街の農薬汚染にもどる
市への意見は金沢市のホームページにある市長へのメッセージのページへ
参考資料 パンフ『農薬いらずの庭づくり』 ビデオ「気をつけて!町内会の殺虫剤」

t10306#金沢市のもう一つの顔−農薬汚染#00-06

            (投稿)サスティンナブル金沢 小沢祐子

 金沢の街は品格があって、美しい。白山が遠望できる台地には兼六園などの豊かな緑が広がり、歴史的文化施設と近代都市が融和し、すばらしい景観を作り出しています。この町に年間595万人の観光客が訪れます。しかし、私たちは街の緑の影に気づきました。金沢市はアメリカシロヒトリ駆除のために、街路樹や公共施設に大量の農薬を散布しています。その上、町内会にアメリカシロヒトリ駆除費用を補助し、各家庭の庭木にも農薬散布をしています。結果として、金沢市民は他の都市の約10倍から40倍の農薬に被ばくしています。町内会による散布は拒否しにくい雰囲気があります。

★金沢市の樹木害虫駆除システムは人権問題です
 人は不必要な化学物質の被ばくを受けない権利があります。化学物質や農薬に過敏な人、胎児や子供、老人、病人はとりわけ化学物質一般や農薬に汚染されていない清浄な空気を呼吸しなければなりません。
 金沢市では、町内会にアメリカシロヒトリ駆除事業経費を市が四分の三補助し、町内会単位で一斉農薬散布が実施されています。使用農薬はディプテレックスとBT剤。昨年度の使用農薬総量は希釈液にして230万リットル(ドラム缶1万1500本分)、事業費1億1680万円です。人間に被害を与えるわけでもないアメリカシロヒトリ退治にこのような大量の農薬を散布するのはどう考えてもおかしいと思います。散布に関する問題点をあげておきます。
 ・農薬散布日時の周知徹底がされていない。突然に敷地に農薬が散布されたという経験を話す人がいます。農薬散布を断ると、回覧板が回らなくなったり、周辺の住民の視線が冷たくなり、虫が広がるなどの苦情が出るため、散布を断れません。

★散布自体の問題点には次のようなことがあります
 ・農薬散布をした場合、地上散布であっても少なくとも400メ−トルは飛散し農薬散布後1週間は農薬がガス化し、周辺の大気を汚染することが知られています。近隣の樹木への散布でも、自分の庭に撒かれたのと大きな差がありません。
 ・農薬が散布される環境中には、弱者である妊婦や幼児・子供・老人・慢性的な病気を持った人などがいます。シックハウス症候群や化学物質過敏症などの化学物質や農薬に特に過敏な人もいます。農薬に対する弱者が存在する住環境に無差別な散布をすることは異常なことです。

★金沢市の樹木害虫駆除システムは散布量の異常な多さ、町内会での問題など文化都市としての風格に欠けます
 ・私たちは人口規模が金沢市とほぼ同じ隣接県の岐阜市、杜の都と言われる仙台市の樹木害虫駆除経費を比較しました。
 金沢市は、岐阜市の36倍、仙台市の約13倍(人口・宅地面積あたり)と突出した防除費用を使っています。県が兼六園などに散布する農薬量を加えると、市民の被ばくはさらに大きなものになっています。
 ・アメリカシロヒトリは、生態系に組み込まれ、捕食する鳥や昆虫などにより大発生は希になっています。大発生があるとすれば、大量の農薬を慢性的に使用してきたことにより、生態系のバランスを破壊し続けたためではないでしょうか。
 ・町内会の散布は蚊がいなくなって良いといった、アメリカシロヒトリ駆除目的以外の効用を喜んでいる人がいます。害虫や農薬問題に素人の町内会長らが業者に農薬散布を依頼し、業者は散布した分だけ経費を受け取る仕組みになっています。この仕組みでは、農薬を使わずに、アメリカシロヒトリを早期に発見して、焼き殺したり、切り取って踏みつぶすという、基本的な防除システム(総合防除の一部)は切り捨てられてしまいます。

