二条城には2回ほど行ったことがありますが、鴬張りの床だけが印象的で、襖絵等は遠くで暗くあまりよく見えなかったせいかその価値を知らないままでしたが、今回近くでゆっくりと見るとさすがにすごい!と感じました。

 
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120721 奈良美智展
横浜美術館

山少女」カフェのPlace Mat

 一度見たら忘れられない強いインパクトのある女の子の絵。

かわいくない、ちょっと不気味な、生意気な憎たらしい女の子。扁平な顔、目と目の間が広く黒目はネコのような縦長だったり、ステンドガラス風だったり。

女の子の内面のいろいろな感情をあらわしているのでしょう。可愛いだけでない残虐性や懐疑性、不純性・・・・など。

ちゃんとした大きな作品の他に 段ボールやわら半紙、茶封筒に無造作に描かれた絵などたくさん展示されています。

 大きな女の子の顔だけの彫刻もいくつかありました。これは大きいだけがインパクトで、表情は紙に書かれたものより迫力がありません。

絵を見て《○○の作品だ》と観客に分からせる独自性も芸術家の資質・・・。有名になったわけが分かります。

 
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120706 日本美術デザイン大辞展
三井記念美術館

 展覧会の名称は分かりにくいですが、工芸や、絵画、書などの日本美術におけるいろいろな専門用語を、実物を見ながら理解するもの。

このような企画は初めてなので、ちょっと興味が湧き、勉強する気持ちで出かけました。

辞書らしく50音順で展示されています。まず「あ」の赤絵から「い」の色絵…というように。

 截金、すやり霞、誰が袖、手鑑、魚々子、二十四孝、吹抜屋台、瓔珞、留守文・・・等勉強になりました。字の説明だけでなく実物があるというのは分かりやすいです。

 展示されていたもので一番感銘を受けたものは牙彫の果物。柿、ナス、ミカン、仏手柑が本物そっくりに色彩されたもの。大正時代の安藤緑山という方の作品です。

 
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120624 吉川麗華展
東京近代美術館
 

”Who is Kikkawa?" ・・・・・というようにその名前をはじめて聞いた画家でした。

鏑木清方と同じ時代の画家です。「線を探求した画家」という副題がついています。画風は"こてこての大和絵"。

髪の毛ほどの細い線で 気品ある人物がそれはそれは細かく描かれています。

色彩の付いたものもありますが、大部分は淡彩や白描画。

背景も何も描かれていないものが多く、折角の繊細な画も残念ながら地味。背景に美麗な仮名で和歌が書きこまれているものもあり、仮名書きもすごく上手。

博識であったようで中国の逸話を画題にしたものも多いです。

展示作品が結構多く、同じような画が続き、終りのほうではちょっと飽きてしまいました。

 
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120603 唐物と室町時代の美術

畠山記念館

唐物とは宋・元・明時代ひっくるめて中国から将来された美術品の総称で、茶道をしているものには馴染みあるもの。

今回の目玉は南宋時代の伝趙昌の「林檎花図」・・国宝です。写実的な花が落ち着いた色彩で描かれています。

茶道具では肩衝茶入「星」、釉薬が火膨れしてぼつぼつしているのを星とみて銘がつけられたそうです。七夕が近いことを意識しての展示?でしょう。初見でした。ちなみに来月は唐物茶入「蛍」が展示されるそうです。

砂張の舟形釣り花入れも大ぶりで見事。唐物は伝来がそうそうたる人々でそれを知るのも興味深いです。

墨絵では雪村周継の「琴高仙人図」…同行した主人から”鯉の滝登り”の源になった話という説明をしてもらいました。「そんなことも知らなかったの?」と云われつつもいろいろ教えてもらえ助かります。

展示品の数も少なめで、ひとつひとつしっかり頭に刻み込むことができる展覧会でした。館内の照明をもう少し明るくしてもらいたいなとも思いました。

 
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120511 五浦と岡倉天心の遺産展
高島屋日本橋店

東日本大震災で波にさらわれた五浦六角堂が再建された記念の展覧会です。

天心は東京で日本美術院を創設、洋画の画風を取り入れた日本画を推進…しかしぼやけた「朦朧体」と評判が悪く、北茨城市の五浦に日本美術院の拠点を移したのです。

大観、観山、春草、武山らが五浦の天心の家の近くにそれぞれ家を建て、制作活動に励みました。これら4人の画が展示されています。私は木村武山という画家をはじめて知りましたが、《小春》という屏風は植物の表現は繊細で、全体の色彩が今までの日本画と一味違っていて印象に残りました。

