「生活習慣病」という概念は、生活習慣の改善を通して疾患の発症を予防するという疾患の一次予防対策を推進するために導入された概念です。
不適切な食習慣(高食塩、高脂肪、エネルギー過剰など)、運動習慣(運動不足)や休養の取り方(睡眠不足、ストレス過剰など)、あるいは喫煙やアルコールといった嗜好品の摂取習慣などの生活習慣が発症要因となる病気には、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、脳卒中、虚血性心疾患、がんなどがあげられますが、しかし最近では、これらの生活習慣病の成り立ちには、生活習慣とともに遺伝的な素因(体質)が深く関わっている事も、最近明らかになりつつあります。
そして、不適切な生活習慣病+遺伝的素因
@服用するほどでもない境界領界期
糖尿病・高血圧症などの病名がつき早期治療が望まれる場合
半身麻痺など要介護状態にある場合
があり、生活習慣病の進行と、その病態に適した予防が必要となります。
一次予防 →
生活習慣を改善し、病気の発生そのものを予防するもので境界領界期に適する。
二次予防 →
実際に生活習慣病となった場合、病気が進行しないうちに治療する。
三次予防 →
重篤な症状があらわれた場合、リハビリテーションなど適切な治療により、病気や障害の進行を防止。
一次予防の中でも、食生活の改善は、全ての生活習慣病に、ほぼ共通した目標になりますが、病気によって重点化した指導が必要になりますが、結論的には、エネルギー摂取量と栄養バランスの適正化という事になります。
不適切な食習慣の改善は、エネルギー摂取量、栄養バランスの適正化ですが、それをより具体的に食生活の注意点をまとめたものが、平成2年厚生省による「成人病予防のための食生活指針」で次の9項目です。
- いろいろ食べて成人病予防
主食、主菜、副菜をそろえ、目標は1日30食品
いろいろ食べても、食べ過ぎないように
健康に暮らすための食生活として最も基本的な事は、必要な栄養素を過不足なくとることです。炭水化物、脂肪、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素をきちんととるには、料理に使う食品を1日30食品を目標にする事です。ただし、いろいろな食品を食べようとするあまり、総量が多くなって、エネルギー過剰にならないように注意が必要です。
- 日常生活は食事と運動のバランスで
食事はいつも腹八文目 運動十分で食事を楽しもう
近年、日本人のエネルギー摂取量は増えているわけではないのですが、日常生活が便利になって、体を動かす事が減り、消費するエネルギーは減少の傾向にあります。そのため、相対的にエネルギーの過剰摂取となり、肥満を招いているのです。肥満は多くの生活習慣病の危険因子とされています。
- 減塩で高血圧と胃がん予防
塩からい食品を避け、食塩摂取は1日10g以下
調理の工夫で、無理なく減塩
塩は私達の体にかかせないものですが、体が必要とする塩分は、自然の食品にある量で足り、調味料で食品を加える必要はないとも言われています。食塩の取り過ぎは高血圧を招き、ひいては脳卒中や心臓病もおこしやすくなります。塩からい食品を取り過ぎると、胃がんにもかかりやすくなると言われています。
- 脂肪を減らして心臓病予防
脂肪とコレステロール摂取を控えめに
動物性脂肪、植物油、魚油をバランス良く
日本人のエネルギー摂取量は、平均的にはほぼ適正量を保っていますが、その中で、脂肪の摂取量は依然として増加傾向をたどり、過剰摂取が問題になっています。脂肪は、不足してもいけませんが、取り過ぎれば心臓病や大腸がんなどの危険を増します。
また、増加の内訳を見ると、動物性脂肪(魚の油を除く)の増加が目立っています。植物油や魚の油には動脈硬化を予防する作用もありますが、乳脂肪や肉類の脂肪分など、動物性脂肪のとり過ぎは、動脈硬化を促進します。動物性脂肪にはコレステロールも多量に含まれていますが、コレステロールのとり過ぎは、虚血性心疾患の危険因子である高コレステロール血症も招きがちです。脂肪は総量を抑えるとともに、その内容にも注意が必要です。
- 生野菜、緑黄野菜でがん予防
生野菜、緑黄食野菜、果物を良く食べる人は、がんにかかりにくい事が知られています。生野菜や果物に多く含まれるビタミンCには、発がん物質であるニトロリアミンの生成を抑える作用があり、緑黄野菜に多く含まれるカロチンは、発がん抑制効果があると注目されています。
- 食物繊維で便秘・大腸がんを予防
食物繊維の多い野菜や海藻などをたっぷりとると便通のよくなる事は、良く知られていますが、最近では大腸がん予防効果が期待されています。繊維が少なく脂肪の多い食事は、便が腸内に滞留する時間を長くし、発がんにつながる有害物質が増加すると考えられています。
|