農薬の毒性・健康被害にもどる
t11404#アメリカ・デュポン社が殺菌剤ベンレートの販売中止へ−環境ホルモン系農薬ベノミルを日本でも追放しよう#01-05
アメリカの化学会社デュポンは、4月19日、農薬活性成分ベノミルの製造を止め、殺菌剤ベンレートの販売を今年末までに(海外市場では、、2002年末までに)やめると発表しました。
同社は、ベノミルは30年以上も使用されてきた農薬で、指示通り使われれば安全だと主張し、こんどの措置はリコールではないとしていますが、同剤による薬害やヒトの健康被害で多くの訴訟をかかえ、その賠償に耐えきれなくなってきたことや、ベノミル耐性の菌が出現してきたことが、製造販売中止の一因と考えられます。
★ベノミルによる薬害、子供の眼の障害などで相次ぐ訴訟
89年、アメリカのフロリダ州などで、デュポン社の製造したベンレートに除草剤アトラジンが混入していたため、散布された農作物が枯れるという薬害事故が多発。そのため、91年以後、数百件の損害賠償訴訟が起こり、同社は農作物被害との因果関係はないと反論したものの、7億5000万ドルの補償金を支払うはめになりました。
また、アメリカやイギリスで、先天性無眼症などの眼に異常をもつ子供たちの家族が、身近で散布されていたベノミルを妊娠中に被曝したのが原因だとして、デュポン社相手に訴訟をおこしており、目下、係争中です(記事t05308、記事t09309参照)。
さらに、テキサス州でのベノミル飛散による果樹園の被害やエクアドルでのバナナ園から流入したベノミルによるエビ養殖場の被害に対する損害賠償訴訟が相次いでおこり、デュポンは多額の賠償金を支払を命ぜられました。
★環境ホルモン系農薬ベノミルを追放しよう
日本では、ベノミルは71年に登録され、リンゴ、ナシやブドウのウドンコ病、クロホシ病、ミカンのソウカ病、稲の種子病、テンサイのカッパン病などに適用されるほか、種子や球根の消毒や、ミカンの青カビ病など、貯蔵病害にも使われる殺菌剤です。
妊娠ラットへのベノミルの投与で、仔に脳ヘルニアや水頭症などの先天異常が認められ、生まれた仔の死亡率も上昇したと報告されていますし、アメリカのEPA(環境保護庁)の行った試験では、思春期の雄のラットに250mg/kg体重以上のベノミルを5日〜10日間経口投与すると、生殖器の重量や精子数の減少が認められました。また、203ppmのベノミル添加飼料を70日間与えた雄のラットにも同様の現象がみられ、環境ホルモンの疑いの濃厚な農薬です。
99年の日本への輸入は原体及び製剤がそれぞれ29トン、243トン(99年)で、製剤別メーカー別出荷量は下のようです。
製剤(商品名) 出荷量(単位トン)
ベノミル水和剤(ベンレート)
デュポン 268.7
ベノミル・メプロニル水和剤(シャルマート)
理研グリーン 14.3
ベノミル・TPN水和剤(ダコレート)
武田薬品 39.2
クミアイ化学 40.8
また、出荷量の多い県は、長野県:37.0、山梨県:21.8、熊本県:16.8、愛知県 :14.2、岩手県:13.8トンの順となっています。
ベノミル中には催奇性のあるカルベンダゾール(MBCともいい、この農薬の登録は99年11月30日失効)が不純物として含まれているだけでなく、水分に出あうと容易にMBCに変化することも問題視すべきです。さらに、日本では、MBCを生成する殺菌剤として、チオファネートメチル(商品名:トップジンM)が、原体3058トン、単水和剤637トン、単粉剤2211トン(いずれも99年)生産され、野菜や果樹の殺菌剤として大量に使用されていることも要注意です。
私たちは、98年に危ない農薬ダーティー12を発表し、環境ホルモン系農薬の追放を提起していますが、ベノミルもこの中に含まれています。また、最近、日本界面活性剤工業会は、会員会社からの環境ホルモン系界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルの販売を将来的にゼロとすることを確認したと発表していますが、その一種APEは展着剤として登録されたもので、魚のメス化を引き起こすノニルフェノール系農薬としてダーティ12の中に挙げています。
メーカーに対しては、これらの農薬の製造・販売の早急な中止を求めるだけでなく、市場や末端農家からの製品の回収を、責任をもって実施するよう要請していきましょう。
メーカーが毒性問題をうやむやにして、こっそりと製造廃止届けをだしたり、3年毎の再登録を行なわないで、登録失効させていくという、おさだまりのやり方に終止符をうたす必要があります。
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作成:2001-06-23