天心の《The Book of Tea》の原本も初めて見ました。

天心の書簡も展示されていましたが、右下がりの個性的な字でした。

2013年は天心生誕150年没後100年記念ということで《天心》という映画が上映されるそうです。

 
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120505 KORIN展
 根津美術館

 

 

”光琳ふたつの金屏風 東京・ニュヨーク100年ぶりの再会” の展覧会。

根津美術館所蔵の国宝《燕子花図屏風》は金地に鮮やかな紺色と緑で描かれています。右隻は結構花が浮いたような感じで密集していますが、左隻は地に生えているような安定感があり、結構余白があります。色の塗り方はべたっとした感じですが。離れて見ると良い感じです。

一方メトロポリタン美術館の方の《八橋図屏風》は燕子花だけでなく八橋が右隻から左隻につながってかかっています。八橋が掛っていることでこれは”現実の風景”という感じがします。橋はきりっとシャープな線で描かれていて優雅な燕子花と対照的。

折しも美術館の庭園には、燕子花が今を盛りと鮮やかに咲いていました←。

連休中で、久しぶりの晴れた日でしたので大変混雑していました。

光琳の信奉者、江戸琳派の酒井抱一が、光琳の画を模写した「光琳百図」という本があることをはじめて知りました。メトロポリタン美術館の《八橋図屏風》も墨でちゃんと模写しています。

 
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120415 三都画家くらべ展
府中市立美術館

江戸時代後期の江戸・京都・大坂三都の絵画を比べる展覧会。

京都は歴史ある街、大阪は商人の活気ある街、江戸は新しい街…というように三都それぞれ個性が違います。それらの地で育まれた文化もまた違うのではというコンセプトで三都の絵画を比較しています。

私にはそんなに違いは分かりませんでしたが、専門家の眼には違いがあるようです。

例えば、京都は典雅な、大阪は簡潔な、江戸はおさえたさっぱりとした画風のようです。

京都の画家や江戸の画家は名の知れた人が多いでしたが、大坂の画家は初めて聞く名前の人が多かったです。有名ではないけれど絵の素晴らしく上手な画家は山ほどいるのですね。

一番印象に残った画は←長沢蘆雪の「なめくじ図」でした。

 
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120329 地上の天空・北京故宮博物院展
東京富士美術館

 

 

 この展覧会は、清朝の后妃にスポットを当てた華やかな展覧会。

 后妃様が坐る畳1畳分ほどもある大きなデコラティブの御坐が入口にどーんとあります。

 皇后の礼服は明黄色の地に雲龍模様が刺繍でびっしり縫いこまれていてちょっと重たそう。

普段着も蝶や吉祥字が刺繍された豪華なもの。髪飾りや、ネックレス、冠も玉や真珠・翡翠・七宝などで装飾され、きらびやかです。今、はやりの肌をきれいにするローラー←もありました。

 《女孝経図》←は、妃たるべき女性の守るべき作法、物腰、礼儀、賢さ等を絵巻物にしたもので興味深かったです。

自分のことは後回しにして主人、姑、舅につかえること、朝早く起き、徳を積み勤勉で礼儀正しく誠実に生きる…など今では耳に痛いことも多いです。

 《后妃たちの四季折々の余暇の図》は宮廷女性の最新のファッション、髪型と当時の室内の家具や陶磁器などが細かく丁寧に描かれています。一番驚いたのは《晩秋持表対菊の》画中の掛け軸です。黒地に金字で200字ほどの素晴らしい漢字が書かれていました。

西太后は清朝において絶対的な地位を確立した人ですが、毒殺事件や、わが子を無理やり皇帝にしたり、贅の限りを尽くした派手な生活をしたり悪名高い人です。爪を長く伸ばし、爪カバーをしている肖像画がありました。

