環境ホルモンにもどる
t11601#学校での農薬類不使用の申し入れに対する都下61自治体教育委員会の回答#01-07
 本誌113号で報告しましたが、反農薬東京グループは、東京都教育委員会の環境ホルモン系農薬の使用禁止を求めた通知を受けて、学校での農薬類不使用を求めて東京都の61区市町村(三宅村を除く)の教育委員会あてに要望と質問状を送りました。
 反農薬東京グループは、自治体の農薬散布の実態を明らかにするため、これまでにハエ・カ駆除の殺虫剤散布に関するアンケート調査(1998年)、街路樹等の病害虫防除における農薬適正使用に関するアンケート調査(2000年)を東京都下の自治体に行ってきました。今回は3回目の調査になります。
 農薬は、もともと殺生物剤として開発されたものであり、それ自体高い毒性を持っています。また、なかには発ガン性や遺伝子を傷つけるなど、ホルモンかく乱作用以外の毒性を併せ持つものもあります。学童、生徒、教職員の危被害を防ぐために、環境ホルモン系農薬はもちろんのこと、今まで取組のなかった農薬類の学校での使用規制が必要です。
 「学校で農薬を使用していない」と回答してきた自治体は11ありました。18%の自治体で農薬を使用していないわけですから、他の自治体も発想を転換して、学校で農薬不使用にしてほしいものです。
 以下、質問項目に沿って回答を整理しました(HP掲載記事では、回答した区市町村の数のみを示し、自治体名を省略しています)。
詳細を知りたい方はてんとう虫情報116号をお求めください。

  ★質問1:都教育委員会が環境ホルモン系農薬の使用禁止を通知したが、同様の通知を出されたい。
 【回答】◆独自の通知をした。都教委通知を送付した。これから通知する:24
     ◆通知しない:19
       その理由  ◇教育委員会などが一括契約:6
                ◇農薬あるいは環境ホルモン系農薬を使用していない:12
                ◇その他:1
                ◇不明  :1
     ◆検討する :7
     ◆不明、回答なし:11
 【コメント】環境ホルモン系農薬の使用を禁止するという東京都教育委員会の通知は参考として各自治体の教育委員会に配布されており、それをそのまま学校に通知したところが多いようです。「通知した、あるいはこれから通知する」という回答は24自治体で、約40%でした。
 通知しないという自治体19で、約31%。しかし、その理由をみると、改めて通知しないのも当然と思われるものがあり、理由別に分類しました。
 「農薬を使用してない」という理由には敬意を表します。「環境ホルモン系農薬を使用してない」という理由に関しては、若干、疑問を感じます。実際に環境ホルモン系農薬を使用していないという調査を行って確認をとっているのでしょうか。農薬そのものを使用していない場合はわかりやすいのですが、農薬のうち環境ホルモン系を使用していないとされているところにこそ、もう一度、通知を出して確認する必要があるのではないでしょうか。
 また、「教育委員会等が一括して契約している」という理由は6つの区が回答しています。自分たちが知っているからいいということでしょうが、教育委員会の見解を知らせるためにも、通知を出しておいた方がいいと思います。
 「検討する」と回答したのが7自治体。回答なしが11自治体ありました。環境ホルモン系農薬の使用禁止という都教育委員会の方針は、できるだけ広く知らせ、学校のみならず、一般にも周知すべきと思われます。そうすることで、農薬は危険だという共通の認識が得られ、できるだけ使用しないという意識がでてくるのではないでしょうか。

★質問2:学校・幼稚園敷地内の植樹に当たり、チャドクガなどがつかないような樹種選定、学校内の緑化管理や敷地内の除草をする際には、物理的な手法など、農薬を使わないよう求める。
 【回答】◆農薬は使用していない:11
     ◆出来るだけ農薬又は環境ホルモン系農薬を使用しない:19
     ◆除草剤は使用していない:17
     ◆樹種選定に配慮している:6
     ◆樹種選定は今後、指導・検討したい:20
     ◆その他:4
     ◆不明・回答なし:2
 【コメント】ここでは、植栽管理に農薬を使用しないよう求めて質問しました。まず、学校で農薬を使用していないと回答した自治体が11あることは心強いと思います。ただし、「農薬」には、施設内で使用する殺虫剤などは入っていないことも考えられます。
 次に「できるだけ農薬を使用しない。環境ホルモン系農薬は使用しない」に分類される自治体が19ありました。しかし、農薬散布は最小限にとどめるといっても、散布することには変わりありません。既に、農薬を使用しない自治体が11もあるわけですから、このグループもできるだけ早く、農薬不使用宣言をしてほしいものです。
 除草に関して、除草剤を使用していないと回答してきた自治体が多くありましたので、別に抜き出しました。全く農薬を使用していないところとあわせると、28(46%)の自治体で除草剤を使用していないことになります。殺虫剤も同様に使用をやめてほしいものです。
 チャドクガなどヒトに危害を与える昆虫がつかないような樹種にすると殺虫剤使用が減ると思われますが、そのような視点で樹種を見直しているところも思ったよりありました。今後、検討したい自治体も含めて26自治体が考慮していくようです。
 さすがに、農薬は「国が許可しているから安全」だという回答はひとつもありませんでした。時代はすこし変わったのかなという感じもします。

