ダイオキシンにもどる
t08801#目に余る農水省の情報隠し−農薬中のダイオキシンに関する質問への回答#99-04
てんとう虫情報86号で、農水省に対して農薬中のダイオキシン類に関する質問状を出したことをお知らせしました(記事中の質問部分は簡略化しました。詳しくは質問状へ)。回答期限の3月15日を過ぎても回答がないので、問合わせると「3月末まで待ってください」とのことでした。3月30日に、農水省植物防疫課農薬対策室から「ご説明したいのでそちらに伺います」という電話がありました。きていただくのは大変結構ですが、この質問に関しては2、3人の国会議員も関心を寄せており、一緒に回答を聞きたいとのことでしたので、4月2日に、谷本たかし参議院議員の部屋で聞くことにしました。
当日、回答にきたのは農薬対策室長と課長補佐でしたが、何故、わざわざご説明に伺いたいなどといったのか、頭をかしげるような回答で、徹底的な情報隠しに終始しました。情報隠しの根拠としてWTOの協定の中の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」を持ち出し、全く的外れな弁明をしていました。情報公開法が通ろうとしている時に、このような農水省の姿勢は許せません。テレビ朝日に5度も再放送や損害補填の申し入れをする暇があったら自分のところの情報公開をするべきです。
以下、農水省の回答を示します。内容は省いた部分があります。
【質問1】ダイオキシン含有のチェックをメーカーに指示した農薬製剤、メーカーから含有する旨報告のあった農薬活性成分は何か。
【回答】農薬については、農薬取締法により、農林水産大臣に登録しなければ販売することはできない。登録の検査において、毒性のあるダイオキシン類が含まれていないということを確認した上で登録するようにしている。従って、現在、登録のある農薬に関しては、農薬の登録申請時に提出される試験成績表のなかには、毒性のあるダイオキシン類の含まれているものは保有していない。
***やりとり***
★どの農薬を調査したかも公表できないと
Q:現在、登録されているか否かに係わらず、農水省がダイオキシン類含有のチェックをメーカーに指示したか、又はメーカーから含有の報告のあった農薬活性成分は何ですかという質問なんです。その答えじゃないですね。
A:農薬の登録時、いろんな資料を出していただいて、その中には、当然、製造工程、どういう流れで農薬を製造するかということのフロー図もみんな出していただいて、審査するわけなんですが、その中で、ダイオキシン類が工程上発生する可能性があるものについては、ダイオキシン類をチェックしなさいということでやっているんです。
Q:そうですね。だから、可能性のあるもので、指示したものの名前を教えていただきたいと言っているわけなんです。
A:誠に申し訳ないんですが、今まで、そういう製造工程に関わるもので公表したものはありません。
農水省は「製造工程上の秘密」ということを繰り返すのみで、堂々巡り)
★国際協定があるから公開できない
A:いろいろと守秘義務の問題もありまして、国際協定もありまして、こちらのほうで資料を出しまして、相当の努力を要する試験成績というものは、
Q:国際協定って何ですか。どういう関係があるんですか。
A:トリップス協定です。農薬あるいは医薬品の試験成績について、
Q:不純物がどれだけはいっているかなんてのは試験成績になるんですか。
A:それはメーカーが相当のお金を掛けて調べています。
Q:だから、おかしいんですよ。そういうふうな言い方は。トリップス協定なんか関係ないですよ。毒性データじゃないですよ。不純物がどれだけ入っているかというのを知らせてくれといっているだけですからね。しかもダイオキシンに限っているだけで。それを、トリップス協定を持ちだして。第一、あの協定だって、公衆の保護のためには例外だって書いてあるじゃないですか。
A:それはもちろん、書いてあります。但し、それは農水省が勝手には判断できないことです。
★不純物のデータも厚生省に行くのか不明
Q:農水省は毒性についてはちゃんと検査してないじゃないですか。ADIを決めるのは最終的には厚生省です。厚生省から環境庁に行き、そこから農水省に戻るんでしょ。
A:はい。そういうシステムになっているのはそうです。われわれとしましては、そういうADIが決められた基準ですね、基本的には作物残留の基準に照らして、ある登録の方法で撒いた時に、それ以上の残留はないということを確認した上で登録をしていますので、その部分の検査という意味で農水省がやっています。基準をつくるのは環境庁、環境庁は厚生省に意見を聞く、それはもう環境庁のご判断なので、こちらのほうとしては、別に、言うことはないんですが。