宮廷内の権力争いなどいろいろあった清朝ですが、皇妃の優雅なきらびやかな生活を垣間見ることができました。

 
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120320 東博本館
東京国立博物館

下記の展覧会のついでに本館にも寄りました。国宝室には狩野長信の《花下遊楽図》屏風。

桜の時期なので、サクラの意匠のものがあちらこちらに展示されていました。特に浮世絵はすべて桜づくし。それに小袖・打ちかけも桜づくし。華やかです。

茶の美術室の所には仁阿弥道八の《黒楽鶴亀文茶碗》←。外側には鶴が、見込には亀が描かれています。濃茶を飲み終わったお客たちは亀の画がでてきてさぞ感激することでしょう。遊び心のある粋な茶碗と思いました。

ちょうど黒田清輝「作品に見る憩いの状景展」もしていたので、有名な《河畔》←ほか 黒田の作品をまとめてみることができました。

《さくらスタンプラリー》にも参加して、今日から開放されている庭園にも出て鮮やかな紅梅を楽しみました。

 
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120320 ボストン美術館

日本美術の至宝展

東京国立博物館・平成館

明治時代 近代化を急ぐあまりに日本の美術・仏像などがないがしろにされた時、フエノロサやビゲローらによって莫大な量収集された美術品がボストン美術館にあり、今回はその里帰り展覧会。初日に行きました。

目玉は絵巻物2巻。《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻》  特に《吉備大臣入唐絵巻》はストーリが単純でおかしみもあり、マンガ的で楽しめました。

あと、長谷川等伯の《龍虎図》、曾我蕭白の《雲龍図》←の二龍が豪快でありながらちょっと気弱そうで憎めない龍で圧巻。

《普賢延命菩薩》←の前では 主人と手を合わせ拝みました。病気を消して延命させてくださるというありがたい菩薩様、もともとこういう仏画は観賞するより拝む対象だったのですから・・・・。

仏像・仏画・水墨画・狩野派の画・屏風等々保存状態の良いものを沢山堪能しました。

 
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120224 東洋陶磁の美

サントリー美術館
          

大阪東洋陶磁美術館からの名品が展示されています。

陶磁器は”china”と言われるだけあって中国のものは名品揃い。

緑釉の緑は濃く美しいし、唐三彩も不思議な色の取り合わせだが個性的。青磁は緑がかった青。飛青磁の花入れ←これは国宝。白磁になるとこれもまたアイボリーの色で美しい。白地にはっきりと青で模様のある青花も好きです。あとは五彩のような華やかな模様のもの。

そして今回私が一番気に入ったのは、黒釉の部類に入る油滴天目←、やや小ぶりでつやがあり、なんと金で覆輪がついています。説明によれば豊臣秀次が所持していた物だそうで、国宝です。木の葉天目にも再見。

高麗青磁は中国のものとは色合いが少し違って、灰色を帯びた青になり、渋く落ち着いた感です。

粉青の壺は日本でいう三島で、灰色です。韓国の青花は青の線が細く弱々しく、しかも白濁しています。奥ゆかしいというか ぼけているというか・・・。 まあ わびさびの感覚とも言えます。

今回の展示品はどれも「真新しいものなのでは」と思われるほど、保存状態がよく、まさに悠久の美術品揃いでした。

 
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120205 近代日本画名品展
三越ギャラリー
     

吉野石膏株式会社が蒐集した近代巨匠の名画展。

大観、松園、清方、青邨、御舟、遊亀、深水、球子、それに五山と呼ばれた東山、杉山、高山、加山、平山の各画伯という そうそうたる画家の力作が見られました。

どの絵も素晴らしく、吉野石膏のセンスの良さが分かります。吉野石膏はあまり作品を貸し出さないとのことで、初めて見るものばかりで貴重な展覧会でした。

とても気に入ったのは東山魁夷の「白暮」「宵桜」←。それに加山又造の「白鷺」・・・これにはびっくりします。若冲のような細密さに。

心和む、いい展覧会でした。

 
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120131 松井冬子展
横浜美術館

 松井冬子はそのおどろおどろしい画風で若いながらも早くから頭角を現している画家です。

鉛筆で描かれた下図も何枚も入れて膨らませての、大きな公立美術館での個展。その不気味さがどんなものか好奇心もあって見に行きました。

《世界中の子と友達になれる》というサブタイトルが付いています。しかし、どの絵を見ても到底このサブタイトルの意味を理解できません。

絵の題名も長く、しかも絵との関連が分かりにくく、キャプションに冬子の講釈が書かれているのですが、これまた超難解。

写真の絵←も藤の花の下を下着姿で裸足で歩いている女性、右にはゆりかごがあるので若い母親?藤の花の下の方には蜂が気持ち悪いほどびっしりと張り付いています。女性の手足は血が滲んで・・蜂に刺されたのかな?・・います。