★質問3:校舎・園舎内、給食施設の昆虫駆除のための殺虫薬散布について、今年度、こうした薬剤散布が行ったか。来年度からの中止を求めるが、どうするか。
 【回答】◆実施していない:21
     ◆実施している :26
     ◆今後検討する : 5
     ◆不明     : 9
 【コメント】施設内に薬剤散布をしていない自治体は21ありました。児童・生徒や教職員の健康に配慮しているところと思います。多摩地区、島嶼部に多くなっています。区部は薬剤散布を実施しているところが15区あります。23区内では65%が薬剤散布をしていることになります。
 給食施設での実施には、給食衛生管理基準、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管理法)などに基づいて行っているという回答が多くありました。しかし、これらの規則等には、昆虫やねずみの駆除方法を必ずしも殺虫剤を使用するとは定めていません。そのため、今回の申し入れにはそのことを明記し、資料も添付したのですが、十分理解されてなかったようです。
 今後、給食施設での薬剤散布をどうなくしていくか、実施している自治体は真剣に考えてほしいと思います。まして、教室内での薬剤散布は直ちに中止するべきと考えます。

★質問4:農薬を散布する場合には、保護者の通知し、児童・教職員が薬剤に触れたり、散布された場所に立ち入らないよう、どのような対策をとるか。
 この質問の回答は、自治体の姿勢が現れているので、文意を損なわないよう語句を直しただけでそのまま掲載します。施設内に薬剤散布をしていないと回答した自治体は除いてあります。しかし、中には、散布していないと回答していても、この質問への回答があるところがあり、本当に散布していないのか、疑わしいところもありますが、とりあえず、掲載します。
 【回答】
   ◆千代田区
    実施日は学校等へ連絡しているが、今年度からは実施する場所、範囲、薬剤名
    なども連絡し、学校長・幼稚園長により児童・生徒・園児・保護者へも通知す
    るなど指導の徹底を図る。
   ◆中央区
    校・園舎消毒は全施設において休日に実施している。
   ◆港区
    児童・生徒の帰宅後に実施。また、近隣の住民に対しても事前に周知している。
   ◆新宿区
    薬剤の散布を行う際は、交通整理員等を配置することを義務づけ、休校(園)
    日に行うこととしている。保護者への、予告通知及び散布場所への立ち入り等
    を防ぐ掲示については、学校(園)長が対応。
   ◆台東区
    毎年、夏期休業中(8月)及び春期休業中(3月)に実施している。給食室の
    衛生管理の重要性等を考慮し、来年度以降も実施する。なお、殺虫剤について
    は、環境ホルモン系農薬を使用しない。
   ◆墨田区
    施設内の薬剤散布については迅速に実施日時、散布場所について関係者に周知
    を図っている。周知方法については、口頭、掲示及び文書配布等状況に応じ、
    当該校長が判断している。樹木への薬剤散布は地域の皆さんや学校関係者に事
    前連絡し、散布時間等の案内を行っている。
   ◆世田谷区
    薬剤を散布する場合には、児童、生徒に影響が出ない方法で実施していきたい
    と考えており、保護者への予告通知は考えていない。教職員については、夏休
    み期間中も出勤しているため事前に通知する。
   ◆渋谷区
    樹木の剪定や害虫駆除については、樹木の生育状況や害虫の発生状況により、
    業者委託で適時対応している。今後の害虫駆除にあたっては東京都教育長の通
    知を参考にして対処する。
   ◆中野区
    保護者への通知は困難。現場での立入禁止措置をなお一層厳重に徹底させ、万
    全の対策に近づけたい。
   ◆豊島区
    現在も万全の注意をするよう指導している。今後、より一層の徹底を図るため
    に、学校長あての通知と共に業者への委託契約の内容に盛り込むこととする。
   ◆北区
    学校において消毒を行う際は、できる限り、児童・生徒が下校した後や、休業
    中に行うようにしている。また、保護者へ通知を行うかどうかは、学校長の判
    断に任せている。
   ◆荒川区
    樹木等の消毒については、児童・生徒及び近隣にも十分な周知を図って実施し
    ている。
   ◆板橋区
    学校で作業の時間を指定したり、窓を閉める、触れたりしないよう殺虫剤の散
    布には、充分注意をしています。なお、液は最小限の量で散布するよう気を配
    り、散布する時期も効果的な時期に散布するよう心がけている。
   ◆足立区
    薬剤散布については、教職員及び生徒への周知はもちろんのこと、近隣への周
    知も行っている。薬剤に直接触れる機会はない。
   ◆葛飾区
    薬剤散布の実施時期は春休み、夏休み等登校しない日を選んで実施している。
    保護者への事前予告通知、薬剤散布場所への立入禁止措置はとっていない。
   ◆江戸川区
    保護者へのお知らせは「学校だより」に行事予定として記載している。学校に
    よっては別途保護者に通知する。児童・生徒へは事前に害の説明・窓を閉める・
    外で遊ばないなどの指導を徹底させている。
