環境汚染にもどる
t10303#危険な廃木材のリサイクル−建設資材再資源法が付帯決議をつけて成立#00-06
 てんとう虫情報101号に建設省と厚生省が提出した法案「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設資材再資源化法)」の問題点を指摘しましたが(記事t10101へ)、国会審議では、修正にいたらず、9項目の付帯決議がつけ加えられただけで成立してしまいました。
 私たちの主張に関連した決議の文面は
(4)建設廃棄物の発生を抑制するため、設計・建築段階における発生抑制の必要性を広く周知するとともに、これらに向けた技術開発等必要な措置を講ずるよう積極的に努めること。
(7)対象建設工事規模以下の建設工事についても、できるだけ分別解体等及び再資源化等が行なわれることになる必要な措置を講ずること。
(9)建設廃棄物の処理等の過程における有害物質の発生の抑制や、いわゆるシックハウス問題の解決に資するため、建設資材に係る化学物質対策の強化を図ること。
 の三つで、いずれも抽象的な表現にとどまっています。

 その後、建設省は、CCA(銅−クロム−砒素)処理木材については、私たちの主張をとりあげ、廃木材に対する含有チェックをすると表明していますが、BHC、ディルドリン、クロルデン、PCP、さらには、クロルピリホスやペルメトリンなどの有機塩素系薬剤で処理された木材をどうするかについては、何もいっていません。
 付帯決議だけで、安心していたら、事態はとんでもない方向にいってしまうことは、眼にみえています。以下の節に述べることは、ほうっておけば、こんなことになるという悪しき事例です。今後は、この法案の施行規則や運用面に、一層、眼を光らせていかねばならないと思います。

★シロアリ防除剤で汚染されている沖縄県
 てんとう虫情報97号で有機塩素系農薬の地域別母乳汚染の状況を報告しました(記事t09703へ)。
その中で、86年に化審法の適用で販売使用禁止になったクロルデンによる母乳汚染をとりあげましたが、規制後12年を経た98年に採取された初産婦乳の平均濃度は、沖縄県が219.9ng/g母乳脂肪と最も低い岩手県の約7倍という全国でも群を抜く高い値でした。これは、南方へいくほど、シロアリ被害がひどいということで、クロルデンが大量に使用されたせいだと考えられます。母乳汚染は、処理された家屋内の空気汚染によるものか、魚介類など食品の二次汚染の影響が大きいためなのか明確ではありません。汚染源の調査をきちんとして、食品の規制などが必要かどうかを検討すべきでしょう。
 一方、ポストクロルデンとなった有機リン系のクロルピリホスの環境汚染も、表に示すように拡大しています。沖縄県衛生研究所の報告では、70年から93年の25年間で、同県内の魚毒事件は198件発生しており、死因が明確な88件のうち有機リン系農薬によるものが65件を占めています。表に、84年以後の薬剤別の発生件数を示しましたが、クロルピリホスによるものが第一位にあります。報告は『とくにクロルピリホスによるものは、それまで、シロアリ駆除剤として使用されていたクロルデンが86年6月以降使用禁止されたのに伴ない、その代替品として使用されるようになった時期から増加している』と指摘しています。
表 主な有機リン剤による死魚事例件数
(出典:沖縄県衛生環境研究所報28号,1994)

年度  クロルピリホス スミチオン ダイアジノン DMTP MPP
1984                2                1
 85                                       1
  86                1
  87       1
  88       2        1       1              1
  89       3        3
1990       5        2       2         1
  91                        1         1
  92       2                1         2    1
  93       6        1                      2
合計      19       10       5         5    5
★チョット待て!古まくら木のガーデニング資材転用
 朝日新聞5月24日付けの青鉛筆欄をみて驚きました。鉄道に使われた古まくら木が園芸や造園の人気資材として、リサイクル利用され、一本1500〜5000円で売られているというのです。なんでも、古まくら木の風合が好まれ、植木台や花壇の土留め、はては、店舗の内装にも使われるとか。これぞ、木材のリサイクルのお手本といって喜んでいられません。なぜなら、記事には、まくら木は防腐剤で処理されていることがメリットみたいに書かれているからです。
 まくら木には、風雨にさらされて腐らないように、たっぷりと木材防腐剤が加圧注入されているのが普通です。木材防腐工業会による防腐剤処理木材の用途別生産量の推移を図に示しました。まくら木用の生産量は85年の10万立方米をピークに最近減少傾向にありますが、防腐処理された古まくら木の供給には事欠かかないでしょう。まくら木には、恐らく、クレオソートならば木材一立方米あたり140kg、CCAならば7.5から22.5kgの処理がしてあることは間違いなく、さらには禁止になったBHC、ディルドリン、クロルデンやPCPなどで、処理されたものもあるかもしれません。おまけに、記事には海外で使われたまくら木を輸入する業者もあると述べられていますから、いったいどんな、有害物質が含まれているかわかりません。

図 防腐木材の用途別生産量の推移 −省略−

 もっとも、防腐剤として、CCAやクレオソートが家屋の土台や公園用材などに今もって使用されていること自体が問題であるのはいうまでもないことです。
 欧米では、クロルデンでシロアリ防除、特に土壌処理した家屋周辺での菜園の収穫物を食べないように注意が喚起されています。また、アメリカでは85年にCCAやクレオソート剤の店頭販売が禁止されただけでなく、処理された木材に毒性に関する注意表示が義務付けられています。ヨーロッパでも昨年、EU加盟国間で規制に違いのある、クレオソートやPCPの販売規制をどうするかが問題となり、デンマーク、ドイツ、オランダ、スウエーデンなど既に規制している国では、その継続が決まっています。
 日本では、いまも、クレオソートは、公園の階段木材、樹木の支柱や垣根などで使用されています。ひどい場合は、1年以上たっても悪臭が残っており、この臭いをかぐと体調がおかしくなるという化学物質過敏症の方もいます。
 東京都杉並区にある都のゴミ中継所(プラスチックを含む不燃ゴミを圧縮して減容化する施設)周辺住民が健康被害を訴えている問題で、その原因をゴミ施設からの放出物質にしたくない東京都は、原因物質のひとつとして近くの公園で樹木の添え木に使われたクレオソートをあげました(2000年3月の調査報告)。
 私たちは、シロアリ防除剤や木材防腐剤の危険性、処理した廃木材のリサイクルの問題点を再三指摘してきました。異臭のするクレオソートは、判断がつきますが、砒素やクロム、銅などの重金属や有機塩素系薬剤が園芸店で売られている古まくら木にどの程度含有されているかは全く不明です。有害物質を使用した製品をリサイクルすると、環境汚染や人体被害というシッペ返しをくう恐れがあることを忘れてはなりません。そういう意味で、古まくら木をガーデニング資材として再利用することに、チョット待ったの声をかけたいと思います。
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作成:2000-07-25