描写力・想像力は素晴らしいのに画の題材が素人には理解しがたいものばかり。ダリを彷彿とさせます。真の芸術家なのかも・・

最後に《生まれる》という題でトンボがヤゴから生まれる色紙絵があり、万人にも分かる絵でしめられ、ほっとして会場を出ました。

 
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120122 平清盛展
東京江戸博物館

 

今年のNHK大河ドラマ「平清盛」に因んだ展覧会。

国宝が何点も出ている。 まず←《平家納経》が4点…見返し画があって、きれいな揃った文字で写経されています。上下の余白には雲や、植物等の模様がある、素晴らしい料紙です。そして、これら33巻の巻物を入れていた経箱も、金や銀の雲や龍、宝珠の模様を施された見事な重箱。

また国宝《平清盛・頼盛合筆、紺地金字法華経》は清盛の自筆が見られ良かったです。NHKドラマではハチャメチャな清盛もきれいな字で写経しています。頼盛はちなみに腹違いの弟。

奈良絵本の「平家物語」「西行物語」がありましたが、細かい絵できれい。お坊さんとしてのイメージが強かった西行はこの頃はれっきとした北面の武士。西行の消息文や歌切れもあります。

平氏は名前に皆「盛」という字が付くので、誰が誰やら分かりにくく帰ってから平氏の系図をみました。

しかし、その頃の人間関係は複雑で保元・平治の乱などは誰と誰が戦ったのかすごく分かりにくいです。

帰ってからドラマ「平清盛」第3回をTVで観ましたが、人間関係をフォローするのに大変です。

 
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120102 北京故宮博物院200選展

「清明上河図」の世界

東博平成館

この展覧会の目玉は何と言っても「清明上河図」。中国でも公開されることはめったにないほどの超一級文物。「神品」といわれています。

初日の2日は待ち時間が多く長蛇の列だったのであきらめ他のものを見て、4日に出直しして約1時間行列してようやく見られました。

縦24cm長さ5m程(思ったより縦が短い)の絵巻に北宋時代の都市に住む人々の生活を克明に生き生きと描かれています。家の中の人物、お店で買い物をしている人、橋を渡っている大勢の人、旅人、食堂、酒宴をしているところなど…。人物は2cmくらいなのですが丁寧に衣装や顔が描かれていて、びっくりします。700人くらいいるそうです。

作者の《張択端》なる人物、よほど目が良い方だったのでしょう。天才画家です。まさに「神品」。

清の乾隆帝←は偉い人でした。たった2%の満州国が漢やチベット民族をまとめたのですから。宗教や衣装等それぞれの民族のものを敬い、広い心で接したため500年にもわたる清朝時代を築いたのです。  肖像画が何枚かありましたが、とても穏やか出柔らかなお顔です。

展示品も多文化の清朝の世界観を味わうことができました。

 
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111231 隠元禅師と黄檗文化の魅力
日本橋高島屋

黄檗宗大本山萬福寺は臨済宗の隠元禅師が1661年に創建し、今年はその創建350年記念の年だそうです。

隠元といえば隠元豆ですが、そのほかにもスイカ、レンコン、タケノコ、ところてん、煎茶、また原稿用紙、明朝体等を日本にもたらした方です。

チラシ←は《韋駄天》さま。走るのが速い方です。羅漢様も沢山登場していました。中国情緒あふれる萬福寺の寺宝をいろいろ拝見しました。

そして隠元は能書家で、軸も沢山書かれています。

 
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120105 上田宗箇

武将茶人の世界展

銀座松屋

広島に本拠がある上田宗箇流茶道の展覧会。

上田宗箇は秀吉の側近として活躍した武将。茶道は古田織部に師事し、織部の「へうげ」と利休の「わび」を融合させて独自の「ウツクシキ」という世界をつくりました。

宗箇のすごいところは自分で、茶碗・茶入を作陶したり、竹で花入・茶杓をつくってしまうことです。茶碗「さても」←は光悦風の筒型のもので、ヘギメも力強くプロ並みの出来栄えです。

広島、和風堂の《鎖の間》で当代家元がお点前をされているビデオが放映されていました。お辞儀の仕方も武士らしく、帛紗捌きや、茶巾のたたみ方、柄杓の扱いも独特で、剛柔取り混ぜたようなお点前で興味深かったです。