   ◆八王子市
    現在も駆除のため薬剤を散布する際には、水曜日の午後や第二・第四土曜日等、
    児童・生徒がいない時を見計らい散布するようにしているが、今後も散布場所
    に立ち入らないようにロープをはるなど万全の対策を講じる。保護者への通知
    は検討していきたい。
   ◆立川市
    事前に各学校と日程調整しながら、児童の影響の及ばない時間帯に行っている。
    また、周辺の民家の方々にも事前に連絡したり散布後も立ち入らないようにし
    ている。
   ◆三鷹市
    校内の樹木に殺虫剤を散布するときは、学校よりその旨を保護者に知らせ、ま
    た、近隣の住民には委託業者が事前にビラ配布して知らせている。
   ◆府中市
    教職員に周知すると共に児童生徒がいない時間帯に行う。また、付近に立ち入
    らないよう指導している。
   ◆昭島市
    環境部緑と公園課にお願いし、樹木の毛虫駆除のため、業者による薬剤の散布
    をしている。作業員一人を見張りに置き、散布中の注意板を置いている。
   ◆調布市
    学校側より児童、生徒を通じて保護者に作業の通知文を出していただく。作業
    日は春休み・夏休みに行うようにしている。
   ◆町田市
    委託仕様書に記載及び各小中学校に文書にて通知している。
   ◆小金井市
    夏休み期間に給食室を立ち入り禁止にして、厚生労働省指定の噴霧薬剤により、
    駆除をしている。
   ◆小平市
    小・中学校では衛生害虫駆除を夏休み・春休みの長期休業中に実施し、児童生
    徒が施設に入らないようにしている。万一、子どもが学校に来た場合、施設に
    立ち入ることのないよう「消毒実施中」の張り紙を貼って周知している。
   ◆日野市
    例年夏季及び冬季の休業中に実施している。保護者への事前の通知はしていな
    いが、生徒、教職員、給食調理員への周知を図っている。
   ◆東村山市
    各学校より適切に対処するよう指導していきたい。
   ◆国分寺市
    学校及び周辺住民に薬剤散布場所、時間等を周知している。
   ◆西東京市
    万一、農薬や殺虫剤を散布する場合は当該者に予告通知すると共に、専門業者
    に委託し、施工時における職員の立合い、残留期間を考慮した散布後の施設の
    利用禁止等綿密に打ち合わせ万全を期す。
   ◆福生市
    事前に充分なる打ち合わせを行い、安全確保に努めている。
   ◆狛江市
    予告通知などし、万全の対策で行う。
   ◆東大和市
    学校で殺虫剤等を散布する場合は、市が委託業者へ依頼し、市の指定薬剤にて
    散布を行っている。散布時期は生徒のいない日曜日、祝日、夏休み期間に限定
    し、近隣住民に事前に周知している。
   ◆清瀬市
    殺虫剤を散布する場合は、事前に各学校に連絡し、生徒・教職員等への対応に
    ついては学校側に任せている。また、給食室の昆虫等駆除については夏休み期
    間中に実施し、許可なく入室できないよう鍵をかけるなど対応。
   ◆東久留米市
    薬品を散布する場合、学校に連絡し東京都衛生局指定店に委託して実施してい
    る。
   ◆武蔵村山市
    万一、散布した場合は、その場所への立入禁止を徹底する。また、散布時間も
    考慮する。
   ◆あきるの市
    バリケード等を利用し、立ち入り禁止を徹底する。
   ◆羽村市
    樹木の消毒については、委託業務により各学校で年間1回行っているが消毒薬
    品を無害無臭のものと指定し、児童、生徒などに影響のない日を学校と調整し
    施工している。
   ◆瑞穂町
    万全の対策を実施したい
   ◆日の出町
    万全の対策を実施していきたい(立ち入り禁止等の措置)
   ◆桧原村
    検討する。
   ◆大島町
    書面等で通知すべき。又どうしても行わなければならない場合は立ち入らない
    ように対策する。
   ◆新島村
    使用を余儀なくされた場合は、散布実施する期日を考慮し又教員、生徒などに
    通知する。
   ◆八丈町
    仮に使用する必要が生じた場合には、事前・事後に貼り紙等をし、周知する。
    その他具体的な対策は、今後検討していく。
   ◆品川区/目黒区/大田区/文京区/杉並区/練馬区/国立市/神津島村
    回答なし
★質問5:展着剤及び農薬補助成分に使用される環境ホルモンについて−省略

  教育委員会は、日の丸や君が代については、教員に厳しく対処しているようですが、化学物質が児童に与える影響については、問題意識があまりないようです。
 PCB入り蛍光灯の回収についても、ウソの報告をした教育委員会がありましたし、今年の5月には、広島県の大竹小学校で、蛍光灯部品から漏れ出たPCBに児童が触れた事故では、大竹市教育委員会は、ただちに診察を受けるよう指示しなかったばかりでなく、県への報告を怠こたりました。このアンケート結果を見ても、地元の教育委員会をしっかり、教育していく必要があると思います。
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作成:2001-07-23