1960年代の初めのころ、ペンシルバニア州立大学の、J・C・シンデン博士と、ランバート研究所のE・B・ランバート博士によって、アガリクス茸が発見されました。それは、マツタケによく似ていて、正式な学名を、アガリクス・ブラゼイ・ムリルと言います。アガリクスが自生するのは世界では南米ブラジルのサンパウロ郊外の限られた地域だけで、昼間の気温が30度前後、夜も20度から25度。そして湿度80パーセント、夜には常時霧が発生するような自然環境の地域なのです。この地域が、学者たちの間で、評判になったのは、住民たちの長寿と、ガンをはじめとする、成人病の発生率が、異常なほど低かったからです。この秘密を解くために、多くの学者がこの地を訪れ、住民の生活を、あらゆる面から調査した結果、住民が常食にしているある食物に着目しました。それは、インカのころから日々食卓に供せられていると言う今までに見たこともない「キノコ」でした。普通のキノコより酵素活性が強く、たちまち自己分解を起こす、つまり傷みやすく日持ちが悪く生のままでは、大変扱いにくいものでした。
そのアガリクスが日本に上陸したのは、その5年後の1965年の事です。もちろん生ではなく、「菌」と言う形で日本に入ってきました。すぐに人工栽培がはじめられ、1978年にようやく完全空調のハウス栽培に成功しました。その2年後の1980年には、第53回日本薬理学会総会において三重大学の伊藤均博士らの「抗癌作用と自然治癒力を高める効果」が発表されました。第39回日本ガン学会総会でのマウス実験によるアガリクス茸の抗腫瘍効果。1981年第54回、1983年第56回、1984年第57回の日本薬理学会、1985年第44回日本ガン学会総会などで、その抗腫瘍性について、相次いで発表されました。さらに1987年日本農芸化学第10回糖質シンポジウムにおいて、アガリクス茸による抗腫瘍成分について発表されました。その成分とは、免疫力を高める多糖類が豊富で、体内の免疫細胞を活性化し、ガン細胞を直接攻撃したり排除したりするのを助ける働きをもつβ-グルカンと言う成分です。このβ-グルカンはガンに対して最も有効であり、さらに高血圧、糖尿病、肝臓病などの病気回復にも効果を発揮します。その他コレステロール低下作用、痴呆症改善作用、骨粗しょう症の予防などでも報告されています。がん治療には「外科療法」「化学療法」「放射線療法」の三つが代表的な治療法ですが、これらは効果と同時に副作用や、身体的ダメージを伴います。今日さらに新しい治療法が開発されていますが、第四の治療法として注目されているのが免疫療法です。免疫療法は、人間の体に備わっている免疫力を生かして、その機能を活用するので、まず副作用のない点が最大のメリットです。アガリクスには、免疫賦活作用を持つ糖類を五種類含んでいます。アガリクスを摂取することによって、免疫力を確保してガンにかかりにくい体を保つことができるのです。このアガリクス茸の取り方は、乾燥アガリクスを煎じて飲むのが一般的で、煎じたあとのキノコもそのまま食べられます。最近では水溶性アガリクスも登場し、より確かで効果が高いとして好評を得ているようです。
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