 
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2011年度の展覧会のベスト3

@狩野一信 五百羅漢展

Aホキ美術館開館記念特別展

B歴代沈壽官展

   
111020 春日の風景
根津美術館

春日宮曼荼羅

根津美術館で企画された《初めての茶会》に参加したので、この展覧会も見られました。

春日・・といえば阿倍仲麻呂の「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山にいでし月かも」を思い出しますが、春日大社の風景という企画です。

春日宮曼荼羅がなんと20点ほども展示されていました。

 曼荼羅というと 仏さまが沢山描かれている密教のものを想像しますが、春日宮曼荼羅は春日大社を中心に三笠山や周りの風景、桜の木や、鹿などが描かれていて、こういうものも曼荼羅なのかしらと思いました。

鎌倉時代の丈2mの春日宮曼荼羅←は色彩もしっかりしてい、て一ノ鳥居から二ノ鳥居、本殿までの参道は金色です。鹿が何匹か遊んでいてのどかな自然風景。上の方には三笠山があり、その下に5仏が描かれています。

遣唐使はこの春日神宮にお参りをして安全祈願をして中国に旅立ったそうで、神聖な場所だったのです。

瑠璃燈籠は小さな青色ガラス玉(ビーズ)を繋げて六角の側面を飾ったとてもきれいなものでした。

 
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110918 北斎とリヴィエール 三十六景の競演
ニューオータニ美術館
  「建築中のエフェル塔」

ジャポニスムが流行していたフランスで、北斎の「富嶽三十六景」に触発されて、「エフェル塔三十六景」を描いた画家がいます。その名はパリ生まれのアンリー・リヴィエール。

エフェル塔の工事現場、パリのいろいろな風景、セーヌ河の船など36枚です。どの絵にもエフェル塔が大小さまざまに描き込まれています。構図など北斎や広重を大いに参考にした印象です。

グレーの濃淡、、淡い朱、白と色数少なく、いかにもフランス人のセンスが際立っています。そして日本的に サインでなく朱の落款印が押されています。

富嶽三十六景、エフェル塔三十六景を同時に比べて観賞できる、まさに競演 大変面白い企画展だと思いました。

 
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110713 古筆切
根津美術館
          光明皇后筆 

古筆切とは平安から鎌倉時代の《古今和歌集》や《和漢朗詠集》などの歌集の巻物が切断されたものです

巻物のまま残っていればよかったのですが、室町時代、茶道が流行するとともに、床の掛軸にするために切断して観賞するようになりました。

○○切、△△切、といろいろありますが、その名前の付け方は所持した人の名前からや、伝来した家や寺の名前からや、書かれた内容からや、料紙の特徴からなどということだそうです。ですから、古筆切はものすごく沢山あります。

かなは流れるように流麗ですが、変体仮名があるので読むのは難しいし、いちいち読んでいたら疲れます。全体を絵画のように見て観賞するのが精いっぱいでした。筆の穂先いっぽんでつなげた連綿線、見事です。

聖武天皇と光明皇后の書は漢字で読みやすい整った素晴らしい書体でした。

大体かなの作者には《伝》が付いています。伝・藤原公任とか伝・小野道風等…。

昔の方は和歌を詠んだり、素晴らしい仮名を書かれたりすごいです!

 
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110503 華麗なる日本の輸出工芸
たばこと塩の博物館

 

     

明治時代、外貨獲得のため海外に輸出された工芸品の展覧会です。

貝や、象牙を彫りこんだ芝山細工という屏風や家具、 凝った寄木細工の工芸品、 いかにも日本っぽい図柄の有田焼や、真葛焼の皿・壺・食器など並んでいました。

芝山細工や寄木細工は本当にびっくりするほどの芸術品。これを見た海外の人はさぞかし度肝を抜かれたことでしょう。これらは海外でジャポニズムというブームを引き起こしました。

海外に輸出されたものを今また日本の方が買い戻しておられるようです。

本当にそのころの日本の技術は素晴らしかっと実感、それが”今の日本の技術の素晴らし”さにもつながっているのでしょう。このように素晴らしい工芸の技術は、今では跡を継ぐ方がどんどん減っているようで本当にもったいないことと心が痛みます。