 図 面積及び人口当たりの樹木管理費用の比較:省略
表 市内の街路樹・庭木・公共施設の農薬散布による樹木病害虫対策費の比較

  市名  人口   宅地面積     防除費用      人口・面積当りの費用
 金沢市 49万7933人 430,866アール   1億1680万円(H11年)   1
 仙台市 99万0665  929,500    1771万0562円(H10年)   1/13
 岐阜市 40万9399  485,600     324万8576円(H12年)  1/36

 *金額が代表する農薬使用量を比較して下さい。
 *金沢市は個人の庭木も町内会単位で農薬による一斉防除を行っていること
 (内、約9000万円程)が問題です。
 *多くの自治体がパトロールをして、病害虫を確認したら、タカバサミで切
  り落とし、焼殺器を使う、高圧の水で幹を洗って樹勢の回復をはかる、ス
  ポット的に農薬を散布するなど、薬剤の使用量を少なくする努力をしてい
  ます。
★農薬使用に対する問題
 農薬は、農地という、特定の場所で有害生物を駆除するために開発されたものです。これを、人の住環境に無差別に散布するのは危険です。
 ・農薬に対する感受性が遺伝的に敏感な人がいることが分かってきました。たとえば、有機りん系農薬を解毒する酵素であるパラオクソナーゼ活性の弱い人が存在することが知られています。この場合、農薬による急性的影響が大きく現れます。
 ・農薬は発達中の脳に影響を与えることが知られています。本年6月8日に、アメリカ環境保護庁(EPA)は、広く使われている農薬の一つ、クロルピリホスの家庭用商品生産禁止と農業用使用の規制という厳しい制限を発表しました。
 発達中の脳に対する影響を心配して出した措置です。現在、EPAは、発達中の脳に対する影響を懸念して、全有機りん系農薬の毒性を再調査中で、その活動の一環として発表されました。
 ・母体中で有機りん系農薬の被ばくを受けると生まれてから多動性や攻撃行動が強く現れることが動物実験で知られています。
 ・人間でも農薬被ばくが多い地区と、少ない地区の子供を比較すると、農薬被ばくが多い場合、持久力が減少し、知的発達が遅れ、暴力行動が多く見られることが、メキシコの調査で報告されています。

★使用している有機りん剤(ディプテレックス)とBT剤の問題
 ディプテレックスは、遺伝子に傷をつけること(変異原性)や発ガン性をもつことが指摘されています。胎児期の被ばくにより、運動機能に関連する小脳の神経細胞の発達に影響を与えることが明らかになっています。人間では、ディプテレックスで汚染された魚を食べた妊婦が、先天性障害を持った子供を高い割合で出産したことがハンガリーから報告されています。
 ・ディプテレックスは鳥類やアメリカシロヒトリ以外の昆虫に対しても悪影響を与え、天敵がアメリカシロヒトリを抑える仕組みを破壊します。
 ・BT剤は毛虫などに寄生する細菌で、人間には無害であると信じられてきましたが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に従軍したフランス軍兵士が、重度のBT菌感染症になったことが報告されています。BT剤散布後、人間の鼻腔洗浄液から生きたBT菌が検出されています。最近では、過敏性反応を引き起こすと報告されました。
 *参考 有機リン剤の毒性 BT菌 農薬別毒性解説にある有機リンの項
★お願い
 私たちは、金沢市の緑を最も毒性の少ない方法(総合防除)で守るように、金沢市や石川県に要望書を提出しました。OECDをはじめとして、各国が農薬のリスク削減努力をしています。立ち後れている日本の中でも、金沢市は時代に逆行しています。金沢市をはじめとする日本各地での農薬乱用をなくすために、皆様からのお力添えをいただきたいと思います。
 金沢市民はもとより、金沢市外の方々から、アメリカシロヒトリ駆除を含む、農薬乱用に対する意見を金沢市長に伝えてください。

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作成:2000-06-25