Q:その時に、毒性データ、不純物なんかも一緒に行くわけですか。データすべて。
A:不純物は特には行きません。毒性試験ですから。ADIは原体で試験をしなきゃいけないので、原体はまあそういう意味では不純物といいますか、他成分も含んだもの、本当に純粋な100%ピュアな有効成分ではございません。もちろん、工業製品なので、不純物も含んだものを試験した成績でもってADIを決めていますので、まあ、ダイオキシンが入っているとは申しませんが、他の不純物を込みで原体の毒性を試験しています。
Q:その時に不純物のデータも一緒にいくわけですか。環境庁に。
A:不純物のデータというか、そういった成分は一応、参考資料として付ける場合もあります。但し、そこはあまり、ADIを決めるに当たっては、関係しない。あるいは、いや、ADIを決めること自体には不純物はあまり関係しないと思います。
Q:じゃあ、不純物のデータはいかないわけですか。環境庁に。
A:ちょっと私、そこまで詳しく知らないのですが、渡すデータのなかに入っているとは思います。それを使っているかどうかは分かりません。
Q:一応、毒性データと不純物は別になっているわけですね。
A:ああ、違います。試験方法と違いますから。
Q:違いますでしょう。だったら、不純物はさっきのトリップス協定には関係ないじゃないですか。毒性データと不純物に今分けましたよね、で、毒性データはまあ百歩譲ってトリップス協定で公衆の保護のためだっていうのはのぞかれるけれども、まあ、あなたがたが言うように、トリップス協定で保護されているとしても、不純物については保護されてないじゃないですか。違うでしょ。
A:トリップス協定では毒性データとは書いてないと思いますが。
Q:いや、今そうおっしゃったでしょ。不純物と毒性データは違うんだと。そういうことであればトリップス協定は関係ないじゃないですか。
A:知見データとなっているので。
Q:だから、違うんですよ。ダイオキシンが含まれているかどうかくらいは農水省は明らかにしないといけないんですよ。大体、このトリップス協定というのは不公正な商取引から保護されるというのが主な目的ですよ。私たちが不公正な商取引をするようなあれじゃないわけですから。
おかしいですよ。とにかく、そういうふうな回答には納得できないです。これは私たちからしたら、どういう農薬を調べたくらい明らかにしろということをもう一度、要望しておきます。こればっかりしていたら何年あっても足りませんからね。
【質問2】該当する農薬の登録番号か活性成分ごとの登録農薬数をお示しください。
【回答】先程申し上げましたように、ダイオキシンが入ってないということなので、上記に該当する農薬というものはないので、登録番号も示すことはできないし、登録農薬もない。
【質問3】ダイオキシン類の分析については、どのような異性体についてなされていますか。
【回答】異性体は、2、3、7、8のダイオキシンの等価係数を持っているダイオキシンについてチェックしている。
***やりとり***
★コプラナPCBは調べていない
Q:要するに、TEFの決まっているものだけですね。他のものは全然やらないんですか。
A:毒性がないと言われていますのでね。
Q:毒性がないっていうのはおかしいと思いますが、昔から問題になっているCNPに含まれていたダイオキシンは1、3、7、8と1、3、7、9でしたね。そういうものは全然やってないんですか。
A:われわれは求めていません。
Q:一切、やってないわけですね。ジベンゾフランはどうですか。
A:やっています。
Q:コプラナPCBは?
A:コプラナはまだやっていません
Q:じゃあ、TEFの決まっているダイオキシンとジベンゾフランと。それしかやってないわけですね。
A:17種類です。
A:コプラナPCBにつきましては農薬には使っていないということでございますので、その辺はご理解いただけるのではないかと思います。
Q:やってみなきゃわからないでしょ。分析してないんだから。使うか使わないかの問題ではない。不純物として入っているかどうかでしょ。
A:今まで日本で採用しましたTEFではコプラナPCBは入っておりませんので。
Q:厚生省も一応、WHOのTEFに基づいて、コプラナPCBをダイオキシン類に入れるって言ってますよね。今後、農水省はどうするんですか。
A:それは厚生省がそう決まれば
Q:TEFが決まればコプラナPCBもやるということですか?