 
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110429 五百羅漢

幕末の絵師狩野一信

江戸東京博物館

狩野一信…初めて知った江戸後期の絵師ですが、この絵師すごいのです。

畳一枚くらいの大きさの紙に 大体五人の羅漢を配置した絵を、ナント100枚も描いたのですから。つまり全部で500人もの羅漢さんを描いたことになります。増上寺に大事に保管されていて、全部が公開されるのは初めてのようです。ちなみに羅漢とは悟りを得て、仏教を正しく伝えるために集まったもの達だそうです。

羅漢さんたちの日常シリーズでは弟子たちに説教したり、羅漢さん同士議論したり、浴室では体の手入れをしたりの情景が描かれています。

求道シリーズでは、地獄や、餓鬼、修羅、天変地異などに苦しむ人を救う絵です。地獄の様子が怖いです。

修道シリーズでは、衣食住にまつわる情景です。托鉢に出かけたり、仏像を彫ったり、糸を紡いで着物を縫ったり、洗ったり、家を建てたり…結構忙しそうです。

あと、動物とのふれあいシリーズ、ではいろいろな動物、鳥、魚、珍獣が現れますそして最後のシリーズでは龍宮や極楽浄土巡り。

とにか丁寧に色彩鮮やかに表情豊かに、画面いっぱいに力強、描かれていて、ユーモアもあり、100枚を見ても一枚一枚楽しめました。仏画という範疇を超え、今でいうアニメ風な絵画とも思いました。

江戸時代は素晴らしい絵師を本当にたくさん輩出したのだと、江戸時代のすごさを改めて感じました。今まで見たことがないような迫力ある絵。必見の展覧会です。

 
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110421 江戸の人物画展
府中市美術館

鈴木晴信《風炉と美人図」   応為「河畔美人」

円山応挙「波上白骨骸骨図」

このところ、浮世絵など江戸絵画の展覧会が多いです。そして今回は人物画。主人と府中までドライブ。運転は私。

入ってすぐにあったのは、ドカーンと大きな曾我蕭白の《寒山拾得》の墨絵、寒山はへらへら笑ってはいますが、ちょっと不気味、一方拾得は厳しいまなざしで寒山を見つめています。二人とも手足の指はライオンのような爪が。

私が好きな晴信の《風炉と美人図》←はこれから湯を沸かしてお茶の一服でも点てようとしている図。団扇で煽いで火熾りを・・・。現代ではガス等であらかじめ火を熾して風炉に入れますが、当時はあおいでいたのでしょうか。

また、北斎の娘の応為の《河畔美人》←も襟元がフリルのようにギザギザしていて印象に残りました。…北斎が娘を「おーい、おーい」と呼んでいたので応為と名がついたとか。

応挙の墨絵、《波上白骨骸骨図》←…これも人物画といえばそうですが、強烈でした。

《蝦蟇仙人がませんにん》の絵もいろいろな画家が描いています。蝦蟇は足が3本だそうです。

蝦蟇仙人・西王母・登竜門・菊慈童・久米仙人・寒山拾得・・等 中国の話を題材にした絵もたくさんあり、その話を知ると面白さも増します。

今までは単に「きれいだな」と見ていたものも、主人の講釈のおかげでその内容も徐々に分かりはじめ、細かく見られるようになりました。江戸の絵画は奥が深ーいです。

 
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110407 香り展
東京芸術大学大学美術館

鏑木清方《伽羅》

仁清「雌雉香合」

香りにまつわる美術展。

蘭奢待、白檀、伽羅、沈香木などの香木がまず展示されています。その香木にも茶道具のように伝来があることを知りました。貴重なものだったのですね。

香をたくということは古く飛鳥時代からあったようで、聖徳太子が父君の快癒を願って香をたくという絵もありました。また贅沢に白檀で作られた観音様もあります。

香炉、香合のほか、枕香炉、香道の細かい道具、着物を香で焚きしめる矢倉炬燵のようなもの、十の組香など、香遊び?の盤などが展示されていました。

←仁清の「雌雉香炉」は大きく、全体が銀色で目の周りが朱で鮮やかです。

香道の道具の中に折据や、花月札のような札、、志野袋などがあり、茶道の七事式は香道からもヒントを得て考えられたことがわかりました。

香にちなんだ浮世絵や絵画もたくさん観賞できました。面白い切り口の展覧会でした。

 
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110327 清長・歌麿・写楽展

ボストン美術館より

山種美術館

《金魚》歌麿

ボストン美術館からの錦絵黄金時代の浮世絵名品展です。

明治時代にフエノロサやビゲローによって大量に浮世絵が収集されました。

浮世絵は摺り物なので、摺りを重ねるうちに色彩が退色します。摺り始めのものは鮮やかな色彩ですが、残念ながら日本にそういうものはなかなかありません。ボストン美術館からのものは摺りはじめのものが多く、保存状態がきわめて良く、当時の色彩を伝えています。

