空中散布・松枯れにもどる
t11201#農水省がようやく通知−空散による農薬飛散防止は実施団体の責任#01-03
 2月16日、農水省は生産局長名で「平成13年度農林水産航空事業の推進方針」(以下、「推進方針」)という通知を出し、農薬空中散布で有機農業圃場に農薬が飛散しないよう空散実施団体が対策をとるよう指示しました。
 この通知は、昨年9月以来、反農薬東京グループ、日本有機農業研究会、食の安全と農の自立をめざす全国連絡会(食農ネット)が農水省と交渉を続けた結果、ようやく出されたものです。本誌106号、記事t10806記事t11001で経過をお知らせしていますが、農水省は有機農産物の認証制度がJAS法に取り入れられ、有機圃場に外部から農薬などの汚染があった場合、有機農産物の認定ができないとされた後も、汚染防止の対策を一切とらず、従来どおり空散を続けようとしていました。
 10回以上にのぼる粘り強い交渉の結果、農水省はようやく空散の実施要領にある「危害防止に万全を期す」の「危害」とはJAS法のいう「農薬の飛来」を含むものであること、危害防止の責任は空散実施団体にあることを認めました。
 上記三団体は、公文書による確認を求めましたが、農水省植物防疫課は前例がないとして拒否し、代わりに推進方針で指導するとして、今回の通知が出されたものです。発表前に原案を示しましたが、最初は「有機農業者と実施団体が話し合う」などと書かれており、実施団体の責任が明確ではありませんでした。激しいやりとりの結果、ようやく、以下の推進方針が決まりました。(下記の部分が今回新たに入れられた内容です。)
★平成13年度農林水産航空事業の推進方針−省略−

  全文が必要な方は、てんとう虫情報をお求めください。

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 また、「農林水産物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(昭和25年法律第175号)に基づき有機農産物に関する認証制度が創設され、平成13年度4月から有機表示の規制が開始されることを踏まえ、有機農産物の生産を希望する農家に十分配慮しつつ、散布区域、散布除外区域、散布方法等についての検討を行う。
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2,事業実施に当たっての留意事項
 C航空防除実施区域周辺において、飛来する農薬が原因となって有機農産物に関する認証が受けられなくなる等の防除対象以外の農作物への損害が生じないために必要な措置の徹底

(8)事業を実施する際には、有機農産物の生産を希望する農家等の関係者からの要望があった場合に提供できるよう、従前と同様、散布地図、作業記録等の関係資料の整備を行う。
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 さっと読んだだけでは当たり前のことが書かれていて、これで今年から空散が少しは減るのかと疑問にも思えますが、それは地域の運動にかかっています。今回の通知には学校、病院、水源その他への飛散に関する新たな記述はありませんが、当然、それらに飛散することは許されないことになりますので、空散実施団体、市町村、県などへの働きかけを強めてください。
 まず、この通知が出ていることを実施団体に知らせなければなりません。今までの例によると、農水省の安全対策に関する通知は放っておくと末端まで浸透しないことは確かです。また、「農林水産航空事業実施者のための安全対策の手引き」を毎年、空散推進母体の農林水産航空協会が発行していますが、今年度版の改訂についても話し合っています。これらを利用して、実施団体が農薬の飛散を防止する責任があることを伝えましょう。

★「JAS法では残留がゼロとは書いてない」−農水省品質課と植物防疫課の無責任
 有機圃場からどれだけ離せば空散農薬が飛来しないのか、この点について農水省は空散を管轄する植物防疫課も、JAS法を管轄する品質課もデータをもっていない。4月から有機農産物の表示が強制化されるというのに、全く無責任である。
 植物防疫課には何度も市民団体が、空散後どれだけ農薬が飛散するか調査した結果を示し、農水省自身も調査をするようにと要望してきたが、一切無視してきた。無人へりは飛散が少ないと推進しているが、その飛散データも持っていない。データもなしにどうして飛散が少ないと言えるのかと聞いても、黙り込んでしまうだけであった(記事t09701参照)。
 品質課は有機農産物の表示にかかわる規制は圃場の条件が整っていればいいのであって、農薬残留がゼロでなければならないとは書いてないと開き直っている。消費者は有機農産物という表示があれば農薬残留はゼロだと思うのは当然のことだ。いまさら、「法律にはゼロにしろとは書いてない」とは驚きで開いた口がふさがらない。では、「微量なら残留してもいいと考えているのか」と聞くと、「残留基準が・・」と言い始めた。農産物の残留基準とは、これ以下でないと市場に流通してはいけないという基準だ。まさか、残留基準以下なら有機農産物に農薬が残留してもいいとと思っているわけではないだろうが、いささか心配になってきた。
 JAS法では、水質汚濁性農薬であるデリス(ロテノン)を有機農業に使っていいことになっているのは、すでに報告した(記事t11003参照)。慣行農業ですら使うのを規制されている農薬を有機農業に使用していいとはまったく理解できない。
 では、4月からどうするのか。品質課は登録された認証機関が「ちゃんとやる」からいいという。その「ちゃんとやる」中身を知りたいというと、それは公開できないという。圃場によって条件が違うので一概に何メートル離せばいいとは言えないということだが、それにしても考え方の基本があるはずだ。もっとも「残留がゼロとは書いてない」と言うくらいだから農水省は内々で農薬残留を認めているのかも知れない。
 農水省はすべての責任をを登録認証機関に押しつけようとしているが、まさか、登録認証機関は空散区域から10メートル離れていればいいなどという規程を作っているのではあるまいな。私たちの調査では500メートル離れていても農薬は飛散する。この事実だけでも空中散布はできないはずだ。
 登録認証機関は、基本的には空散区域周辺の圃場は農薬が飛来して有機農産物の認定ができないからと空散をやめるよう要望してほしいものだ。(辻 万千子)
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作成:2001-03-23