A:まあ、様子を見てということになります。
★益永論文は信用できない
Q:益永先生が論文を発表していますよね(農薬中のダイオキシン参照)。ご存じだと思いますが。PCPやCNPがもう使っていないから安全という物ではないでしょう。
A:それは、我々はその通りだと決して思っていませんので。CNPにつきまして、それだけのダイオキシンが入っているという知見を持ちあわせていませんので。
Q:これ、TEQでやっているんですからね。1、3、6、8は入ってないんですよ。この計算がおかしいということですか。
A:いやいや、計算がおかしいということを申し上げているのではありません。
Q:何がおかしいのですか
A:おかしいというのではなくて、どういう試料を使ったのか、少し不明な点があるということを申し上げているわけで。
Q:分析した農家の倉庫にあったCNPが、そういうものじゃないんじゃないかって疑っているということ?
A:CNPはCNPだったんだと思います。
Q:じゃあ、どういうこと?
A:保存がどういう状態であったのかとか、これは例えばですよ。
Q:だから、この論文について、農水省としてそういうふうに異論があるんだったらもうちょっときちんと反論すべきじゃないんですか。
A:もちろん、あのう、おっしゃる通りです。
Q:私たちはこれは、すごいなと思っているんです。農水省みたいにどこがおかしいなんて思っていないものですから教えてほしいんですけども、要するに、分析したCNPの保存状態がどうだったのかということが不審な点なんですか?
A:まず、そこを教えていただきたいと
Q:他にどういうことがありますか?
A:まあ、いくつか、まあ、あまりそういうことを、人のことをいちゃもんつけるようなことは
Q:違うでしょ。先に言ったでしょ。あなたが。信用できないって。
Q:信用してないんだったら、きちんと根拠を示さないとよけい失礼ですよ。根拠を示さないで信用できないなんて。
A:根拠を示すという話じゃないんですけども、我々としましては、今申し上げましたように、どういう状態でどのくらいたったものなのか、あるいは、どういう形でお持ちになったのか、当然、その間に、そのう何か他のものと混ざってしまうようなことはなかったのか、その辺はきちんとお聞きしたいなと思ってはおります。
★17種類以外のダイオキシンは毒性がない
Q:毒性のあるダイオキシンがあったとか、なかったとか言ってますがメーカーのデータだけで言うからそういうことになるんですよ。もともと、今、室長がおっしゃったのは誰に聞いたんですか。ダイオキシンは入っていないと。誰のデータですか。
A:これまでの資料です
Q:だからメーカーのデータでしょ。
A:・・・メーカーから提出されたデータです
Q:ね、だからメーカーのデータは信用できないかも知れないじゃないですか。
A:ダイオキシンは図るのは非常に難しゅうございますので、どのメーカーも第三者機関に委託されておりますので、信用できないということはないと思いますよ。
Q:でも、こういう益永先生のような分析結果がでるわけですからね。
A:・・
Q:私たちとしては、先程から言っている17種類のダイオキシンとジベンゾフランだけのチェックではだめだと思います。だから、それ以外のダイオキシンだったら70種類ですか、ジベンゾフランが130。全部の異性体を調べなければ安心できないじゃないですか。それで、他の異性体も調べてもらわなければ。特に、1、3、6、8ってのは毒性ゼロだと思っているんですか?
A:ゼロだと思っています。
A:これは農水省もそうですけども、他の省庁さんもみんなそれ以外のものについて何かやっているとは聞いていません。
Q:調べているんじゃないですか。例えば、1、3、6、8なんか土壌とか水だとか調べていますよ。そういうふうなものがCNP以外の農薬から出ている可能性ってあるじゃないですか。
A:ただ、それは毒性換算したらゼロです。
Q:日本で一番たくさん環境中にあるダイオキシンってのはTEFがないのですよ。1、3、6、8ってのはいっぱい出てくるじゃないですか。水からも未だに出てくるんですよ。土は当然のことながらね。魚だってあるかもしれない。だから、日本を一番汚染しているダイオキシンが1、3、6、8だってのは明らかになっているんです。それも農薬からでたものだって明らかになっているのに、そのことを無視してTEFがゼロだって形で農水省が責任のがれをすることはできないと思いますよ。
A:責任を逃れる、逃れないということではなくてですね、1、3、6、8には毒性がないと・・
Q:(笑う) そんなことはないって。不明って表現しなきゃいけないんです。ただ、17種類だけ調べて問題ないといっているのは絶対おかしいです。そういう態度というのは後でまた責められますよ。農水省として。
−以下の項略−
★指示の文書はない/★平成元年に決めた/★植物防疫課が決めた
【質問4】ダイオキシン類を含むことが判明している農薬にについて、異性体別含有量及びTEQを明らかにしてください。個々の製剤について明示できない場合は、活性成分毎に異性体毎の含有範囲及びTEQ範囲をお示しください。
【回答】ダイオキシンを含むことが判明している農薬がないのでTEQの範囲を示すことはできない。
【質問5】ダイオキシンが含有されなかった農薬については、個々の農薬製剤又は活性成分名を挙げて、ダイオキシン分析における検出限界値を示してください。
【回答】・・・
***やりとり***
Q:検出限界は?