清長は八等身美人のすらっとした美人画が特徴です。遊女や風俗画、役者絵などの中に、5節句のそれぞれの絵があり私は初めてみました。

歌麿は美人画が中心ですが、風俗画は花見・夕涼み・花火・屋台船などスケールが大きく、またお店屋さんでも広々とした店内にいろいろなことをしている人々が描かれていて見ていると楽しいです。

写楽は特徴のある、あの寄り目の大首絵。鼻の形に特徴があるそうです。背景は銀色に光っています。主人に聞くと、《きら摺り》と言うのだだそうです。

 
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110311 近代日本画にみる女性の美
そごう美術館

  

伊藤小坡「つづきもの」」 伊藤小坡の絵を真似て

 ”美人画にめっぽう弱い”主人と横浜まででかけました。福富太郎コレクションからの展覧会です。

美人画は浮世絵から始まって、近世・大正・昭和とつながってきました。

 鏑木清方の作品がたくさん出ています。題材も風俗画や物語画、単なる美人画・・いろいろです。

 私の今回のお気に入りは←伊藤小坡の《つづきもの》。 朝、身づくろいをした後、朝ご飯の用意をしながら台所で新聞を読む女性です。よく見ると大阪朝日新聞で、つづきものとは《虚栄の女》の文字が読み取れました。きっと面白い小説だったのでしょう。

 あと松本華用羊の《伴天連お春》処刑される前に桜を一目見たいといって桜の下に悲しそうな顔をしているお春。

悲恋の美人画も結構あって、最後は華やかな美人画、上村松園の《よそほい》。

美人画を堪能して 帰りに買い物をしているとき 大地震に遭いました。地下でしたが、ゆさゆさと今まで経験したことがない揺れ、しかも長く揺れびっくりしました。帰ってTVを見ると 東北ですごい地震だったとのこと。夕方には大津波が発生し、町が津波にのみこまれていく様子をLIVEで放映、CGの映画か何かを見ているようで信じられない怖いものでした。現実でなく悪夢であってほしいと思いました。

それから毎日地震のニュースです。お亡くなりになった方のご冥福を祈り、被災された方には心からお見舞いを申し上げます。

 
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110225 ホキ美術館開館記念特別展
ホキ美術館

昨年11月に開館したホキ美術館に主人に誘われて行ってきました。千葉外房線土気にあり、昭和の森公園に隣接しています。

現代写実絵画が中心の美術館です。入るとすぐ生島浩の作品が並んでいます。写真かと見まごうほどのスーパーリアリズム。洋服の生地の質感・調度品の質感・血管までほんのり見える肌の感じ・髪の毛の柔らかさなどびっくりしました。

画家の名前は初めて聞く名前ばかりですが、人物画あり、静物画あり、風景画あり、動物画ありで、どの画家の絵も写実が素晴らしいです。 このようにたくさんの現代写実画家がいらっしゃること、なんだか頼もしく思いました。

島村信之《レッスン》←は思わず昔バイオリンを習っていた娘を彷彿させられました。

森本草介の裸婦も美しいものばかりです。

描きにくいであろう物をあえて描く…大変な作業と思います。写実絵画は一枚描くのに相当時間がかかると思います。時間をかけて丁寧に描かれた作品だからこそ印象深く心に残るものだと思いました。

また、この美術館の建物もユニークなつくりです。

 
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110123 歴代沈壽官 展
三越ギャラリー

 ネズミを見つめる母娘像

サイン 

十五代沈壽官氏

 

 

