環境汚染にもどる
t12403#POPs系埋設農薬の実態調査結果−農水省の情報隠しでは環境汚染は防止できない#02-01
前号速報のように、農水省は、30年以上前に指示した、BHC、DDT、ドリン系農薬類の埋設処理の実態調査結果を発表しました。判明したのは25道府県の174個所3680トンで、別に掘出し保管中のもの46トン、処分済みのもの984トンがありました。薬剤別では、BHCが49.1%と最も多く、ついで、DDTが25.6%、3種のドリン剤が3.0%、残りの22.2%が不明でした。
環境保護団体が、いちはやく、埋設POPs系農薬問題を指摘した、鳥取県では(てんとう虫情報記事t02101)、45個所の埋設場所が特定されていますが、検討委員会を設置し、「埋設農薬安全処理対策事業実施要綱」を定め、94年から毎年2個所から5個所の埋設個所で、掘削回収を実施し、2000年までに26個所96.3トンを焼却処分しています。
同省は、報告の中で『具体的な埋設場所については、公けにすることにより、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持及び的確な実態把握に支障を生ずるおそれのあること等の理由から、非開示とした』としていますが、場所が公表されないままでは、現状の環境調査も、掘出しや処理もできず、情報隠しがかえって、環境汚染を拡大してしまうことにつながりかねません。まずは、都道府県レベルで埋設場所等を明かにするよう運動していく必要があります。
99年に、TBSテレビが取材調査しましたが(記事t09703)、使用禁止後に埋設処理されたBHC・DDT等の数量は、当時の農水省調査では6100トンであるのに対して、その約2倍の12000トンだということでした。今回の農水省の数量は、保管中と処分済みをいれても、4700トンなので、1400トン余りがどこかに消えてしまったことになりますし、TBS調査との違いは2.5倍以上になります。農水省は3トン以上の大規模埋設地の管理責任を有しており、300kg以下の小規模埋設地は都道府県にまかせたかたちだったので、後者の処分個所の特定をきちんとやる必要があったわけですが、TBS調査で5300トンであったのに対して、131個所で1521トンしか把握されなかったという点に問題が残ります。
さらに、いままでにも農家の保有している廃農薬の中に、POPs系農薬がみつかっている事実からすれば、納屋に保管されている農薬がこれからもでてくると思われます。
今回の調査結果で得られた3680トンがすべてだとはいえないことは確実で、小規模埋設地と個々の農家保有のPOPs調査を漏れがないよう、より綿密に実施すべきでしょう。
★環境省の暫定マニュアルでは、POPs以外の農薬についても注意を喚起
環境省は12月26日付けでPOPs系農薬に関して「埋設農薬調査・掘削等暫定マニュアルについて」を公表しました(マニュアル2005/03/30改定版)。
『無害化処理技術については、環境安全性や分解性が既存の処理技術を含めて現時点では十分に確認されていないため、当面の措置として埋設農薬による汚染の有無等を確認するための調査、掘削・保管を行う場合の作業手順や留意事項を暫定的なマニュアルとして取りまとめた』として、POPs埋設地の調査や環境分析、点検、管理などに関する具体的な手順が示されています。
また、『調査・掘削・保管の実施に当たっては、地方自治体又は農協等が事業主体となり、事業に当たっては責任者を設置することが必要である。』とした上、『本責任者は、本マニュアルに記載される計画の作成、記録等を行うとともに事業実施の際に必要となる行政手続、関係機関、関係住民との調整に当たることとする。また、事業の実施に当たっては、学識経験者等で構成する検討委員会、都道府県等の農業担当部局、環境担当部局及び廃棄物担当部局等の指導・助言の下に実施することが重要である。』となっていますし、埋設農薬等の掘削開始に当たっては、『周辺住民に作業内容を周知する。』とも記載されており、農水省のように埋設個所を非開示にすることでは、とても処理できないことになっています。
埋設地点の掘削作業や保管に際しては、環境汚染が拡大せず、作業員や周辺住民に健康被害を与えないことが大前提になります。そのため、マニュアルにはPOPs系農薬だけでなく、『水銀剤やパラチオンのような有機燐剤、銅や砒素を含む農薬についても埋設されている可能性がある。埋設農薬の安全管理に当たっては、これらの農薬成分も考慮する必要がある。』と書かれています。POPs系製剤には、多くの複合剤がありますから、埋設された製剤の成分を十分知ることが必要ですし、POPsと同じ場所に、有機水銀剤や急性毒性の強いパラチオンなどが埋設されている可能性も否定できません。
ちなみに、環境省はPOPs系、水銀、砒素、有機リン剤について、表のようなADIに基づき、農薬毎の管理指針値を挙げています。
表 農薬の管理指針値
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作成:2002-02-25、更新:2005-04-01