A:検出限界はコンマ1ppbです。
Q:これは全部のダイオキシンについて?
A:TEFのあるものです。TEQの換算値で0.1ppb、まあ、正確には0.1ナノグラム/グラムです。
【質問6】貴省が、独自に、塩素含有農薬中のダイオキシン類の有無をチェックするようお願いします。
【回答】皆さん方からの要望は承るが、農薬取締法では申請者が試験成績を提出することになっているし、ダイオキシンについては非常に高度な分析を要することがあり、各メーカーとも第三者機関に分析を委託するような形でやっている。
***やりとり***
★PCNBのダイオキシンはわからなかった
Q:PCNBが登録されるときには、それこそ17種類のダイオキシンが入っているとは思ってなかったんでしょ。
A:はい。
Q:環境庁の関係で調査したら出てきたわけですね。それについてどう思います?
A:まあ、その時にどういう判断をしたのか分かりませんけれども、もし、現在、そういうことになりますれば、新たな知見が出てきましたら、当然、農水省でも再チェックをすることになろうかと思います。現在であれば。
Q:農水省独自では調べなかったんでしょ。メーカーのデータで入っていないと判断して、そのままずっとおいといたわけですね。で、環境庁がどういうわけか調べて見たら出てきたと。
A:分析精度が上がっていますので、それは何とも言えないですけども。もちろん、おっしゃるように、ほっといたっていうのはあれですけども。
★農薬工業会に指示した
Q:これをやろうという計画あるんですか。
A:当面、農薬工業会に対して指示を出していますので、それについては、そこできちんとチェックをすることに
Q:どういう指示を?
A:もう一度、今の技術で疑いのあるものについて再チェックするように指示を出しています。
Q:ふうん、それはいつ出したんですか?
A:国会でこういう問題が起こってからです。
Q:だから去年?
A:いえ、今年です。
Q:今年の何月? 99年?
A:99年です。ホウレンソウの話がでて後です。
Q:じゃあ、つい最近出したばっかり? それは農薬工業会への通達ですか?
A:通達じゃなくて指示です。
Q:その指示書を下さい。
A:・・・
Q:公然と出されたんでしょう、農水省が。99年の3月。まだほやほやじゃないですか。
A:・・
Q:いつも通達とか、通知みたいな形で農水省が出しますよね。植物防疫課長の名前だったかな。農薬工業会の会長宛にね。そういう文書でしょ?
A:いや、違います。事務連絡です。
Q:事務連絡だってなんだっていいじゃないですか。いただけますか?
A:・・・
Q:そんなの、出せばいいじゃないですか。こんなまで出せないのですか? 情報を隠そうとすると疑われますから、出せるものはどんどん出した方がいいですよ。
そうしたら、私たちの要望の有機塩素含有の農薬中のダイオキシン類を農水省がチェックしてくださいってのは、どうですか? 拒否ですか?
A:いや、ですから、何らかの必要があれば、まずは工業会にやっていただくと。
【質問7】検出されたダイオキシンが農薬由来のものか、他の発生源に由来のものかが判明できるような調査を実施してください。特に、農薬中に含まれるダイオキシンの農作物汚染の実態を調査してください。
【回答】ご要望は承りますが、毒性のないダイオキシンをお金をかけて分析させるというのは、問題があるので、いずれにしても、何由来なのかはダイオキシンの環境中の動態も含め、試験研究機関のほうで研究することにしている。試験の集積を待って、反映させてゆきたいと思っている。先般、3月25日、所沢のお茶については、土壌、人への摂取量などを調査したので、これをお渡しします。
***やりとり***
Q:農水省は自分の研究所でダイオキシンの分析ができるんですか?
A:いや、今はできないです。
Q:そうしたら農水省は農薬検査室でもダイオキシンは分析できないわけですね。今後、分析できるようにするんじゃないですか。何か随分予算をもっていっていますが。
A:環境ホルモンについては残留農薬研究所でやっています。
A:そこは非常に予算的に苦しいので、出せないのです。
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作成:1999-04-29