薩摩焼は萩焼・、鍋島・有田焼同様、秀吉が朝鮮から連れてきた陶工が興したやきものです。

沈家が、桃山時代から現代まで守ってきた薩摩焼の全貌を知る展覧会。

明治維新の廃藩置県で島津家の保護からはなれた明治時代に十二代は大変苦労されたようです。

しかしいろいろと新しい技術を開拓したり、折からのジャポニスムの波に乗って、何とか生き延びることが出来ました。

今回は十二代の素晴らしい作品が沢山展示されていました。透かし彫りや、浮彫の超技巧、おさえた華やかさの繊細で上品な絵付け、象牙のような白の生地、それに細かい貫入・・・見事です。

香炉や皿、大きな花瓶の他に、観音様や、←「捻りもの」というなにげない日常のドラマを表現した人物などの置物も十二代から作るようになり、これらも素晴らしいです。リアドロの陶器製とでもいいましょうか。

当代十五代も、伝統的な技法を守りつつ花瓶に蝶や、カブトムシなどを止まらせるアイディアをプラスされたりした作品を作っていらっしゃいます。

歯切れの良い分かりやすい《お話会》もあり、薩摩焼のことがよく分かりました。サイン会がありましたので図録にサインをしていただきました。←字も素敵です。

 
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110121 運 慶 展
金沢文庫

平安末期から鎌倉時代にかけて活躍した運慶の展覧会。なかなか貴重な展覧会と思います。

運慶の真作を、初作から最晩年作を含めて6躯観られました。

初作は奈良円成寺からきた←《大日如来》。大きな座仏、昔は金箔で覆われていたようで、その名残が随所に残っています。金属製の首飾りや、腕輪、冠が付けられています。

その隣には、栃木の光得寺からきた厨子に入った小さい《大日如来》。厨子の内側の壁には小仏が沢山飛んでいます。台座は獅子が支える蓮の台座。

愛知の滝山寺から来た←《帝釈天立像》は、一番の私のお気に入り。カラフルな衣装をを着けて、衣の模様は見事で、落ち着いた赤、緑がいかにも中世っぽい渋さ。前に結んだ紐の感じなど木彫りの技術に驚かされます。

あと、等身大の不動明王、毘沙門天、これはいわゆる運慶らしい力強い作品。

最晩年の作品は《大威徳明王》、これは小さなもので、胎内からの史料で 最近運慶の作品と分かったものです。小さいながらも6面(実際には2面)の迫力ある顔と何本かの手があったと見られるものです。阿修羅のようなもの。

美術品として鑑賞してしまいましたが、もともとは仏様たち、拝む対象・・・最後には心の中で手を合わせました。

 
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110115 池田学《焦点》展
みずまギャラリー
みずまギャラリー入り口

前述の佐藤美術館に行く前に、美術を深めている主人の希望で市谷のミズマギャラリーに寄りました。

池田学という現代のアーチストの作品の展示です。

今回の作品は22cmX27cmという小品です。絵の大きさは小さいものの絵の中身は壮大です。

海に四角の枠で切り取って、なんとその中には巨大なビル群・高速道路がある大都市がのぞいています。ちょっとシュールな感じ。しかも海の波にしろ、大都会にしろ細密にペンで書かれています。そしてカラーです。

そんな凄い発想の絵が20点ほど展示されていました。異次元に迷い込んだような面白い絵ばかりです。とても丁寧に描かれているので見ていて気持ちよいです。

発想力・想像力の豊かさ、技術の確かさを持った画家、きっと有名になると確信しました。

 
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110115 春の粧い
佐藤美術館

加山又造《夜桜》

奥村元宋《吉野細雨》

佐藤美術館は信濃町の慶応病院の裏辺りにあるこじんまりとした美術館です。

いかにも新春といった「春」、それも「花」をテーマとした展覧会です。やはり梅や桜の絵が多いです。

梅は地味な花ですが、郷倉和子《春律》は瓦の屋根にかかる紅梅が描かれています。

堂本元次《桜花水に映る》は画面の三分の二ほどを水面に映る桜の木が描かれている奇麗な絵です。

私が気に入ったのは←奥村元宋《吉野細雨》、←加山又造《夜桜》、後藤純男《古刹麗春》。

全部で20作品だけの展覧会ですが、どの絵も大きな絵で、静かに心行くまでゆっくりと鑑賞することができました。

主人は寒いのでずっと外出を控えていて、足が弱っていたので、良い散歩になりました。私も孫を暮れから預かっていましたが、昨日返してほっとして二人で今年初めての美術館めぐりでした。

やはり新春には 日本画が合いますね。

 
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